第14話ファイナルニャンタジー発売
タイトルは……『ファイナルニャンタジー』ねえ。これでファイナルになるんじゃないの?
「ホリーさん。とりあえずその『ファイナルニャンタジー』をプレイしてください!」
はいはいわかりましたよ、チュン。俺の『ドラゴン娘クエスト2』にぶつけてくるなんてどれだけ身の程知らずなことをしているか笑い飛ばしてやるとしますか。カセット挿入! スイッチオン!……『ジョブを選択してください』? 『戦士 シーフ モンク 赤魔術師 白魔術師 黒魔術師』!!!???
「おい、チュン。これって……」
「そうですよ。ホリーさん。ウルティマやウィーザードリーで最初にやるような職業選択ですよ。僕たちがやりたいと思っていたけれど、日本のゲーマーはそんなものにはなじみがないから、『ドラゴン娘クエスト』でHPやMPなんかのRPGの基本概念を一人旅で教えて、『ドラゴン娘クエスト2』でパーティープレイを楽しませて、さあこれから僕たちが本当に作りたかったゲームを世に送り出すぞって時に、この『スクエーア』って会社にトンビに油揚げをさらわれちゃったんですよ」
チュンの言う通りだ。俺とチュンがエニークスでまず『ポートピアアドベンチャー』で日本のゲームにシナリオを取り入れた。そして俺とチュンにトリヤマ先生にスギヤマ先生が加わってエニークスで『ドラゴン娘クエスト』、『ドラゴン娘クエスト2』で日本のゲーマーにコンピューターRPGの概念を理解させた。そしてこれからって時に、なに人の手柄を横取りしてくれるんだ。この『スクエーア』は。
「それだけじゃないんですよ、ホリーさん。とりあえず、パーティーメンバー四人を決めちゃいますね。『戦士 モンク 白魔術師 黒魔術師』と……」
クソッ。人が苦労して日本のゲーマーにパーティープレイを理解させたって言うのに。人が苦労して切り開いた道を後からハナ歌を唄いながらのこのこ追いかけてきやがって。
「さあ、ホリーさん。プレイしてください」
スタート地点がフィールドじゃないか。これじゃあモンスター娘とナニをしたいプレイヤーはフィールドをうろついてすぐにゲームオーバーだぞ。まったく。人の作品をパクるならせめて元ネタの研究ぐらいしろ……
「チュン。どういうことだ。なんでファミコンでこんなグラフィックができるんだ」
なんだこのグラフィック。自キャラのすぐ近くにファミコンで作ってるとは思えないグラフィックの街があるじゃないか。こんな街があったらこのゲームのプレイヤーは、歓楽街に誘い込まれる俺みたいにこの街に入るしか行動パターンがなくなっちゃうじゃないか。
「たぶんですけれど、フィールド画面のグラフィック描写の全てにファミコンの全性能をつぎ込んでるんじゃないかと。この『ファイナルニャンタジー』だと、フィールドではメッセージウインドウが出ないんですよ。そのぶんフィールドのグラフィックが良くなるんだと思います」
なに。フィールドでメッセージウインドウが出ないだと。それなら、それならどうやって魔法やアイテムをフィールドで使うと言うんだ。あああ。画面がフィールド画面からステータス画面に切り替わった。
なんてことだ。俺の『ドラゴン娘クエスト』だとフィールドでメニューを出すときは小さいウインドウを表示するシステムにしてた。
はなす じゅもん
つよさ どうぐ
かいだん しらべる
とびら とる
なんてウインドウを右上に出していたのだ。そんなウインドウシステムにしなくて、ステータス画面に切り替えるシステムにすればフィールドのグラフィックはこんなにもきれいになるのか。後発組が俺のアイデアを洗練させていきやがる。
俺だって『はなす』の後に東西南北を指定させるのは面倒だなって思ったさ。でも、主人公のグラフィックが正面向いてる姿しか作れなかったからしょうがないじゃないか。『かいだん』なんてコマンドを実行しなくても、階段のマスに入ったら昇り降りするシステムの方がいい。『とびら』なんてコマンドはいらない。『しらべる』と『とる』はいっしょにしたほうがいい。そんなの作ってるうちは気づかないんだよ。
「ホリーさん。街に入ってくださいよ」
街か……そうだな。街ならばNPCがいる。そいつらと話すならメッセージウインドウを出す必要がある。フィールドと違って街中のグラフィックは俺の『ドラゴン娘クエスト』とそう大差はないなずだ……ほうら、グラフィックがとたんにしょぼくなったぞ。さてさて、このしょぼくなったグラフィックと引き換えに、どんな会話をさせてくれるのかな……
「おいチュン。Aボタンを押しただけで会話できるぞ。どうなっているんだ」
「プレーヤーが操作するキャラが話せるNPCを向いていたら、Aボタンで話せるようになってるんですよ。そんな状況であしもと調べたりしませんものね。うまいやりかたです」
なに敵のゲームをほめてるんだよ。それを思いつかなかった自分をののしれよ。
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