帯広の銭湯

 銭湯から出ると、僕のバイクを見ながら立ち止まって話している2人組がいた。先ほど露天風呂で見かけた気もする。

 気まずさと好奇心で、会話がギリギリ聞こえるくらいの距離で2人組が通り過ぎるのを待った。

「あしたち?ナンバーってどこかな」

「知らね。初めて見た」

「遠くから来てんだろうな」

 僕の存在に気づきもせず2人組はそれだけを言うと、すぐに話題は切り替わり笑いながら歩き出した。

 確かに「東京」ナンバーではないし、「足立」は知らなければ、読めないのかもなと思った。

 十代だった当時の自分よりも格段に人生経験のありそうな人たちが、自分の中での当たり前を知らないということを不思議に思う。

 空を見上げれば、東京では考えられないくらいの星が瞬いていた。

 遠くまで来たんだな

と、その旅で何度目かの実感が湧いてきた。

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