第64話
家のドアをノックした女性は、ユキ様の返答を待つことなく家にずかずかと上がってきた。
ふくよかな体系の優しそうな顔立ちの女性の腕の中には、すやすやと眠る赤ちゃんの姿があった。
「ジュリエッタさん、来ちゃダメですっ!」
ユキ様が、ジュリエッタさんに向かって叫ぶ。
「え?あら、お客様だったの?ごめんなさいね。」
ジュリエッタと呼ばれた女性はこちらを見てニコリッと微笑んだ。
腕の中の赤ちゃんがなんとなく気になってじぃーっと見つめていると、スッとエドワード様が私の視界に割り込んできた。
「・・・エドワード様?」
エドワード様は、なぜ、邪魔をするのだろうか。
「ユキにお客様のようだ。我々は外にでているとしよう。」
そう言って、エドワード様は私の手首を掴み、外に連れ出そうとする。
「まあ!別に大した用事じゃないから外に出ていなくても大丈夫よ。」
ジュリエッタさんはにこにこ微笑んでいる。
その側でエドワード様とユキ様がチッと舌打ちをした。
「っだあ!」
その瞬間、ジュリエッタさんの腕の中の赤ちゃんが挨拶するように声を上げた。
どうやら目を覚ましたようだ。
透き通るような青い瞳が私の瞳を捕らえた。
その瞳に既視感を覚える。
「可愛い子ね。その子の名前を教えてくださるかしら?」
「アレクサンドルと言うのよ。可愛いでしょ。」
「だあ~!」
ジュリエッタさんから教えてもらった名前を噛み締める。
すると、アレクサンドル君がこちらを見てニコニコと笑いながら手を伸ばしてきた。
「可愛い・・・。」
思わず私もアレクサンドル君に手を伸ばしたところで、エドワード様がスッとアレクサンドル君を抱き上げて抱え込んでしまった。
「触るなっ!!!」
「触らないでっ!!!」
エドワード様もユキ様も鬼のような形相でこちらを睨みつけてくる。
「え?」
「あら、まあ。」
私もジュリエッタさんも二人の様子に驚きを隠せずにいる。
アレクサンドル君だけはニコニコ笑っていたが。
この子将来大物になりそうな予感がする。
「エドワード様もユキもアレクサンドル様が大事なのです。どうか、お気になさらないでくださいね。」
苦笑しながら告げてくるジュリエッタさんに困惑しながらも頷く。
アレクサンドル君は二人にとってそんなに大事なのだろうか。
もしかして、ユキ様とエドワード様のお子なのでしょうか。
そうなるとアレクサンドル君は王族ということになる。
そうなれば、エドワード様とユキ様が私を牽制するのも頷ける。
「ユキ様とエドワード様のお子なのですか?」
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