第65話
「ちがうっ!この子はっ・・・ぐっ。」
「そうではない。この子はマコトの子だ。マコトには皇太子宮で会っただろう?魔道具を作成している彼の人物がマコトだ。訳あってジュリエッタに預かってもらっている。」
私がエドワード様とユキ様に尋ねると、ユキ様が何かを言いかけたが、エドワード様がその大きな手でユキ様の口を塞いでしまった。
目の前にいるアレクサンドル君・・・いいえ、エドワード様のお子であれば君ではなく様が正しいわね。
アレクサンドル様がエドワード様とマコト様の子だと知って私は大きな衝撃を覚えた。
だって、エドワード様はレイチェルと婚約までしていて子供だっていたのに、マコト様とも関係していただなんて。
でも、レイチェルとしてマコト様と一緒にいた時はマコト様は妊娠している様子はなかった。
もしかしてレイチェルが皇太子宮からでてからマコト様とエドワード様が恋仲になったのだろうか。
私の感覚ではレイチェルが意識を失ってから一ヶ月も経っていない認識でいる。そうすると、マコト様とエドワード様はレイチェルが皇太子宮を出てすぐに恋仲になったのだろうか。それともレイチェルに隠れて既に恋仲になっていたのだろうか。
だから、エドワード様は急にレイチェルに冷たくなったのだろうか。
「何にせよ、君には関係のない子だ。だからこの子に構うな。」
何か言いたそうにしているジュリエッタさんとユキ様を制してエドワード様が告げる内容に少なからずショックを受けた。
「・・・可愛い子を抱かせていただくくらい良いではありませんか。」
「ならぬ。この子に何かあったらマコトに申し訳がない。」
私の言葉をばっさりと切り捨てるエドワード様。どうやらエドワード様にとってとても大事な子のようだ。
「そうですか。残念ですわ。」
あまりにも冷たい目が私を射抜くので、残念だが赤子を抱くことは諦めることにした。
普通に考えればそれもそのはずだ。
皇太子であるエドワード様のお子なのだから、得体の知れない女に預けるようなことはしないだろう。
それにライラとしての私は暗殺者だ。
しかも、エドワード様が現在のターゲットだ。
今はまだ実感もほとんど沸いてこないが。
果たしてレイチェルの記憶を持つ私にエドワード様を暗殺することはできるのだろうか。
それでも、失敗すれば私の命がない。
今まで依頼されるがままターゲットを暗殺してきたが、本当にそれは正しかったのだろうか。
敵対国の皇太子であるというだけで暗殺されなければならないエドワード様。
レイチェルの記憶の中でのエドワード様。
どうしても、レイチェルの記憶の中のエドワード様の方が鮮明で・・・今まで疑問にも思わなかった暗殺という仕事に疑問を持ち始めてしまった。
今までならターゲットと親しくすることはなく、会話することもなかった。
だから躊躇することもなかった。
暗殺が失敗すれば自分の命がないのだから、躊躇するわけにいかなかった。
「そんなことよりも君を皇太子宮に戻す。」
「ダメよ!!」
「え?」
皇太子宮で得体の知れない私のことを監視するのだろう。泳がせておくよりもその方が安全だと感じているのだろう。
エドワード様の言葉はわかった。
しかし、ユキ様はそれに猛反対のようだ。
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