第61話

 


私の前に現れたのはあれほど探していたエドワード様だった。


どうやらエドワード様はレイチェルの側にいたようだ。


世間では、エドワード様とレイチェルは婚約破棄をした間柄とされている。


だけれども、エドワード様はこうやってレイチェルのところにお忍びで来るくらいにはまだレイチェルのことを慕っていてくれているようだ。


「・・・レイ、どうしてここに?」


「エドワード様にお会いしたくて、手にして来てしまいましたわ。」


抜け出したのは本当だけれども、エドワード様に会いたくてというのは嘘。


まあ、エドワード様にはお会いしたかったけれども、今回はあくまでレイチェルの身体を確かめるために抜け出してきたのだ。


「侍女に聞いても、マコト様に聞いてもエドワード様の居場所を教えてくれないんですもの。それに、どこに行ったのかも教えてくれなくて、心配で心配で・・・。そうしたらいつの間にか転移の魔法を使用してしまっていたようです。ここは、どこなんでしょうか。」


あえて何も知らないふりをして、あくまで偶然この場所に来たということにしてエドワード様に話を振る。


あくまでも自然に。


エドワード様は私とレイチェルの身体の間に滑り込み、私からレイチェルを守るような体制をとる。


「ここは・・・隣国の田舎の村だ。」


「そうですか。そんな遠いところにいらしたのですね。」


エドワード様の表情は硬い。


どうやら私のことを警戒しているようだ。


「今すぐ転移で皇太子宮に帰ればここに来たことは目を瞑る。」


「・・・勝手に来てしまったのは謝ります。ですが、転移の魔法の使い方がいまいち良くわからないんです。一度目に転移したときには、エドワード様が死んでしまうと思って安全な場所へと無意識に魔法を使っていたようですし、今もエドワード様が心配で心配で仕方なくてエドワード様のお姿を思い浮かべたらいつの間にか転移しておりました。ゆえに、皇太子宮に戻れと言われましても転移が成功するかどうか・・・。あの、善処はいたします。」


「・・・。」


転移が成功するかしないかわからない。


そう告げればエドワード様は沈黙してしまった。


なにやら考えこんでいるようだ。


「・・・このような時間に女性を一人放り出すことはできない。仕方ない。明日、供に皇太子宮に帰ろう。」


「恐れ入ります。」


エドワード様の寛大なお言葉にお礼を言う。


最悪外に放り出されるかとも覚悟したが、そうではないようで安心した。


「誰っ!?」


ホッとしたのもつかの間。誰かが来たようだ。


 


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