2章 死の連鎖

2-1 はじまりの、




 相変わらず邸宅の外では雨が降っているらしい。ごうごう、と強い風音を伴わせ窓ガラスを叩く雨粒の音で目覚めた私は、ベッドの上に転がる自身の身体を起こした。


「……今日も、雨ですか」


 ベッドを囲む薄い白の天蓋越しに見える窓ガラスの向こう側。そこに広がる空は暗い雨雲に覆われており、今が朝であるのか昼であるのか、はたまた夜であるのか判別がつきにくい。


「さてと、身支度でもしましょうか」


 ちらり、と枕元に在ったデジタル時計が六時三十分を表示しているのを確認し、私はベッドから降りる。そして軽く髪を整えた後、昨晩ジルに手渡された「ダリアとお揃い」の白のワンピースに袖を通し、私を向かえに来ると約束したダリアの来訪を待つ。

 しかし時計が七時を過ぎ、八時を過ぎても彼女は私の部屋には訪れなかった。

 いい加減ダリアの来訪を待ちかねた私が部屋を出ようと立ちあがった瞬間、駆けるような激しい足音が廊下から聞こえ、直後、部屋の扉が勢いよく叩かれた。


「マリアちゃんっ、居るかい⁉」


 廊下に居るのはどうやら柳であるらしい。彼のせっぱつまったような声に「はい、居ますが」と答えその扉を開けば、そこには息を荒げ汗を零す柳の姿が在った。


「だ、ダリアちゃんがっ!」


 ただならぬほどの焦燥を顔に表す柳の口から吐き出されたダリアの名。その事から、彼女の身に起きた事を私は想像し、戦慄する。


「っ!」

「みんな、ダリアちゃんの部屋に集まってきているはずだから、俺たちも行くよ!」


 幼いダリアの身に何が起きたのか。それを語ることはなく、私に背を向け駆けてゆく柳。

 そんな彼の背を追うように私は自室から躍り出、廊下を走り、ダリアの部屋があるらしい三階へと向かうための階段を駆け上がった。



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