第21話



あの日のデートから莉緒は私の家にほぼ来ていた。


キャバクラとか用事がある日は来ない時があったが帰ると莉緒はよく私の家に勝手に居座っていた。


そして今日も帰ってくると莉緒はいて一緒にご飯を食べて寝る準備を済ませた私達はソファで寛いでいた。

莉緒はあの日からこうやって寛いでいると横から私に抱きつきながら私を勝手に食べてくる。最初は許可を取っていたのに最近は私が座っているのを見つけると嬉しそうに犬みたいに私の元に来ると美味しそうに私を食べだす。


「先生?頭撫でてください」


「……」


私の首に噛みついて舐めていた莉緒は私の手に狙いを定めながらねだってきた。これでは大きなペットのようだ。私はテレビを見ながら無言で軽く頭を一回撫でた。



「先生……もっと撫でてください!足りません!」


「分かったから大きな声出さないで…」


今日は仕事が疲れたが明日は休みだ。何をしよう。私はテレビを見ながら莉緒の頭を適当に撫でていたら莉緒にテレビを消されてしまった。


「先生テレビより私の事見てください!」


「……なんで?」


さっきからやけにうるさい。莉緒に視線を向けると私の指を噛みながら私を不機嫌そうに見つめていた。


「だって全然私の事見てくれません…。私は先生の彼女なのに……」


「‥見てるじゃん今」


「でも、言わないと見てくれないし、触ってもくれないじゃないですか」


「……」


莉緒に言われてそういえばそうだったなと納得していた。私は莉緒にあんな事を言ったくせに自分からは何もしていなかった。


「莉緒」


私は莉緒の方に体を向けて片手を腰に沿わした。それから莉緒の目をしっかり見つめる。莉緒はなぜか緊張したような顔をしていた。


「え?……えっと、どうしたんですか?……あの、……私うざかったですか?」


「…違う」


何を勘違いしてるんだ。私は動揺している莉緒にキスをした。何度か啄むように優しくキスをする。莉緒はそれだけで表情が変わってきた。


「そんな顔してどうしたの?」


私の性欲を誘うのは不可能なのに女らしい顔をする。莉緒は私を見つめながら少し笑った。


「優しいから……嬉しいんです」


「莉緒は激しい方が好きなんじゃない?」


私は性格的にあまりがっつけない。そこまでの性欲は私にない。でも今時の若い子はきっと違うだろう。莉緒は私にキスをして教えてくれた。


「私は先生が相手なら何でも好きですよ?でも、首絞めたり、叩いたりするのはもっと好きです。……先生今日やってくれませんか?思いっきり叩いて、首絞めてほしいです」


莉緒は私が遊びでやってしまった行為の虜だ。あれは莉緒の中でセックスを凌駕する。莉緒は喜ぶけれど私は抵抗が全くない訳ではない。しかし、あれは愛する行為でもある。


「……またやりたいの?」


「はい。あれからしてないからしてほしいです。それに……先生触ってくれないから……私も溜まってます」


「……」


溜まっていると言われるのはなんか懐かしく感じる。昔付き合っていたやつに言われた時はあっそうと流してしまっていたが莉緒は相手にしてあげないとダメだ。私は腰に回していた手に力を入れてぐっと引き寄せると莉緒の太ももを撫でながら間近で尋ねた。


「あれやる前に他にしてほしい事してあげる。何してほしい?どこ触ってほしいの?」


「先生の好きな事……してほしいです」


照れている莉緒は私から目を逸らさない。私の好きな事はないがしてやらないと。私は無言で莉緒にキスをすると莉緒が私を食べる時にするように首に噛みついて舐めてみた。莉緒は嬉しそうに笑った。


「先生可愛い。……もっと強くしてください」


「……こう?」


痛くなる事を自ら望む莉緒は首に噛み跡がつくくらい強く噛みつくとうっとりした声を漏らした。


「あっ……はぁ……いいです。……ふふ。気持ちいい……。先生は……絶対うまいですよね?セックス」


私の頭を撫でてくる莉緒は太ももを撫でる私の手を服の中に入れる。察した私は莉緒の胸を揉んだ。


「莉緒の方がうまいでしょセックスは」


「私は……される方が好きだから…する方は苦手なんです。奉仕感覚で命令された事をするのは……んっ、好きですけど」


「莉緒も苦手とかあるんだね」


私は莉緒のブラを外すと直接胸を揉む。そして莉緒の首に噛みついてから次は耳に噛みついた。莉緒はそれに体を敏感に反応させる。


「はぁ……あっ、ありますよ。……私、んっ……支配されてる感じが……はぁ、堪らなく好きなんです」


「支配?」


莉緒は好きな事がずれている。私の興味を本当によく引く。


「はい。……してもらってると……んっ……いつも、自分が支配されてるなって感じて……はぁ、私、この人のものになってるんだって……あっ、……はぁっ……んっん!……嬉しいです」


「そう。でも、私達は付き合ってるんだから私だけのものでしょ莉緒は」


私は噛むのをやめると莉緒の顔を覗き込んでキスをする。莉緒は私の頬に手を添えて艶っぽく囁いた。



「まだですよ先生。まだ完全じゃないです…。私は景子さんに染まりたいんですよ……」


莉緒の瞳を見ていると魅了されたみたいに動けなくなる。莉緒は私の首にキスをしながら続けた。


「私は景子さんに一番近い存在になりたいんです。景子さんと同じものが好きで、景子さんの気持ちに同調して、理解して、同じ思考を持ってあげられる存在です。……それは私だけがなれるものだと思ってます。まだ私の努力不足でなれてませんけど、きっとなってみせますよ…?いつかセックスもして私が景子さんの全てに触れて、景子さんを本当に理解できたら……私が私じゃなくなる。……ふふ、そしたら私は世界で一番幸せ者です」



まるでサイコパスのような持論は理解しがたい。

私に染まって自分じゃなくなるの真意はなんだ?



莉緒の最終的な幸せは私にはまだ理解できなかった。この子は全てが今までと違う。



「景子さん……胸……もっと強くしてくれませんか?焦れったくて……むずむずします。前にしてくれたみたいに強くしてください」


私を見てお願いしてきた莉緒は興奮してきているようだった。気持ちが溢れてきている莉緒は目の色を変える。


「……これでいい?」


私は要望通り前にしてやったみたいに強く胸を揉む。莉緒はそれだけで気持ちよさそうな吐息を漏らした。



「あっ……はぁ……、んっ……はい……」


「気持ちよさそうだね莉緒」


「……はい。……これ、…すごく好きです」


たったこれだけで、しかも痛いはずなのに莉緒は快楽を感じている。この姿を見ると私の中のもっと苦しめてしまいたいと思う欲が出てくる。……あぁ、ダメだ。

私はソファに莉緒を押し倒すと莉緒の口に指を突っ込んだ。



「莉緒……もっと幸せにしてあげる」


胸を強く揉みながら私は指を喉の奥の方に入れて戻すを繰り返す。

莉緒は必死にそれを舐めて吸い付いているが苦しそうな声を漏らす。


「んっ……んっ……んん!はぁ……んっ!はぁ……」


「莉緒……苦しいの?」


私は分かっていて訊いてしまった。

嬉しそうな顔をする莉緒に。



莉緒は舌を私の指に絡めて、下品な音を立てながら指に吸い付いて首を横に振る。少し涙目な莉緒をもっと幸せにしてやりたい。

……もっと愛してやりたい。



私の頭はそれだけだった。

指の出し入れを早めて莉緒の口の中で指を動かしてやると莉緒は苦しそうにしながらもさっきより快楽を感じている様子を見せる。それは私の頭を刺激する。


「はぁ……んんっ!……んっ……んんっ!」 



「莉緒……綺麗だよ」


「んっあ!……んっ、んっ……んんっ!!」



快楽で涙を一筋流した莉緒が本当に綺麗だった。



私は愛せている……。



この愛が……私を掻き立てる。



あぁ、首を絞めたい……。

息を止めてやりたい……。

もっと喜んで幸せになっているのを見たい。



強まった欲求に私は莉緒の口から唐突に指を抜いた。


「はぁっ、…んんっ…景子さん……もう終わりですか?……もっとしたい……」


女らしい表情をする莉緒に笑った。



「もっと気持ちいい事したいでしょ?」


「はい。したいです……」


「莉緒が好きなやつしてあげる」



私は莉緒の上にまたがった。

すぐに私の言葉を理解した莉緒は待ちきれないかのように私を見つめる。


「景子さん…早く…」


「焦らなくても今日はいっぱいやってあげるよ」



殺さないように、でも殺す勢いで、私は笑いながら首を絞めた。莉緒の細い首を押し付けるようにキツく首を締め付ける。

はぁ、なんなんだこの高揚感は。


私は幸せそうに笑う莉緒を見つめた。




「莉緒……気持ちいい?」


「……はい……」


「幸せ?」


「……すごく……しあわせ……です」



それを聞けた私はさらに高ぶってしまった。もっとだ。まだまだ……、まだ足りないんだ。


「じゃあ、もっと絞めてあげる」



私は指に力を込めて息が止まるようにしてやった。

莉緒は息苦しそうにしながらも私だけを見つめる。



「けいこ……さん」



私を呼ぶ莉緒に目で応えると莉緒は幸せそうな顔をして苦しそうに言葉を繋ぐ。



「…す………き……。あ、……あい……して……ます……」



「……そう」


ますます笑ってしまう私に莉緒はさらに小さな掠れる声で私に気持ちを伝えてきた。



「ほっ……ほんと……に、大好き……です」


「……」


「いち…ばん……あ、……あ、い……して…ます」



もっと見て聞いていたいが殺してしまったらそれは叶わなくなる。私は高まる感情を抑えながら手を緩めると莉緒は息を荒げながら胸で呼吸をする。


「莉緒」


私は息の荒い莉緒を呼び掛けて優しく何度かキスをする。何か分からない気持ちが溢れてくる。唇を離すと莉緒は私の頬を撫でながら愛おしそうな眼差しを向けた。



「景子さん……好きです。愛してます。もっと、もっとしてください……。私を愛してください」


「……いいよ。愛してあげる」



可愛らしい莉緒に笑いかけてまた莉緒の首を締め付ける。


莉緒、莉緒はなんて幸せそうに笑うんだ。


莉緒に対する分からない気持ちが私の中で大きくなる。



「莉緒、綺麗だよ。…………本当に綺麗だよ。……殺したいくらい……」



私は強く首を絞めながら囁いた。

こんなに美しい莉緒を見ていると気持ちが止められない。





「……嬉しい……。けいこ、さん……景子さん……愛してます……」


莉緒は本当に嬉しそうに笑っていた。

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