第48話

 


「エドワード様。従者はどうしたのですか?お一人ということはございませんでしょう?」


エドワード様とお会いしてからずっと気になっていたことを確認する。


一人は重傷を負い、助かる見込みがなかったので、手厚く葬った。


ただ、従者が一人のはずがない。


仮にも帝国の皇太子だ。


エドワード様は苦虫を噛み潰したような表情を一瞬だけしたが、すぐに表情を元に戻した。


「従者は皆死んだ。今は一人だ。」


「そう、ですか。」


エドワード様についているはずの従者は皆精鋭だったはずだ。


それなのに、皆死んでしまうとは・・・。何人でここまで来たのだろうか。


エドワード様はいったい誰と戦ったというのだろうか。もしくは奇襲でもあったのだろうか。


「何人でいらしたのですか?なにがあったのですか?」


「・・・君には関係ない。」


エドワード様はこれに関しては教えてくれなかった。


もしかしなくとも、とても少ない人数だった?


「服と食べ物を調達してくれて助かった。ここから先は一人で行くゆえ君はもう帰りなさい。」


エドワード様はさっさと食べ終えると、着替えをすました。


元の洋服についてはどこに仕舞ったのか手には持っていなかった。


「いえ。着いていかせてください。」


「ダメだ。帰りなさい。」


エドワード様に着いていこうとするが、帰れと言う。


それはそうだろう。


私の中身はレイチェルでも、見た目はエドワード様が知らない誰かなのだ。


もちろん、私もこの身体が誰のものかはわからない。


警戒してしかるべきだろう。


「いいえ。私は着いていきます。」


強い意志を込めてエドワード様を見つめる。


思えば、このようにエドワード様に強く意見をしたことはあっただろうか。


「不要だ。私は先を急ぐ。君は足手まといだ。」


冷たい目線が私を射抜く。


「着いて行かせてください。」


負けじと見つめ返す。


すると、エドワード様は根負けしたのか、「はぁ・・・。」と一つため息をついた。


「勝手にしろ。ただ、私の邪魔だけはするな。それと、君のことはいないものとして扱うからな。」


エドワード様はそれだけ言うと、身なりを整えて歩き出した。


「ありがとうございますっ!」


エドワード様の後姿にお礼を言う。そうして、私もエドワード様の背を追って小走りで前に進む。


このまま何事もなく、エドワード様と一緒にハズラットーン大帝国に帰れると信じて。


 


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