第15話 詐欺師と少女と、小説と。(2016お題:繋ぐ・橋・夜空)

やあ、勇者くん。

よくここまでたどり着いたね。

けど、ぼくのことはあまり聞かないでほしい。

ただ今、ぼくは空を飛んでいる、ということだけを知るにとどめておいてほしい。

どこへ行くのか、といつもみんなは心配しているようだけれど、心配だからきみもここまで来たのだろうけど、それはさほど重要なことじゃない。


ほらみてごらん。


これできみの辿ったそれが、ぼくの足が、どうなっているか分かっただろう。

そう、ぼくの足こそみんなが踏みしめ歩く橋なのさ。

歩くことを捨てて代わりにこの橋を手に入れぼくは、歩くきみらのために伸ばしてつないで飛び続けている。だからやっぱり行き先よりも、飛び続けることの方がぼくにとっては大切なんだ。

行き先なんて、どうでもいい。

だってぼくが落ちたりしたら、きみたちだってただはすまないだろ?

想像力の尽きたモノカキなんて、滑稽でしかないだろう?

わかったなら、ぼくのことはあまり聞かないでほしい。

空を飛んでいる、ということだけが知れたなら、それで十分だってことだ。


さあ、つなぐ道行、物語を追うように、ぼくを信じてただ渡りたまえ。

そこに橋はかかり続け、きみらもずっと遠くへゆける。

迫る闇も切り立つ崖も、目にしたところで覚えた疑念は、ぼくが必ず拭い去る。

きみから必ず拭い去る。

わかったなら、ぼくのことはもう忘れたらいい。


よく来たね、勇者くん。

さあ、ペンを取りたまえ。

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