美久月奏 彼女の「視点」、誰も視なかった世界(とらのあな様SS)のあとがき

 美久月奏。

 高校二年生。

 女子。

 物語開始時点での登場人物との友好関係はなし。

 盲目の少女。フルートを吹くのが好き。


 彼女、年齢とか色々と変わってはいますが、投稿時から存在し続ける数少ないキャラクターの一人です。

 他に投稿時からいるのは大迫祐樹と赤根凛空、和抄造のみとなります。

 盲目というのも変わっていない部分ですね。

 なぜ、盲目なのか?

 投稿時の原稿では彼女の主観章がありまして、今のものよりもかなり深く彼女の半生について掘ることになりました。これは他のキャラクターも同様だったのですが、その中での特徴付けとして盲目という設定が生まれたんです。

 いえ、盲目という設定から彼女が生まれたと言う方が正しいですね。

 そんな美久月ですが、作中の役割は非常に大きく変わっています。

 本作を読んだ方でしたら少し意外かもしれませんが「彼」とは最初なんの関わりを持つことのないキャラクターでした。そもそも、投稿時のものがキャラ同士の関係性が希薄だったということもありますが、その中でも彼女は特に「孤独」なキャラクターでしたね。

 あとですね、本当にどうでもいいことですが!

 彼女が演奏する楽器がフルートなのは、完全に私の趣味です!!

 はい、知ったこっちゃないですね。

 特典SSは作中ではなかった彼女の主観視点。その名の通り、彼女の「視点」。

 あっ、これは微ネタバレになりますね。

 早速少し脱線します。

 盲目という状態を書く為に色々と調べたりしたのですが、その中で興味深かったのは盲目の状態から目が見えるようになった時の経験談でした。

 

 視覚から与えられる情報を処理する方法に脳が慣れていないので、その情報を視覚として受け取ることができない。

 色を色として認識することも、形を形として認識することもできない。背景とその他を区別することもできない。

 だから、訓練をしなければ仮に視力が回復したとしても「視る」ことはできない。

 

 これがとても衝撃的でして、それをどこかで書きたいと思ったのです。

 その結果があの描写になります。自分では経験したことのないものを書くのが小説家という仕事なのでしょうが、あれに関しては上手く書けたとは思えません。

 反省する場でもありませんでしたね。

 閑話休題。

 私、このSSが一番気に入っています(他のが嫌いとかそういうわけではないですよ)。

 いえ、後悔の含まれる想いに萌えるタイプの人間でして(趣味はよくないと思います)。

 そもそも「彼」と美久月の関係が一番好きなんですよ。きっと、「異能」でのできごとがなければ「彼」は美久月との関係で大きく自分を変えることになったでしょう。

 美久月の方もきっと変わったのでしょうね。

 自分であんなことにしておきながら、そんな二人の未来を書いてみたいとか思ってしまったり。

 その罪悪感の結晶が「誰も視なかった世界」になります。

 いやぁ、それなら本編でそうしてやれよって話ですね。

 でも、残念ながらそうはなりません。だって「異能」の世界ですから。

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