第49話

 


エドワード様は多少ふらつきながらも、先ほどよりもしっかりとした足取りで前へ前へと進んでいった。


私はそれを足手まといにならないように小走りで追いかける。


「・・・マコト・・・具合は・・・・・・・・・・・・バカなっ!!」


歩きながら誰かと念話でもしているのか、時折エドワード様の小声が聞こえてくる。


そして、最後には感情を抑えきれないような大きな叫び声を発した。


ビクッとしてエドワード様を見つめる。


エドワード様の足取りは次第にゆっくりとなり、終いにはその場に座り込んでしまった。


「エドワード様、どうしたのですか?」


エドワード様の真横に座り込み、顔を覗き込む。


「君には関係のないことだ・・・。」


関係ないと告げるエドワード様の瞳には深い悲しみの色が浮かんでいた。


「悲しいことがあったのならば、泣くといいですよ。泣くとすっきりいたしますよ。」


エドワード様は何も言わず、ただ一筋の涙だけを流した。


いったい何があったのだろうか。


でも、深い悲しみの縁にいるエドワード様には、それ以上は声をかけることもできなかった。


 


 


 


 


しばらくして、エドワード様はふらふらと立ち上がった。


その顔はまだ悲しみから抜け出せていないようであったが、しっかりと前を見据えていた。


「行かれるのですか?」


「・・・。」


エドワード様は答えずに歩き始める。


一歩一歩確実に。


私はその後を逸れないようにしっかりと追いかける。


「・・・着いてこないでくれ。一人にしてくれ。」


「!!」


しばらくエドワード様の後を追いかけて歩いていると、こちらも見ずにエドワード様はポツリと呟いた。


その声音に驚いて歩みが止まる。


エドワード様の声にはこれまでとは違い、明らかな拒絶が含まれていたから。


このままエドワード様を一人にしていいのかわからない。


だけれども、このまま無視してついて行くことも許さないような声音だった。


立ち止まって動けなくなってしまった私を気にすることもなく、エドワード様は歩いて行ってしまった。


呆然と立ち尽したまま、私はエドワード様が去っていくのをいつまでもいつまでも見つめていた。


 


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