第15話サイドビュー
クソッ。魔法はお店で購入ですか。斬新なシステムですね。ファイア? サンダー? ブリザド? 安直な名前つけやがって。俺が限られたカタカナで呪文の名前ひねり出すのにどれだけ苦労したと思ってるんだ。
どうせファイアだろうとサンダーだろうとブリザドだろうと、戦闘では魔法としてステータスのまりょくだけを参照したダメージになるんだろ。そうに決まってる。
「ホリーさん。そろそろ戦闘のほうを……」
ああ、そうか。戦闘か。俺の『ドラゴン娘クエスト』はトリヤマ先生がキャラクターデザインしたモンスター娘がプレイヤー目線で襲ってくるんだぞ。それ以上に魅力あるゲームの戦闘なんて作れるものか……
「チュン。なんだこの戦闘は。えっ? えっ? 味方パーティーと敵モンスター娘たちが戦っているところを横から見ているのか。あっ! デフォルメされたドット絵の味方パーティーのキャラがモンスター娘に攻撃された。AVの汚い男優のケツは勘弁だけど、こういうのならなんかいいかも……」
「ホリーさん。その表情からすると……やっぱりモンスター娘の正面絵だけの戦闘よりも、この『ファイナルニャンタジー』の味方パーティーも敵モンスター娘も映した戦闘のほうがゲームとしてすぐれているんだ。もうだめだあ」
「違う、違うぞ、チュン」
「何が違うんですか、ホリーさん?」
違うんだ。こんなのRPGじゃないんだ。そういうことにしないと俺がショックでどうにかなりそうなんだ。
「いいか、チュン。RPGと言うのはなんの略だ?」
「それは……ロールプレイングゲームでしょ、ホリーさん」
「そうだ。ロール(役割)をプレイする(演じる)ゲームなんだ。テーブルトークRPGでは、プレイヤーがゲームマスターや冒険者を演じる。俺の『ドラゴン娘クエスト』ではプレイヤー自信がが勇者になっている気分になれるようにゲームをデザインした」
「そうでしたね。主人公である勇者は『はい』か『いいえ』しかしゃべらないようにしてましたもんね」
「それは『ドラゴン娘クエスト2』でも同じだ。プレイヤーの投影である戦士キャラは『はい』か『いいえ』しかしゃべらせずに、仲間の器用貧乏や魔法使い娘にしゃべらせて戦士キャラをプレイヤー自身だと思わせたんだ。それにひきかえ、この『ファイナルニャンタジー』はどうだ? チュン、お前はプレイして何か変に思わなかったか?」
「そう言われましても……味方パーティーの四人ともキャラが立ってて面白いなあとしか」
「それだよ、チュン。たしかにこのゲームの自キャラの四人は魅力的だ。しかし、だからこそこの『ファイナルニャンタジー』はRPGじゃないんだ。このゲームのどこにロールをプレイしているプレイヤーの投影がいるんだ? こんなものはRPGじゃない。こんなゲームをどれだけプレイしたからって、感動や気持ちいいオナニーができるもんか」
それを証明するためにプレイを続けてやるぞ。最後までプレイして、そのうえでボロクソにけなしてやるのだ……あれれ
「チュン。同じ敵にブリザドとサンダーじゃあダメージ量が違うぞ」
「そうなんですよ、ホリーさん。どうもファイアは火属性、ブリザドは冷気属性、サンダーは雷属性で、モンスター娘にそれぞれ各属性への耐性が決められているようで……」
火、冷気、雷属性だと! 属性ってのは、『ダンジョンアンドドラゴン娘』の
善 中立 悪
秩序
中立
混沌
みたいな二つの要素で決まるものじゃないのか? 悪にして秩序とか、善にして混沌みたいに……いや、『ダンジョンアンドドラゴン娘』でも初期は善、中立、悪の三要素だけだった気がする。うろ覚えだけど。
となると、この『ファイナルニャンタジー』みたいに火、冷気、雷みたいなナチュラルなエレメント要素にしたほうが日本人には受けるのか? なんてことだ。キャラデザを日本人向けにしたり、職業選択やパーティー編成をどう日本人に楽しませるかばかり考えて、属性を日本人にわかりやすくすることまで気が回らなかった。
ううう、火に強いけど冷気に弱いサラマンダー娘に氷を乗っけて『あっ! だめです。そんなものをそんなところに乗っけては』なんてプレイをプレイヤーに想像させる楽しみをどうして俺は考えつかなかったんだ。
「ホリーさん。味方キャラの装備品にも、これを装備すれば火に強くなったり冷気に強くなったりするってものがあるみたいですよ。ファイアシールドとかアイスアーマーとか」
「なに! ということは、『生身では君みたいなモンスター娘を抱きしめられないから、洞窟の奥深くからこのファイアシールドを見つけてきたんだよ。これで人間の僕でもサラマンダー娘の君を抱きしめられるよ』なんて妄想ができるじゃないか」
くそう、スクエーアのやつ。俺のあとをついていくどころかあっさり追い抜いていきやがった。俺のフォロワーのくせに。俺が開拓した日本のRPG業界なのに。
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