2-4 続々々




 ベッドの上に転がる無残な月山の死体。その頭部は歪に陥没しており、身体中に刻まれた刺し傷から流れ出る血液は今も尚ベッドを赤く染め続けている。

 そんな彼の死因を「頭部の損傷によるもの」と語り、死亡時刻を「発見時刻である九時十五分直前」であることをジルが定言した後、私は柳と共にその場を離れ、花陽や天立の姿を探すべく廊下を歩いていた。

 私個人の意見としては、その場に居た宇野下や姉川から『第一の被害者』であるダリアや、『第二の被害者』となった月山についての話をいろいろと聞いてみたかったのだが、柳の「今は間が悪いから、 あとでにしよう」という判断によりその意見は見送られてしまった。勿論、ヒステリック気味な状態が続いていた宇野下からは難しいだろうが、それでも姉川からは話が聞けたのではないだろうか?

 胸中に溜まるその不本意を無理やりに飲み下し、私は赤い絨毯の道が続く廊下をまっすぐに見据える。


「ところで牛宮君って、ああ見てとても面倒見の良い優しい子なんだね。見た目も派手で、言葉使いも粗野だから近づきがたい印象があったんだけど、宇野下さんと姉川さんにしばらくの間付き添う……って、自分から言い出すなんて」


 見る目が、変わっちゃったなぁ。

 そう零しながら私の先を歩く柳。彼の言う通り、つい先程まで私たちと一緒に居た牛宮はヒステリック状態が続く宇野下と姉川の二人が心配であるらしく、しばらくの間は彼女たちの傍にいると自己申告してきた。

 彼を糾弾した月山に賛同していた彼女たち二人を見放さず、甲斐甲斐しく世話を焼こうとしていた牛宮。その姿を思い出しながら「……そう、ですね」と小さく言葉を返すものの、私の中では牛宮に対する疑念が鎌首をもたげていた。

 はたして、牛宮は優しいのだろうか?

 はたして彼のその行動は、善意からなるものなのだろうか?

 その偽善めいた行動は、他ならない自身の為のものではないのだろうか?

 理由のない疑念。証拠のない疑惑。嗚呼、私はこんなにも疑り深い性格ではないはずなのに。どうしてこんなにも、疑心暗鬼にも似た感情を抱いてしまうのだろうか。

 私もまた、ダリアの死と月山の死を見て、精神が不安定になっているのだろうか?

 自分自身の精神状態に一抹の不安を抱えながら、「書斎」と明記された観音扉の前に辿り着いた私は柳に促されるままその扉を引き開く。そうすれば昨日と同じ光景――壁という壁をすべて本で埋め尽くした薄暗い室内と、その部屋の中に在るソファに腰掛け本を読む花陽の姿が、目に入ってきた。

「えっと、花陽君。ダリアちゃんの事件について訊きたいことがいくつかあるんだけど、少し時間を貰っても構わないかな?」

 雨音のみが響く書斎に、そう声を轟かせた柳。そんな彼を睨み付けるような視線を向けた花陽だったが、柳の隣に居る私の姿を認識するや否や、彼のその視線はほんの僅か和らいだものへと変貌する。


「構わない」


 声を掛けた本人である柳ではなく、私を見ながらそう答えた花陽。彼は読んでいた本をぱたりと閉じると、自身の前に在るソファを指さし、其処へ座るよう促してくる。


「……それじゃあ、まず花陽君とダリアちゃんって何か関係があったりしたのか、訊ねてもいいかな?」

「ない」


 自身と向かい合うようにして座った柳からの質問に、素っ気のない言葉を返す花陽。しかも彼の視線は質問者たる柳ではなく、柳の隣に座る私へと注がれ続けたまま。

 けっして交わることのない柳と花陽の視線に気まずさを感じながらも、私は花陽からの視線を受け入れ続ける。


「なら次の質問なんだけど、昨日の夜は何をしていたのか教てもらってもいいかな?」

「この書斎で本を読んでいた」

「そっか。それなら最後に……どうしてキミは、このゲームに参加しようと思ったのか……教えてくれるかい?」

「招待状の差出人が……知り合いの名前だったから」

「ああ、花陽君もなんだね」

「……貴方も、そうなのか?」


 質問者である柳に一切視線を向けることのなかった花陽も、その言葉には興味を持ったらしい。

 私から視線を移した花陽が食い入るようにして柳を見定める。


「うん。それにそれは俺達だけじゃなくて、牛宮君もみたいだよ」

「牛宮も……」


 「そうか、だからか」と、小さく声を零し俯く花陽。そんな彼の姿を眺めながら、私は改めて自身の持っていた便箋の形を思い出す。

 握り潰され、くしゃくしゃに皺が入った白地の便箋。そこに差出人の名前は記されてはいなかった。だが、彼らが「差出人」という単語を出してくる度に、その記憶が定かであったのか曖昧になってくる。

 嗚呼、念のため自室に戻った際にでも、差出人の名前が記されていないか確認しておかなくては。

 そう決め、花陽の視線が離れているうちにと、この書斎内部を見渡していれば一つだけ、気になることがあった。


「……花陽さん」

「なんだ」

「白木さんは、今どちらに居られますか?」


 いつもであれば花陽の隣に陣取っている白木。その姿が無いことを花陽へ訊ねてみれば、彼は「しばらく前に飲み物を取りに行くと、出て行ったきりだ」と私の目を見据えながら答えてくれる。


「しばらく前、とは?」

「……三十分ほど、前だな」

「三十分前……」


 ちらり、とローテーブルの上に置かれていた卓上のデジタル時計に目を向けた花陽。それに誘われるように、私もまたそちらへと視線を向ける。

 現時刻は九時五十五分。その三十分前となれば、九時二十五分となり月山の死亡推定時刻である九時十五分直前とは重ならない。となれば、おそらく――そう、花陽が虚偽の発言をしていなければ――この場に居ない白木は月山殺しの犯人から外れる。


「なにか、あったのか?」


 考え込んでいる私から何かを感じ取ったのだろう。怜悧な顔を僅かに困惑させた表情へと変えた花陽が、私へ訊ねてくる。


「えっと、実はさっき牛宮君たちと一緒にこのゲームに参加していた月山君が殺されていてね。そのこととかが多分、マリアちゃんは気になったんだと思うよ」


 花陽からの問いに私が答える前にそう言い、「そうだよね?」と同意を促してくる柳。その言葉に頷き、「はい。そうです」と答えれば柳は満足そうに笑みを見せた。


「……あの知能が足りて無さそうな彼が死んだのか」

「うん。このゲームに参加している以上仕方のないことだし、俺が言うようなことではないんだけど。花陽君も気を付けてね」

「分かっている」

「それに、花陽君だけじゃなくてマリアちゃんも気を付けるんだよ?」


 特にキミはぼんやりしている時が多いから、心配なんだ。

 私の顔をまっすぐに見定め、穏やかな表情でそう言ってきた柳に「はい、気を付けますね」と笑みを返す。が、すぐに向かいに座る花陽からの辛辣な視線に気づいた私は、浮かべていた笑みをすぐさま仕舞い戻した。


「そうだ。花陽君、キミも俺たちに訊きたいこととかないかな? 俺たちの質問に答えてくれたからっていうわけじゃあないんだけど、答えられる範囲でなら答えたいんだ」

「いや……今は遠慮しておく」

「そっか……」


 柳からの申し出を断りながらも、じっと私を見続けてくる花陽。

 一旦は柳に向けられていたというのに戻って来てしまったその視線に気まずさを覚えていれば、隣に座る柳が立ちあがり「じゃあ俺とマリアちゃんはこれで失礼するよ、いろいろお話を聞かせてくれてありがとうね、花陽君」と小さく会釈をする。

 そんな柳に合わせて私もまた立ち上がり「ありがとうございました」と会釈をし、扉の方へと移動すれば花陽も書斎から出ていくらしく、私たちの後ろについて来ていた。


「えっと、次は天立君たちから話しを聞こうと思っているんだけど、花陽君も一緒に来るかい?」

「いいえ。自分はみなとを探しに行くだけなので」


 今朝発見されたダリアの死。そして柳が私の代わりに語った月山の死が理由なのだろう。三十分以上が経った今もなお、戻ってくることのない白木の身を花陽は案じているらしい。

 赤い絨毯の道が続く廊下を歩きながら、天立たちの姿を探す柳と花陽。言葉数少ないながらも、時折会話をする二人の背を眺めながら、私は相変わらず外で振り続ける雨の音に耳を委ねる。

 ざあざあ。

 ぱつぱつ。

 まるで私の先を歩く二人の会話にノイズを掛けるように。

 まるで邸内の音をかき消しでもするかのように。

 まるで、この邸内の秘密を隠すように。

 打ち鳴らされ、叩きつけられ、響く雨音。

 そんなノイズ音に混じるように、突如として聞こえはじめた早足の音。その音の出所である後方を振り返れば、なにやら慌ただしい様子でこちらへとやってくるジルが目に入った。


「ジル、さん?」


 ぽろりと零れた私の発言が、先方を歩いていた柳の耳にも届いたらしい。「ジルがどうかしたのかい?」と私の方を振り向いた彼の瞳がジルの姿を認識する。


「ジル、そんなに慌てていったいどうしたんだ? 新たに被害者が出たわけじゃないんだろ?」


 私たちの傍へとやって来たジルに、冗談交じりにそう話しかけた柳。だがそんな彼の言葉に対しジルはただでさえ陰鬱気な顔を更に重々しくさせ、口を開く。


「実は先程、ユラ様より邸内の内線電話で、ユウガオ様、オトギリ様、アザミ様。そしてみなと様が『談話室』で倒れていると連絡を受けましたので、早急に向かっている次第です」

「っ!」


 ジルの口から放たれた白木の名を聞き、息を飲む花陽。怜悧な顔は相変わらずだが、その顔色は徐々に色味を失っていっている。


「ジル、たしか談話室だったよね!」

「そうです」

「なら、行くよ花陽君!」


 青ざめつつある花陽の背を軽く叩き、談話室の方へと一人駆け出しはじめた柳。そして、そんな柳の背を追うようにジルも談話室の方へと向かいはじめる。


「私たちも行きましょう、花陽さん」

「……そう、だな」


 青白い顔を私へと向け頷いた花陽。彼の歩調に合わせゆっくりとした速度で談話室へと向かえば、既に到着していた柳が天立と話をしているようだった。


「……ジルさん、白木さんの容体は?」


 外傷らしい外傷はないものの、ぐったりとした様子でソファの故に横たわる白木や、ユウガオ、オトギリ、アザミ。その四人の状態を確かめていたジルへと近付き訊ねてみれば、彼は陰鬱気な顔を私の方へと向け「マリア様、そして、ゆかり様。残念ですが……みなと様、ユウガオ様、オトギリ様、アザミ様は、わたくしたちが到着した時点で既に死亡しておりました」と、言い放った。


「み、みなと……?」


 がくりと膝を折り、ソファに横たわる白木みなとの傍らに身を寄せる花陽。彼の骨ばった白い指が、白木の未だやわらかいであろう頬をなぞり伝う。


「みなとは、ただ、飲み物を……取りに来た、だけだ」


 悔いるように声を震わせそう言った花陽は勢いよく立ちあがり、未だ会話を続けている柳と天立の方へと歩み寄ってゆく。そして、天立の胸ぐらを掴むや否や、「どうしてこんなことになっているんだ!」と言葉を荒げた。

 怜悧で理性的な印象が強いあの花陽が、品のない行動をするなんて。青天の霹靂にも似た珍事を目の当たりにし足の歩みを止めてしまった私に反し、天立と花陽の傍に居た柳は「これは事故なんだよ」と弁明の声を上げる。


「事故? それはいったいどういうことだ」

「実は、僕と一緒にこのゲームに参加していた彼女たちは、恒常的に電子ドラッグを使用していてね。……どうやらそれが、ジルの見立てでは原因らしいんだ」


 「ジルの見立てでは」ということを強調し、天立は花陽へそう告げる。それを聞いた彼は掴んでいた天立の胸ぐらを離すと、ソファに並ぶ四つの遺体の状態を確かめ続けているジルへと視線を向ける。


「審判。どういうことだ」

「天立様の、述べられた通りです」


 遺体の傍から彼らの方へと移動するジル。彼に続くようにして私もまた花陽や天立、柳の傍へと向かう。


「みなと様、ユウガオ様、オトギリ様、アザミ様。以上の四名は、私たちがこの場に到着する『十時十分』直前に死亡。死因は電子ドラッグの過剰摂取による脳破壊です」


 電子ドラッグの過剰摂取? 普通に考えれば、その程度の事では死に至らないと思うのだが、この場に居る全員は気まずそうに顔を下げている。


「……けれどユウガオちゃんたちが使っていた電子ドラッグは、法律的にも合法されている物だし、リラックス効果を主体とした物のはずで……摂取量を間違ってしまったからといって死んでしまうはずがないんだ。それに、偶然部屋に居合わせていただけのみなと君がその巻き添えになるなんて、おかしいよ」


 ユウガオたち三人が使用していたドラッグについて述べた天立の言葉を聞き、何か思い当たる節があったのだろう。ぱっと目を見開いた柳が「もしかして」と声を上げる。


「なら、ユウガオちゃんたちや、みなと君に誰かが摂取量を大幅に超えた電子ドラッグを振る舞ったんじゃないか? 彼女たちの電子ドラッグを別の物にすり替えただけじゃ、被害者は彼女たちだけになるはずだし」

「そうなると……僕が一番怪しくなってしまうのだけれど、まあ……順当に考えたらそうだよね」


 第一発見者だし、アリバイもないし。

 相変わらず目元は笑ったままで、さほど困ったような表情にこそ見えないが、天立は眉を八の字にし、両手を上げて降参のポーズをしてみせる。だが現状において天立が犯人であることを示す物的証拠も、5W1Hもない私たちは天立を糾弾するようなことはしない。

 そう、例え本当に天立がユウガオやオトギリ、アザミ、白木の四人を。否、彼女たちだけではなくダリアや月山をも殺していたとしても、その物的証拠や殺害方法(どうやって殺したのか)を見つけ出せていない以上、糾弾したところで徒労に終わるのを、つい二時間ほど前に知ってしまっているのだから。

 ダリアの部屋で行われた、月山による牛宮への証拠のない糾弾。その無意味で、無価値で、ただただ月山の愚かしさを見せつけられただけだったあの光景を思いだし、私はふぅ、と息を吐く。

 私はそうならない。私は、彼のように浅はかでもなければ、愚かでもないのだから。

 ならば、私はどうするべきか? そんなこと、考える間でもないだろう。


「私、天立さんに聞きたいことがあるのですが、今、構いませんか?」

「ああ……大丈夫だよ。それで、マリアちゃんは僕から何を聞きたいんだい?」


 両手を上げていた天立は、私からの質問に答えてくれる気であるらしい。降参するように上げられていた両手を降ろし、眉尻が下がったままの似た笑みを私へと向けてくる。

 だが、その表情を「困惑」、ないしは「戸惑い」と捉えたのか。あるいは、この状況下においての私から天立への質問を快く思わなかったのだろう。天立の傍に居た柳が「マリアちゃんっ」と慌てたように私の名を呼んだ。


「天立君は、一緒に行動していた彼女たちを一度に失ってしまったんだよ? そんな、今の彼に質問だなんて……!」

「それなら大丈夫ですよ、道明さん。僕も、ユウガオちゃんたちも、死んでしまう可能性を分かっていてこのゲームに参加したのですから。それで……マリアちゃんは、僕から何を聞きたいんだい?」


 「天立君……」と心配そうに彼の名を呼び、私を見つめる柳。そんな彼の視線を気にすることなく、私は「今朝、死体が発見された『被害者』であるダリアさんとの関係は、何かありますか?」と天立に尋ねた。


「うーん? ダリアちゃんと会ったのは昨日が初めてだし、ユウガオちゃんたちもそうだったはずだよ?」

「それでは、昨日の夜は、何処に居ましたか?」

「昨日の夜なら、僕はユウガオちゃん、オトギリちゃん、アザミちゃんたち三人と、部屋で過ごしていたよ。とはいえ、それを証言してくれる彼女たちは、もういないんだけどね……」

「なら次に、ダリアさんの部屋から出てからこの談話室へ来るまでの間、何処に居ましたか?」

「僕の部屋で、彼女たちとダリアちゃんの事件について話し合っていたよ。そして、そうだな……九時ぐらいかな。気分転換に談話室でお茶を飲んでくると言った彼女たちを僕は見送って、部屋で彼女たちが戻ってくるのを待ってたんだ」

「でも彼女たちは一時間ほど経っても、戻ってこなかった……だから、部屋を出て談話室に来たんですね?」

「うん、そうなんだ」


 こんなことなら彼女たちだけで行動させず、僕も着いて行けばよかった。

 笑みの張られた顔を僅かに曇らせ、そう零す天立。しかし、私はそんな様子の彼に配慮を示すことなく、最後の質問を彼へと投げかける。


「天立さん。貴方は、何故このゲームに参加したんですか?」

「……このゲームの招待状が知人から送られてきたからだよ。連絡をよこしてくるような人じゃないから、気になって参加したんだ。それに、招待状にはご友人なども同伴も可能です、って書かれてあったから彼女たちに声をかけて一緒に参加したんだけれど……」


 「彼女たちには悪いことをしてしまったね」と言いながら、曇った顔を俯かせる天立。その態度から「これ以上はもう、語れないよ」という雰囲気を察し、私は歯噛みする。

 天立が常時張りつかせたままの、穏やかな笑み。そして今この瞬間、彼がその顔にまとわりつかせる悲愴気な陰り。そのどちらにも、私は不快感を抱かずには居られない。何故なら彼のその顔には感情が伴っている様に見えないから。

 彼の浮かべる表情には、喜びが無い。怒りが無い。哀しみが無い。楽しみが無い。

 在るのは、虚偽に満ちた、感情の伴わない作り物のナニカ。

 不愉快な天立のその顔から目を背けるように、私は彼の傍に居た柳や花陽を見やるが、双方ともに目が合いはするものの言葉を発することは無い。

 誰も何も語らない談話室を外で響く雨音が埋め尽くしていく最中、不意にジルが顔を扉の方へ向け「おや、蒡様」と、牛宮の名を呼んだ。


「う、牛宮君⁉ 何時からそこに居たんだい!」


 両に開かれたままの談話室の扉。そこに凭れ掛かり、こちらを睨みつけている牛宮へ近寄る柳。しかし、牛宮のいつも以上に気だるげそうな表情と、濡れた衣服を認識した途端その歩みは止まる。


「……牛宮さん、宇野下さんと、姉川さんはどうしたのですか」


 月山の死で取り乱した宇野下草子。そして、そんな彼女を宥めようとしながらも拒まれた姉川萌音。そんな二人と共に居ると言っていたはずの牛宮が、何故彼女たちから離れ、此処に居るのだろうか。


「死んだよ」

「は……?」


 間の抜けた声を漏らす柳。

 そんな柳から目を逸らし、ジル、花陽、天立、とこの部屋に居る面々の顔を見回した牛宮は、最後に私の顔を見定め、深く息を吸い――「姉川のヤツが宇野下を殺して、姉川本人も自殺しやがったンだよ!」と、激昂するようにそう吐き捨てた。



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