第101話「空からの情報を手に入れたら、マッピングの重要性に気がついた」

飛竜ワイバーンにも、知的な者とそうでない者がいる』


 僕たちが話しやすいように、頭を地面近くまでおろして、飛竜は言った。


『俺は言うまでもなく知的なものだ。あるじ殿よ』


 僕たちは知らなかったけど、ミイラ飛竜のライジカは『知的な飛竜』の中では伝説の存在で、それに認められた者は、問答無用で上位者になるらしい。


 でも……『あるじ殿』って。


 別にこっちは、この飛竜を支配するつもりも、こき使うつもりもないんだけど。


「名前を聞かせてくれないかな。僕はナギだ」


『ガルフェ』


「わかった。じゃあガルフェ、お互いの秘密は守るってことでいいか?」


 これから話すことには重要な情報も混じってるから、できれば『契約コントラクト』しておきたい。


『もちろんだ。俺は「霧の谷」がでライジカが使命を果たしたかどうかだけを聞かせてもらえればいい』


 飛竜のガルフェは、青色の頭を横に振った。


『「霧の谷」の秘宝については、語れないのだよ』


「語れない?」


『俺たち飛竜は、秘宝を絶対に守ると誓っている。だから、語らず、忘れることで秘密を守ることにした。俺は秘宝の正体を知らぬし、その価値もわからぬ。ゆえに聞かぬし、語らない』


 なるほど。


『天竜の卵』は、ワールドアイテムみたいなものだから。


『契約』で口止めしようと思ってたけど、必要なかったか。


「わかった。まずはこちらから情報を提供する。飛竜にとっての伝説の存在、ミイラ飛竜のライジカは、使命を果たして消えたよ」


 僕は飛竜のガルフェに『霧の谷』に行くことになったいきさつから話した。


 街道で僕たちがガルフェと戦ったあと、『霧の谷』の情報を聞いたこと。


 記憶喪失の仲間が、その場所のことを覚えていたこと。


 仲間の記憶を取り戻すために、『霧の谷』を目指したこと。


 そして『霧の谷』の試練をクリアして、ミイラ飛竜のライジカから『宝石(ライジカの眼球)』をもらったこと。仲間の記憶も一部、取り戻したこと。そして『霧の谷』が封印されるのを見届けたことを。


『古代エルフ』と『天竜の卵』のことをのぞいて、手短に伝えた。


「僕が出会ったミイラ飛竜は、いいやつだったよ」


 結局、ラフィリアの正体も教えてくれたし。


 僕たちを信用して、シロの卵を預けてくれた。


「託されたものについては語らない。けど、大切にすることは約束する。僕たちが出せる情報はここまでだ」


『おお! ご先祖は、数百年にわたる使命を果たしたのか……』


「ガルフェは『霧の谷』の施設については知ってるのか?」


『知っている。あれは天然の魔力だまりを利用して作った宝物庫。飛竜としては禁忌の地となっている。俺は上を通るだけだったがな』


 飛竜のガルフェは、ががが、と、のどを鳴らして──泣いてるみたいだった。


『得るべきものは得た。では、あるじ殿の問いに答えよう』


「僕が知りたいことは2つ。この前、西の方であった発光現象の現場の情報と、魔物に占拠された砦がどうなっているかだ」


『竜のかたちの魔力が解放された場所か』


「あれがなんなのか、お前は知ってるのか?」


『「語らぬ」と言ったであろう?』


 飛竜は口をゆがめて、笑ったみたいだった。


『あれは石柱が並ぶだけの遺跡である。今は、それが崩れているだけ。上を通ったときに、十名ほどの人間をみかけた。銀色の鎧を着た、城などで見かける兵士であった。他には特に言うべきことはない』


「魔物に占拠された砦については?」


『あれは遺跡のすぐ側にあるな。低級の魔物どもが群れていたが、散りはじめている。空から見た感じでは、好戦的なゴブリンどもがいるだけのようだが』


 そう言って飛竜のガルフェは口を閉じた。


 空からわかるのはそれくらいか。


 まとめると、天竜の魔力が封印されていた場所には、城にいるような兵士──たぶん、王子様の関係者──が調査に行っている。これから王子様の『砦攻略クエスト』が行われるってことは、砦の魔物の調査もしているかもしれない。


 砦の方は、魔物が減ってきてる。今は好戦的なゴブリンが占領してる状態だ。


 ってことは、攻略クエストの難易度はだんだん下がってる。冒険者と兵士が集団でかかれば、攻略できるだろう。僕たちの出る幕はない。


 そういうわけで、遺跡にも、砦にも、今のところ近づく理由はない。


「最後にひとつ、いいかな」


『なんなりと。あるじ殿』


「海の向こうに、天竜が住んでいた島があるって聞いたことがある」


 これは『天竜の残留魔力』に聞いた話だ。


 その島は天竜の領地で、僕たちにくれるって話になってた。


「そこって、お前の翼で行けるのか? 船だとどのくらいかかる?」


『わからぬなぁ』


 飛竜のガルフェは、首を横に振った。


『伝説の魔法使い、魔女ならば知っているかもしれぬ。俺は海を越えようと思ったことはない』


「海の向こう──辺境には魔王がいるからな」


『さよう。俺は知的な飛竜だ。凶暴なものたちに関わりたくはない』


「知的だからな」


『知的であるよ』


「記憶力とか、距離感に自信は?」


『知的だから、かなりあるぞ』


 ガルフェは首を反らして、笑った。


 そっか。


 じゃあ、ここからが本命だ。


 僕は馬車から持ってきた地図を、地面に広げた。


「この地図が見えるか、ガルフェ」


『……小さすぎる』


 飛竜のガルフェは首を横に振った。


 この地図、A3サイズのタペストリーだからね。


 身長5メートル近い飛竜には、小さすぎるか。


「リタ、イリスも、手伝って。この地図を地面に書き写す」


「りょーかい」


「はい。お兄ちゃん」


 打ち合わせ通りだ。


 僕たちはそれぞれ棒を持って、土の上に地図を書き写していく。


 元の地図は、僕たちがいる別荘にあったものだ。


 港町イルガファから、翼の町シャルカ、それと保養地ミシュリラのまわりまでが描かれている。けど、内陸部はほとんど白紙だ。『魔法実験都市』も『封印の地』も『砦』の場所もない。


 これは海洋貿易のための地図だから、情報が港と海に集中してる。


 他の地図と組み合わせればいいんだけど、この世界には、ちゃんとした地図ってのがあんまりない。


 冒険者ギルドにあった地図も、町のまわりや街道、その周辺については正確だけど、それ以外はかなりいい加減だ。魔物が出てくる世界で、測量なんかできるわけがないから、しょうがないんだけど。


 元の世界でちまちまマップを考えてゲームを作ってた身としては、自分たち用にもっと正確な地図を作っておきたい。


 飛竜のガルフェを呼び出したのは、そのためだ。


『おお。わかるぞ! これは地形を描いたものだな!!』


 飛竜のガルフェが興奮した口調で叫んでる。


『なるほど! ひとはこのように記録を残すのだな。興味深いな』


「これが地図だってわかるのか……。さすが知的な飛竜だな、ガルフェ」


『いやぁ、あるじ殿にそう言われると照れるな!』


 ガルフェは照れくさそうに、後ろ足で地面を引っ掻いた。


『ま、まぁ。我は伝説の存在、ミイラ飛竜ライジカの末裔であるからな!』


「いや、でもすごいよ。頼りになるなぁ。人間が作った地図を一目で理解するなんて、並の魔物じゃないよ。神話に出てくるドラゴン並だ。すごいすごい。尊敬する。そんな奴に『あるじどの』なんて呼ばれるのは光栄だ」


『お、おお』


「だってお前は知的な飛竜だもんな。僕たちと戦ったとき、ぎりぎり僕たちが勝ったけど、紙一重だったし。次回はわからないよな」


『い、いや。あるじどのと戦うことは二度とあるまい。それに、あるじどのたちこそ、すばらしい手腕であった。だからこそ、俺はあるじどのに忠誠の証である『ブラッドクリスタル』を渡したのだ。ふたたびあいまみえ、力を合わせ、ともに高みをめざそうと』


「そういってくれると助かるよ」


 いいやつだな。飛竜のガルフェ。


「じゃあ、力を合わせるついでに、地図づくりを手伝ってくれないかな」


『……なんと!?』


 飛竜のライジカは目を見開いた。


 飛竜って、驚くと瞳孔が縮むのか。知らなかった。


「報酬は、甲羅をはいだロックリザードの肉だ。飛竜がロックリザードを食べるなら、だけど」


『……大トカゲ系は普通に捕食対象だが……あるじ殿たちは妙なことを考えるのだな』


 飛竜のガルフェは、牙が生えた口を開いて、僕たちを見てる。


 地上に描いたのは、黒板くらいの大きさの地図。僕もイリスも、地図どおりにトレースしてる。リタのはちょっと曲がってるけど、だいたいわかるからオッケーだ。


「そんなに綿密にでなくていいからさ」


 僕は飛竜の顔を見上げて、言った。


「この地図を見て、重要な場所の位置を教えてもらえないかな? 僕たちがそこに書き込んでいくよ」




──約1時間後──




『お、おお、おおおおお! わかる。わかるぞおおおおおっ。これは、地上である!?』


 飛竜のガルフェは、できあがった地図を見て、感動してた。


 さすが実際に空を飛んでる生き物の情報は正確だ。


 僕たちがいるのは、保養地と山岳地帯の間にある廃村だ。街道を進むと『封印の地』から『砦』に行ける。距離は2日から3日程度。途中にいくつかの小さな村がある。


 街道を北に向かえば『霧の谷』


『魔法実験都市』はさらに北。途中にまた山岳地帯があるせいで、一度大きく迂回しなきゃいけない。それに『魔法実験都市』には結界が張ってあって、飛竜もあんまり近づきたくないところらしい。


 僕とリタ、イリスは、地面に細かく地図を書き込んでいく。


 街道や川、そのまわりの地形。山は上向きの三角形。谷は下向きの三角形。森は上向きの矢印。


 とりあえず「保養地ミシュリラ周辺地図」の完成だ。元の世界の地図アプリに比べれば精度はいまいちだけど、この世界で使うには十分。


 これでやっと、地方マップが手に入った。


 ゲームでも、地図があるのとないのとでは、攻略にかなりの差がでるからなぁ。これがあれば移動にかかる正確な時間もわかるし、そこから必要な食料や水も計算できる。


 この地図に危険な場所、魔物の出現位置、重要地点を書き加えてアップデートしていこう。そうすれば冒険にも、商売にも、他にはないアドバンテージになるはずだ。


「すごいですお兄ちゃん! これって、商人さんだったら誰でも欲しがりましょう!」


「そうなの?」


「当たり前でしょう!? ここまで広範囲の、正確な地図なんか……あるとしたら王宮の宝物庫くらい……」


「最終的には、これに魔物の出現位置を加えてアップデートしていくつもりなんだけど」


「……これ、板か布に複写されるんですよね?」


「うん」


「できあがったら、イリスに任せてもらえませんか?」


 イリスはズボンの裾を握りしめて、なんだか興奮してる。


「お兄ちゃんの『働かなくても生きられる生活』の助けといたしましょう」


「わかった。できあがったらね」


 地図ってロマンがあるよね。


 元の世界でゲームを作ってたときもそうだったけど、地図って見るのも、作るのも、はまると止まらなくなるんだよな。


「ガルフェもありがとう。さすが知的な飛竜だ」


『ち、ちてきだからなっ! だが、なかなか疲れるものだ……』


 飛竜のガルフェは頭をふらふらさせてる。頭を使わせすぎたか。


「ありがとうガルフェ。じゃあ最後に、僕たちを背中に乗せてくれるか?」


 じゃあ、せっかく作ったんだから、記録しておこう。


『……乗せて飛べと?』


「そこまではしないよ。上から地図の全体像を見て、記録しておきたいだけだ」


 せっかく、飛竜に協力してもらって作ったんだ。


 記録しておいて、あとで大きな板に写し取って、それから布にでも転写しよう。


「リタ。僕を背負って、この飛竜の肩まで上がってくれる?」


 まわりを警戒してたリタに、僕は言った。


「上から地図が見えるように。そこで記録を取るから」


「……うぅ。わ、わかったわ。ご主人様」


 リタは真っ赤になってたけど、僕の前でかがんでくれた。


「大丈夫? 重くない?」


「ふ、ふーんだ。獣人の運動神経をなめたらだめだもん。ナギぐらいの体重なら大丈夫。むしろごほうびだもん!」


 リタがそう言ったから、僕は細い肩に手をかけた。


 背中に身体を乗せて、体重をかけた。


 リタは僕の両足を抱えて、すっ、と立ち上がる。


 まったくぐらつかない。完全に安定してる。


「すごいな。リタ。さすが獣人の運動能力──」


「はぅっ!」


 べちゃ


 つぶれた。


「ふわわ……」


 リタはつっぷしたまま、熱い息を吐いてる。


「リタ、大丈夫? やっぱり重かったか?」


「……息。耳。くすぐったい……」


 獣耳が、僕の目の前でぱたぱた揺れてる。


「……耳の後ろ、されると、ふわふわしちゃう」


 ……あ。


「ごめん」


 リタの獣耳は、頭のところにあるから。


 おんぶされた状態で僕がなにか言うと、直接息をふきかける格好になるのか。




『送信者:ナギ


 受信者:リタ


 本文:もう一回、お願い。息が外に漏れないようにするから』




 今度は『意識共有マインドリンケージ・改』でメッセージを送る。リタとラフィリアとの接続、まだ解除してなくてよかった。


 リタは一瞬、びくっ、ってなったけど──


「わかりました。ご主人様」


 深呼吸してから、うなずいてくれた。


 僕は口に手を当てて、息が外に漏れないようにする。


「いきます。てやああああああっ」


 リタが地面を蹴った。


 飛竜に負担をかけないように、背骨に沿って駆け上がる。


 僕はリタの背中にしがみついてる。ぜんぜん揺れない。平地を走ってるのと変わらない。これが獣人のバランス感覚か。まるで僕がリタの視線で世界を見てるみたいだ。まだまだお互い、知らないことがいっぱいだ。


 リタは数秒で飛竜の肩にたどりつく。


 飛竜のガルフェは頭を下げて、地上のイリスと話をしてる。


 イリスは「動かないでください」ってお願いしてるはずだ。


 飛竜の肩は、地上から3メートルくらい。


 よし。ここからなら、地上に描いた地図の全体が見える。


 僕は地上に視線を合わせる。地図全部が視界に入るように。そして『意識共有・改』の特殊効果を呼び出す。


 アイネとの魂約スキル『意識共有・改』はメッセージだけじゃなくて、画像も送ることができる。僕が見ているものをスナップショットにして、メッセージに添付てんぷできるんだ。


 送ったあとは僕の方にログが残るから、画像も数日間は記録される。別荘に戻って、板に地図を書き写すまでは持つはず。


(『意識共有・改』の特殊効果を起動)


 そう考えると、ウィンドウに『撮影』ボタンが表示された。


 指を当てて、視界はそのまま地図にあわせて、と。




 ぱしゃり




 音がした。これで撮影できたってことかな。


 あとは、これをメッセージに添付すればいい。


 リタを刺激したくないから、これはラフィリアに送信しよう。




『送信者:ナギ


 受信者:ラフィリア


 本文:飛竜との交渉はうまく行ったよ。協力して地図を作ったから、念のため見ておいて。


 添付ファイル:ナギイメージ01(地図っぽいなにか)』




 送信完了、っと。


「とぅっ!」


 リタは飛竜の肩を蹴った。そのまま背骨を伝って、地上へ。


「……はふぅ」


 背中から降りると、リタはなんだか熱い息を吐き出した。


「帰ったらみんなにはごほうびを用意してるから。別荘に戻るまでがんばって」


「ごほうび?」


「ドルゴールさんと話はつけてある。帰ってのお楽しみだ」


 人助けとはいえ、お休み中にお仕事を入れたんだから、それくらいしないと。


『ロックリザード』の甲羅を商人のドルゴールさんに卸して、代金で奴隷の福利厚生になるものを予約してある。


「ごほうび……ナギが私たちにくれる、ごほうび……えへへ」


 リタは尻尾をふくらませてうっとりしてる。


 喜んでくれてよかった。


 イリスは飛竜のガルフェと意気投合したみたいだ。


 イリスは片腕を、ガルフェは片翼をあげて、首を傾げて、にやり。


「お兄ちゃーん。記念にこの姿を師匠にも送ってくださいー」


 飛竜と一緒にかっこいいポーズを取ったまま、イリスは言った。


 ……飛竜のガルフェが喜んでるように見えるのは、気のせいだよね?


「お願いいたします! あとでイリスがご奉仕いたしますからーっ!」


『GUOOOOOOOOOO! あるじ殿──っ!』


「……いいけど」


 送るのに魔力使うんだから、ほどほどにしなさい。


 とりあえず低解像度(炎の矢5発分くらい)で、ぱしゃり。はい、送信。


 2枚目の画像をラフィリアに送った。


 しばらくすると、ラフィリアから返信が返ってくる。




『送信者:ラフィリア


 受信者:使い方覚えましたよマスター?


 本文:なるほどー。『意識共有・改』は画像も送れるんですねー。ふふ。ふふふふー。


 添付ファイル:ラフィリアイメージ01(本人の了承済み)』




 ……しまった。ラフィリアに知恵をつけた。


 しかも、むちゃくちゃ高解像な画像が添付してある。


 写ってるのは、セシルとアイネ。カメラ目線──正確にはラフィリアを見て笑ってる。


 たき火の様子を見てるふたりを、ラフィリアが上から見下ろしてる構図だ。


 ……服の襟元から、鎖骨が見えてる。アイネの方はその……胸の谷間も。


 これをどうしろと……………………。


 ………………………………………………ログは……残ってるな。うん。


 ……ラフィリアには魔力の無駄遣いしないように言っとこう。




『送信者:ラフィリア


 受信者:そういえばマスター


 本文:さっきの地図は拝見したですぅ。びっくりですねー。この地方にある3つの町と、魔力に満ちた土地の場所が、古代エルフの魔法陣と同じなんですねぇ』




「…………え?」


 ……古代エルフの魔法陣?


 町と、魔力に満ちた土地の場所が?


 本文には続きがある。えっと。


『正確には、古代エルフが使ってた、魔力を高めるためのエンブレムですねぇ。星座みたいに宝石を配置することで、魔力の流れをよくするというものです。聞いてみたらセシルさまの一族にも、似たようなものがあったそうです。おんなじですね。なかよしですねぇ。

 ただ、不思議なのは、星座のうち、一カ所だけ抜けてるってことですぅ。かなめの位置です。一番重要な場所なんですけどねぇ』




 僕は地上に描いた地図を、改めて眺めた。


 大きな町は『翼の町』と『保養地』と『魔法実験都市』


 魔力溜まりというのは『霧の谷』『天竜封印の地』のことだ。


 その配置が星座のように、魔族と古代エルフにとっては、意味があるものになってるってことか。




『送信者:ナギ


 受信者:ラフィリア


 本文:セシルとアイネに確認を。この地方に、天竜以外でなにか伝説が残ってないか。

 町の配置が偶然じゃないとしたら、星座の抜けてるところに遺跡があるかもしれない』




 天竜が堕ちた地。


 封印の地。


 霧の谷。


 貴族がやってくる保養地。


 古代エルフと魔族──古き血。


 それに関わる秘密が、この土地にはまだあるのかもしれない。




『送信者:ラフィリア


 受信者:わかりましたマスター


 本文:アイネさまが、この地にまつわる伝説「清めの聖女」の話を知ってるそうです。天竜が死んだ後の時代にいた伝説の魔法使いで、神官もやっていた人だそうです。もしかしたらこの魔法陣と関係があるのかもしれないですねぇ』




 ……レスポンス早っ。


 うちの子たち……優秀すぎだ。

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