第30話



久々のセックスは今まで以上に得るものがあった。

裸になって体を触ってキスをするのはただの性欲発散で早く終わらないだろうかくらいに思っていたのに全く違った。


莉緒とのセックスは性欲というより愛のためのもので終始気分が良かった。そう思うのはお互いに気持ちがあるからだろう。こんな気分になった事はないし、気持ちが満たされた事もないから間違いない。そして私も私なりに一生懸命愛した。

お互いに気持ちがあれば胸が暖かくなるような思いをする。



この感じが誰かといて幸せという事なのかもしれない。

セックスをし終わってそう感じながらも私達はすぐに眠ってしまったが、莉緒は朝から私の頬を舐めて起こしてきた。




「……莉緒、やめて」


「あ、起きちゃいました?ごめんなさい。嬉しくて舐めたくなっちゃって…」



舌のざらざらする感触で目覚める事は中々ないだろう。莉緒は嬉しそうにキスをしてきたと思ったら私に裸のまま抱きついてきた。


「…なに?」


「昨日すっごく気持ちよかったです。何回もイけて幸せでした」


「そう」


「やっぱり景子さんはセックスうまいんですね。慣れてる感じがしました」


すぐそばにいる莉緒は私の首を噛んだ。私は慣れている訳じゃないのだが、体の疲れを感じながらも事実を話す。


「慣れるって言うかどれだけ相手を思いやれるかでしょ。私は莉緒とするまで何年もしてないし」


「ふふふ、そうですか。景子さんセックスの時も優しいからドキドキしました。これからもしてくれますか?」


「莉緒がしたいならね」



莉緒を愛するためならする。私は首に噛みついている莉緒の頭を軽く撫でてやると莉緒は噛みつくのをやめて私を見つめてきた。


「じゃあ、いっぱいしましょうね?これから景子さんとできるなんて嬉しくてにやけちゃいます。ちゃんと満足させられるように頑張ります私」


「……それは私じゃないの?莉緒はしてほしいんでしょ?」


「そうですけど私は景子さんが触ってくれるだけで嬉しいので、景子さんはそのままでいいんです」


「……そう」


よく分からないがいいらしい。それにしても莉緒が私を満足させてくれるみたいだがどうするんだろうか。莉緒はにっこり笑うと首を舐めてきた。


「景子さんに愛してるのいっぱい伝えますね。景子さんが満たされた気分になって、幸せになるようにいっぱいしてる時も伝えます」


「……漏らしてたのに?」


私はしていた時の事を思い出しながら言った。莉緒は快楽のあまり漏らしていた。痛くしながらやったのに莉緒は終始喜んで嬉しがっていたのだ。この子は前から思っていたがMの気質があると思う。それでも莉緒の態度は変わらない。


「だって、気持ちよすぎたからしょうがないじゃないですか。景子さんに触ってもらうの興奮して嬉しすぎたんですもん……」


「触っただけじゃん」


「そうかもしれませんけど景子さん舐めてくれたし、キスもいっぱいしてくれました。……それに我が儘も聞いてくれたし……。私はとにかく嬉しかったんです」


恥ずかしがる様子もなく私の首を舐め続ける莉緒は言い訳のように言うがやっぱりよく分からない。莉緒は首を舐めるのをやめて私を至近距離で見つめてきた。


「景子さん?」


「……なに?」


今度はなんだ?私は莉緒と目を合わせる。


「セックスしたくなりました……」


「……昨日したでしょ。一人でしたら?」


ねだられても困る。昨日したから少し疲れている。それは莉緒も同じはずなのに私がまた盛らせてしまったのか?莉緒は全く諦める気配がない。


「一人じゃやです。景子さんに触ってほしいし景子さんの事もっと感じたいです」


「疲れてるでしょ。また今度ね」


「疲れてません。景子さんしましょう?セックスしたいです……」


「……」


呆れて無言になってしまう。シーツも洗いたいし風呂にも入りたいのだがどう言えば折れるだろうか。悩んでいたら莉緒は突然キスをして私の手を掴むと自分の胸を私の手の上から揉みだした。

我慢のできない莉緒はもうすでに興奮していたようだ。


「はぁ、‥景子さんの手だと、……やっぱり気持ちいいです。……細くて、長くて……んっ……景子さん?中に指入れてくれませんか?」


「何でそんなに興奮してんの?」


仕方なく上から莉緒にのし掛かるように体を移動する。自分でも力を入れて揉みながら莉緒に尋ねると、莉緒は私の首に腕を回して嬉しそうな顔をした。


「あっ……はぁ、……そんなの、景子さんとできたからですよ。朝……んっ……起きた時に‥裸の景子さんが隣にいたから…‥はぁっ、なんか、ムラムラしてました」


「なにもしてないのに?」


「だって、……んんっ……景子さんとできたの嬉しかったから……」


莉緒の中ではそこまでの事らしい。ただのセックスなのに莉緒はいつも大袈裟と言うかなんというか。私は甘い吐息を漏らす莉緒に囁きながら濡れたそこに指を入れてやった。興奮しているのなら相手をしてやらないといけない。





「一回だけしかしないから漏らさないでよ?」


「はい……。んんっ、……頑張ります。でも、気持ちよすぎたら…んっ……ごめんなさい」



感じている莉緒は我慢できるだろうか。私は少し笑って莉緒にキスをした。

朝方にしていたから疲れはあったけど私達は昨日と同じようなセックスをした。


キスをして綺麗な体に触れて愛を伝えるのは単純ではない。やはり気持ちは大事なものだ。

二回目にしながらそれを冷静に実感する。



だが、莉緒は本当に興奮していたみたいですぐにイってしまった。私の言いつけを守って漏らさなかったけど一回で満足した莉緒に安心する。昨日のようにねだるかと思ったから良かった。


私達はその後風呂に入ってシーツを洗っていつも通り過ごした。



それは昨日死のうとしたのは夢だったのかと思うほどいつも通りだった。

隣に莉緒がいて、莉緒が私に甘えてきて我が儘を言う。それはどうでもよくてウザいくらいに思っていたのに、昨日の今日ではそう思わない。


私は愛着のようなものを感じていた。

莉緒がこうやって私に接するのは莉緒の中の嫌なものを失くすためでもあると思うから、どうでもよくなくなった。


苦しみから逃れたいのは皆一緒だ。

莉緒が昨日のように苦しむのなら私は莉緒を受け入れて相手にしたい。

私はその日一日莉緒を甘やかしてやりながら珍しく我が儘をほとんど聞いてやった。



そして、それからも日常は変わらない。

仕事をして家に帰って寝て、莉緒と過ごす。何の変哲もない日々に私は戻った。


前と違うとしたら死にたくなくなったのと莉緒とセックスをするようになったくらいであとは本当に変わりがない。

私はそんな変わらない日々の中、また飲みに出掛けていた。


今日は仕事終わりにヒロミの店で紗耶香と飲んでいたが紗耶香は急ピッチで飲んでいたのでもう出来上がっていた。


「景子。私さ、結婚はしたくないけど子供が欲しいです」


「……いきなりどうしたの?」


「確かに。あんたいつも結婚したいって言ってたじゃない」


目が据わっている紗耶香に私とヒロミは疑問に思う。紗耶香は何だかんだ結婚願望があったのだが考えが変わったのだろうか?紗耶香はグラスのお酒を飲んだ。


「ガキみたいなバカしかいないからもう結婚は無理だなって悟ったんだよ。子供みたいな事してきたりAVの見すぎみたいな事してきたりさぁ、……もう最近疲れた」


「何かあったの?」


「あったって言うか、……こないだバーで知り合ったやつが凄い勘違い野郎で引いた。顔は良かったんだけど」


「なによそれ。どんなやつだったの?」


紗耶香は基本顔が良くて高収入な男しか引っ掻けない。だから外れを引いた話はとても気になる。紗耶香は嫌そうに話してくれた。


「なんか話してて分かる女に幻想持ってるタイプで気持ち悪かった。エロ本読みすぎなのかな?って感じでさ。しかも風俗行った自慢?みたいなのされて引いた」


ヒロミと私はそれだけで一緒に笑ってしまった。


「それは気持ち悪いわ」


「でしょ?リードもできてないし風俗通ってるやつに女分かってるみたいな話されてドン引きだったよ。風俗じゃ動かなくて大丈夫とか……風俗はそういうところだろ」


「あんたかなりの外れ引いたのね」


もはや気の毒な話にヒロミは同情していた。これには私も同意見だ。紗耶香はげんなりしていた。


「うん。キモいから帰ろうとしたら俺達あってると思うとかごねられて、断ってんのに本当は気があるでしょ?みたいに言われて心労だったわ。ご飯一回食べただけで摩訶不思議だよね。この年で初体験だったよ…。それであんなやつしかいないのかなって思ったら子供だけ欲しくなって……子供育てたい切実に」


「まぁ、なかった事にして飲みなよ。紗耶香ってそんなに子供欲しいとか思ってたんだね?結婚願望の方が強いと思ってた」


紗耶香はあんまり長続きする付き合いをしていないが結婚は考えていた。しかし今は子供みたいで、紗耶香は笑った。


「いや~、最終的には私は子供だよ。子供可愛いじゃん。絶対欲しいんだよね私は。いっぱい愛情込めて育てたら絶対裏切らないし」


笑う紗耶香にヒロミはすぐに突っ込んだ。


「なんか重いわ言い方が。あんたの恋愛遍歴を走馬灯みたいに連想するからやめてそれ。私達全部知ってるから怖い」


「確かに」


「なんでよ?子供が好きなの私は!ていうか、景子笑わないでよ」


ヒロミの突っ込みはよく分かるからまた笑ってしまったら紗耶香に怒られた。三十過ぎると皆結婚子供を求めだすが紗耶香はどうなる事やら。


色々話していたが紗耶香はその後子供だけ欲しいと嘆いていた。



それから皆と別れたのは散々飲んで終電前だ。紗耶香は飲み足りなさそうにしていたが付き合っていると私が潰れてしまうので今日は早めに解散した。

それに莉緒が家にいるみたいだしきっと起きて待ってるだろうから気持ち急いで帰った。そして案の定家につくと莉緒はやっぱり起きて私を待っていた。



「先生お帰りなさい」


「待ってなくていいよ?眠いでしょ?」


部屋に入ってすぐに私に抱きついてきた莉緒は嬉しそうだった。


「先生と会えると思うと眠くないです」


「そう。じゃあもう会えたんだから寝てて。私はお風呂入るから」


「その前に抱き締めてキスしてください。じゃないと離れません」


「……一回だけね」


またウザい事を言う。しかし莉緒は特別だ。私は莉緒を抱き締めると一回だけキスをしたが、莉緒は唇を離してすぐに自分から長く口づけをしてきた。こんな事をするなら最初から自分ですればいいものを。しばらくキスをしてから唇を離すと莉緒はまたねだった。


「先生舌も入れて?もっとキスしたいです…」


「一回だけって言ったでしょ?」


「一回じゃ足りなくなりました。もっとしないと離れられません」


莉緒はセックスをしてから欲深くなった。私に尽くしてくれるけど欲しがる莉緒はたぶん止められないのだろう。私は莉緒の背中を撫でながら訊いた。


「もうお風呂入りたいんだけどあとでじゃダメなの?」


「ダメです。先生ちょっとだけでいいからしましょうよ?したいです……」


「本当に離れてよ次は…」


引かないので仕方なく私は莉緒に深く口づけをした。すると待ってましたと言わんばかりに自分からも積極的に舌を絡めながら私の首に抱きついてくる。全く欲しがりなやつだ。




「あっんっ……はぁ、景子さん…もっと……んっ」


「んっ…はぁ、んっ」


盛っているのを察知した私は莉緒を抱き締めながら片手で尻を揉む。そして足を動かして股の部分を刺激してやると莉緒は少し腰を動かしながら気持ち良さそうな声を漏らした。


「んんっ!…はぁっ、あっ!……んっ……景子さん…」


「……んっ……はぁ」


「あぁっ……はぁ…んっ!…はぁ……景子さんダメ…」


自ら唇を離した莉緒の表情は快楽に染まっていた。

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