第7話 キャラクターデザイン
「あー、ホリー君だよね。ちょっといいかな」
げ! 編集のマシリト! 鬼の編集として有名も有名。『ボツ!』の掛け声とともに破り捨てた原稿は数知れず。編集部に俺の『ドラゴン娘クエスト』発売予定をあおりにあおったゲーム記事を届けに来たら、なんでマシリトが俺に声をかけるんだ?
「ホリー君に紹介したい人間がいる。ウチで連載してるトリヤマ君だ。知ってるよね」
知ってるも何も。トリヤマ先生と言えば、『アラレちゃん』で一発当てただけでなく、次回作の『ドラ◯ンボール』でさらにどでかい一発を当てた大先生。『ポートピアアドベンチャー』でちょろっとしょぼい一発を当てた俺とはレベルが違うお人。
トリヤマ先生の絵柄こそ俺好みの絵柄。今まで何回トリヤマ先生のキャラクターをオカズにしたことか。
「ほほう。これがホリー君の今週の記事か。なになに、『あのポートピアアドベンチャーの製作陣が次回作を発表?』……なるほど。ホリー君が新作を作るのか。それはちょうどいい。では、私はいそがしいからこのへんで。あとは二人でよろしくやってくれ」
え、マシリトさん。『よろしくやってくれ』と言われても……アニメも絶賛放映中のトリヤマ先生と二人きりにされても、何を話せばいいのか。
「ホリーさん! 新作を作るんですか? どんなゲームなんですか?」
わ。トリヤマ先生が俺のゲームに食いついてきた。週刊マンガの連載っていそがしくってろくに睡眠もとれないって聞いていたけれど、ゲームをする時間なんてあるのか。
「そ、それは剣と魔法のファンタジー世界でモンスター娘をやっつけていやらしいことをやっちゃうゲームなんですけれども……」
何を正直に言っているんだ、俺。トリヤマ先生と言えば、そりゃあ俺みたいなスケベ人間のためにちょこちょこサービスシーンを自分の漫画に入れてくれるけれど……最近はすっかり武道会や大魔王なんてバトル展開じゃないか。
きっと、トリヤマ先生も本当はあんなバトル展開を最初からやりたかったんだ。でも、読者をひき付けるためにしかたなくサービスシーンを入れてたんだ。そんなトリヤマ先生に俺はなんてことを言ってしまったんだ。
「それはいろいろ捗りそうなゲームですね。そのゲームのモンスター娘のキャラクターデザインをぜひ自分にさせてくださいよ」
え、あのトリヤマ先生が俺のゲームのキャラクターデザインを? そりゃあそんなことになったらそれだけで俺の『ドラゴン娘クエスト』はバカ売れするだろうけれど……でもなんで?
「いやあ、最近の自分のマンガはバトル展開ばっかりでね。ほら、さっきのマシリトさんが『バトル以外は全部ボツにするからな』なんて好きに描かせてくれなくてね。でも、『マンガの連載との掛け持ちでキャラクターデザインをするのなら好きなものを描いていい。なんなら今売り出し中のゲームプロデューサーを紹介しよう』とも言うんですよ」
その売り出し中のゲームプロデューサーって俺のことか?
「そういうことですから。ホリーさん。その新作のキャラクターデザインを自分にさせてください」
「で、ですがトリヤマ先生は週刊マンガの連載でおいそがしいのではありませんか? 睡眠時間とか平気なんですか?」
「睡眠なんて。そんなもの自分好みのモンスター娘のキャラクターデザインができるのならいくらでも削りますよ。それで、ホリーさん。この自分が描きたいエッチなモンスター娘のキャラクターデザインをさせていただけるんですか? いただけないんですか?」
まさか。トリヤマ先生にとって、最近のバトル展開が描きたいものじゃなくてムフフなエロ漫画みたいな展開が描きたいものだったのか。それであんなミリオンセラーを連発しているのか?
「それは、トリヤマ先生が俺のゲームのキャラクターデザインをしていただけると言うのは願っても無い話ですが……」
「なら決まりですね。さっそくいくつか描いちゃいましょう。あ、ゲームのキャラクターデザインってことは、最終的に『ドット絵』ってやつになるんでしょう? だったら、そのドット絵でデザインした方がいいですかねえ」
「いやそんな。トリヤマ先生にはそこまでしていただかなくて結構です。トリヤマ先生は好きにモンスター娘をデザインしてくれれば」
「じゃあ、まずどんなモンスター娘をデザインしましょう」
マジか。あのトリヤマ先生が俺のリクエストしたモンスター娘をデザインしてくれるのか。考えただけであそこがボッキしてきた。
「じゃあ、とりあえずスライム娘をお願いします」
「スライム娘ですね。わかりました」
わ、言うが早いがもう描き始めた。いままで数え切れないくらいにコミックスを見ながら自家発電にいそしんだあのトリヤマ先生が、今まさに俺の目の前でモンスター娘の作画をしている。
これが人気ナンバーワンのマンガ家の作画かあ。
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