橘香奈 空白の彼女 電子書籍用SSのあとがき

  いつもの方はこんにちは、はじめての方ははじめまして。

 なぜ、ここでこの挨拶かと言うと、はじめましての方はブラウザバック推奨だからです。

 このあとがきだけは販促ではありません。

 既に本編を読んでいただいた方に対する心ばかりのお礼となります。

 つまり、ネタバレ全開でいきます。

 そして、本編を読まれた方へのお礼とは言いましたが、割と深めの所まで踏み込むので、場合によっては読んだことを後悔するかもしれません。

 いいですか、警告はしましたよ?

 それでも構わないという方だけどうぞ。

 


















 橘香奈。

 二十代。

 女子。

 月摘重護の部下。


 はい。「空白」の彼女です。

 本編で言及されたのは二カ所のみ。フルネームは未記載。

 本人の描写はなく、遺体の軽い描写があるのみ。

 本作が「異能」であるために最も必要だった死体、それが彼女です。

 本作の登場人物はみな役割を持って生まれました。

 その語を借りるのなら、彼女は役割を持って死まれました。

 彼女を本編中で「生きた」状態で書くかどうかは最後の最後まで悩んだ部分です。

 重護の回想という形でもなんでも、書こうと思えば書けましたが、結果として書かなくてよかったと思います。

 彼女は空白であることに意味があるキャラクターでしたから。

 本編最後のページ。

 最終章は一回書き上げた後も、何度も調整を行った章でした。

「異能」という物語、特に大会というメインギミックは一つ前、十二章主人公までほぼ回収済みで、残るのは話を終わらせることだけでした。

 そう、終わらせること。

 きっと、終わらせるだけなら最後のページはなくてもよかったと思います。

 ない方が綺麗に終わったでしょうから。

 しかし本作は「異能」なんですよ。

 だから最後のページはあれになったんです。


 ここから先、もう少し深いネタバレが始まります。

 よろしい方だけどうぞ。


 電子書籍用SS「空白の彼女」。

 なぜ、この話を書こうと思ったのか。

 いえ、書かねばならなかったのか。

 それは必要だったからです。

 橘の生前の姿が?

 違います。

 彼女の想いが?

 違います。

 重護との関係性が?

 違います。

 彼女が紗那と出会っていることを書く必要がありました。

「異能」本編には物語の進行を大きく阻害しない小さな齟齬をいくつか仕込んでいます。

(回収されなければ齟齬は伏線にはなりません)

 その中で、最も大きく目立つのが紗那という存在でしょう。

 重護の幼馴染みで異能者、であるにも関わらず大会に参加していない唯一の存在。

 怪しすぎて逆に怪しくない彼女。

 重護の相棒。

 そんな紗那が物語り上しなければならなかった大きな仕事は以下の二つ。

・タチバナが橘ではないことを重護に知らせる。

・大迫がまだ存在していることを知海に知らせる。

 ここで橘を事前に知っている必要がでてきますね。

作中で回収してもよかったのですが、前述の通り「生きた」橘を書かないという決定を受けてSSでの回収となりました。最悪なくても物語的な引っ掛かりにはならないとの判断です。

 

 それだけ? 

 では、逆に聞きますが他にどんな理由を想像されましたか?

 重ねて言いますが、回収されなければ齟齬はただの齟齬です。


 一つだけ言えるとしたら

 この「異能」という物語で最初に死んだ人間は橘香奈であった。

 ということでしょうか。

 だから、最終章で橘香奈の死を描写して物語を締める必要がありました。

 これ以上は仮に続刊がでるようなことがあったらその他の齟齬と合わせて回収したいと思います。できるといいですね。

 

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