第10話 覚醒

「あっ…………」

絶句。

(ヨズクのやつ、お父さまをを刺しやがった)



「ヨズクーーーーーーーッッ!!!!!ナイフ野郎が終わったら次はお前だーーーーー殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す絶対にお前を殺す!!!!!!!」



溢れ出る感情が止まらない。

僕が守ろうとしていたものを、あいつに壊された。

昔から気に入らなかった。ずっとへらへらしていて、お父様には、たてをつく。

いつか痛い目を見してやろうと思っていたが、気が変わった。

あの恩知らずは僕が殺す…



「よそ見ばかりしないでもらいたい。」



アムドゥキアスがもう何度目か分からないくらい僕にナイフを突き刺す。



「クククッ面白い事が起きそうだ。輪廻か、忌々しきあの男との輪廻をこの手で断ち切れそうだ。」



「ぐぁーーッッ」



もうだめだ、ヨズクを殺すと張り切ってはいるが、再生出来る魔力が底を尽きてきた。

こいつに、殺されるのか僕は。

あのクソ犬男を何がなんでも殺さなければいけないのにな。



「どいていろ雑魚が、興味が失せた。」



再生中の傷が治らないうちに、アムドゥキアスの突進により、僕は吹き飛ばされ意識を手放した。



「ふふっ中々に楽しめたぞ、さぁここからであろう、犬っころ。」

アムドゥキアスが気を失って伸びている、ヨズクに向かって話しかける。





―――――――――――――――――――――――――――




ふわふわする。

僕は落ちているのか?

先が見えない暗闇を真っ逆さまに落ちていた。

声が聞こえる。


《ギャハハハハハ、今日はいろいろあって疲れたろ。まー無理もねーよ、初めて人殺したんだからな。ゆっくり寝てろ、後は俺が片付けといてやるぜ》


思い出したくないことを…

身を委ねるようにして、今は眠ろう。

ヨズクは意識を手放していく………





―――――――――――――――――――――――――――



クワッと目が開き、寝ていた筈のヨズクが起きる。

首の骨をポキポキならしがら



「貧弱な身体だぜぇ、まあいいか殺ってやるよ」



アムドゥキアスの方を見ながら立ち上がる。



「おやおや《今》のあなたはどっちなんでしょうね?」



「答える義理もねぇだろ、久々の運動だ、簡単に壊れてくれるなよ!!!!」




「”召喚サモン”」

ドッッッゴーーーーーンッッッッッ

いつもの犬などどこにもいない。

雷が落ち、一匹の狼が現れる。



「俺の身体外から見るってなんか新鮮だなっ!!!」



「"武器変形ウェポンモード"」

「くぅーーーー久々ー、いくぜヴァジュラ」



青と白と黒が入り乱れ、綺麗な紋様ととして浮かび上がるヴァジュラと呼ばれた鎧。

フルフェイスで身体全体に程よく馴染むそれは歴戦の雰囲気を醸し出す。



「見掛け倒しじゃないといいんですが、ゆけっ!!!!」



アムドゥキアスがナイフを振りかぶり数百本がヨズクの元へ飛んでくる。




「瞬雷の如く 光を渡る光 鏡面に広がる世界

我が声を聞け 雷光覚殺」



「瞬神瞬雷ッッ!!!!」




アムドゥキアスが目で見ていたそれは文字通り消えた。

速いとかではなく、消えた。

どういうカラクリか見極めようと目を凝らすが



「お前じゃ俺を追えねーよ」



ずぶりと背中から自分の胸にかけて、黒色の籠手が伸びる。



「こんなもんか、世の中も変わったねー次行くか次!」




と余裕そうなヨズクを尻目に、



「サタン様の…宿願は達成された……お前の運命はもはや決まっているのだよ」



ガフッッ



口から血を吐いたそれは、胸に大きな穴を開け、ピリピリと焦げた匂いをさせながら息絶えていった。



「うるせぇー黙って死んでけ」

ヨズクはそう言い残し消えた。

―――――――――――――――――――――――――――



「もぉーーーどなってんのよーーーー」



ヨズク達の方で起きた出来事を知る由もない、桜子と楓子は、アンドロマリウスに翻弄されていた。


暗黒化したアンドロマリウスは尾を一尾だけ残し、8体に分身。

全部が全部あの拳圧を使ってくる。



「いーことをー教えてあげよーーーう☆」

「全部が僕ちゃんで、全部が僕ちゃんじゃない。この《妖狐の舞》を君らは突破でっきるっかなーーー?」

「アハハハハハハーーー」



「謎謎なんてしてる場合じゃないのよ!!ゴーレムシフト!!!!」



そう言いながら桜子と楓子が重なった者が地面を殴ると8体ほど地面の土を形成した高さ3mのゴーレムが現れた。



「無駄むっだーーー☆フンッ!!!」



アンドロマリウスが拳圧で吹き飛ばそうと拳を振るう。

だか重すぎるそれはそよ風になびかれた程度にしかならなかったのである。



「あれれ?失敗しっぱい☆」



「うちらお手製の特殊合金ゴーレムがそんなんで吹き飛ぶ訳ないじゃない!!!!地面の中から純度の高い鉱石を集めて形成したのよ!!!行ってゴーレム!あいつを壊して!!!!!!!」



ズズーッッと重たそうな動きからアンドロマリウスを撃ち抜こうとするゴーレム達。



「痛いのあんまり好きじゃないんだけどなーーーーそっちがその気ならやっちゃうよ☆」



8体が全て、ゴーレムの正面に周り、拳と拳を突き合わす。

拳圧で人一人をゆうに吹き飛ばすそれの威力は、もはや言わずもがな。

撃ち合いに負けじと腕を伸ばすが、ゴーレムの半身はいとも簡単に吹き飛んだ。



「アハハハハハハーーーちょっろーーーーー☆」



「そんな………あっ、魔力が……」



身体がぶれ始めポンっとこぎみのいい音ともに、桜子と楓子が分離。




「「ハァハァ、これ以上は、もう……」」



双生一極化をしてから、過度の魔力の放出がたたって2人の魔力は底をつきかけていた。



「社長はまだなの????」



「あっれーーーー?もう終わり????まっ思ったより楽しめたよん!じゃあ永遠におやすみなさーーーーい☆」



まずい、あの拳に当たったら死ぬ!!!!!

走馬灯が頭の中をよぎる。

あーあまだ生きていたかったなー。

そんなことを考えているうちに



「バイバイ☆」





振り抜かれた拳と共に音がする。




シュンッッ!!!





「ッッ危機一髪じゃねーかよ嬢ちゃん達怪我は?」



両脇に桜子と楓子を抱えたままヨズクが聞く。

ふるふると首を横に振りながら桜子から



「えっ????よっちゃん????」



そう、背格好、匂い、すべてがヨズクのものなのだが何か不思議な違和感を感じていた。




「あー俺か?俺はよっちゃんであって、よっちゃんじゃないってのが正しい答えだな。綺麗なお嬢さん方、少し待っててくれな」



そう言うとヨズクは振り返り、アンドロマリウスに向き直る。



「きっきみ!!!!覚醒したの????ていうかアムちゃんは????」



「あーあのネクラ野郎なら胸から手はやして死んだぞ」



「ッッやばいーーーー!!!状況が悪すぎるから一旦ひかせてもらうよーーーん!!!!」



「おっさんの頼みなんだ、逃すわけねーだろ」

「雷状網!!!」



そうヨズクが言うと、手から蜘蛛の巣のような雷が放たれる。



「8体もいんのかよ、めんどくせぇな」



と一言言う間に7、体をアムドゥキアスを倒した方法で全員突き刺す。



「てめぇーでラストだ!!!!全部持ってけくそったれ!!!」

「雷鋒針 雀蜂!!!!!」



「ヒィーーサタン様ーーーー僕ちゃん頑張ったからねーーーー」



長細い針がアンドロマリウスにささり身体がビリビリ痺れたあと、轟音。

耳をつんざくような雷が上から落ちてきて、跡形もなく消えた。



「ふぅーおつかれ、じゃあ俺は寝るわ!嬢ちゃんたちあんまり倅をせめるなよ!」



と言いながらヨズクは倒れていったのである。



そこからは早かった。

比較的軽傷で済んでいた私たちは事が終わると同時くらい到着した織天使達に保護されて、形があるアムドゥキアスは回収。

病院へ運ばれた。


ヨズクと大河は激しい疲労により、意識がまだ戻らない。

命に別状はないらしい。

私と楓子は傷らしい傷もなく比較的早く解放された。


社長は敵のナイフに刺されて死んでいた。

涙は不思議と出なかった、それよりも感謝の気持ちと、これからのお葬式の準備や、会社の事。

やる事はたくさんあって、泣いている暇などない。


だから今は、ヨズクと大河が早く目を覚まして欲しいそればかりを考えている。


そんなこんなで、今回の依頼は一応成功という形で終わった。





「社長……もう一度会いたいよぉ…」

ポロポロ、前言撤回、堪えてないと涙しか出ないな。

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究極召喚 〜チートになりたいそんな僕の召喚物語り〜 ヨル @yoruyoru3535

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