第13話 単なる日常の……3
今日はテストであった。俺はブツブツ言いながら帰路に着く。千夏姫は相変わらず、お腹が空いたらしい。考え方を前向きにするためにも甘い物でも食べるか。
「たい焼きを食べに行くか?」
「おう!」
千夏姫は俺の問いに元気に返事を返すのであった。しかし、手持ちが寂しい。
やけ食いは出来ないなと肩を落とす。千夏姫と合わせて二つ頼むのであった。
まてよ、一つのたい焼きを千夏姫と分け合って食べたら好感度が上がったりし
て……。
そもそも、好感度って何だろう?変なパラメータを導入するのは良くない。アホな事を考えながらたい焼きを食べると少し癒された。そう、テストのできが悪かったのだ。千夏姫は『はむはむ』言いながらたい焼きを食べる。可愛い所があるとはこの事だろう。
「お茶が飲みたいぞな」
「あぁ」
俺は何も考えずに鞄からペットボトルのお茶を出す。千夏姫はごくごくと飲むと半分くらいで返してきた。俺に間接キスをしろとな。もちろん、千夏姫は間接キスなる言葉は知らない。
「どうした?赤い顔をして?」
「な、何でもない」
俺はペットボトルのお茶を鞄にしまう。こんな事でときめくなんて俺もお子様だ。二人で自転車をこぎ帰るあいだ、俺の心は切なさでいっぱいであった。
これが今の日常なのか……。美穂が鈍感姫とか言っていたな。変わる事の無い関係であった。俺の勇気が足りないのか?などと、本気で思うのであった。アパートに着くと姉貴が酔っていた。コンビニの仕事が休みか。ま、これも俺の日常だ。と、割り切るのであった。
アパートでまったりとしていると。千夏姫がポッキーを咥えて話しかけてくる。
「ホワイトデーの三倍返しは本当か?」
どこのバブル世代だよと呆れる。
「あ、ぁ、都市伝説だ」
俺は普通に否定するのであった。
「バレンタインデーはホテルでディナーか?」
だから、千夏姫がいつからバブル世代になったのだ?
「それも、都市伝説だ」
さて、バブル世代の千夏姫は放置してカップラーメンを食べるか。俺がカップラーメンの用意をしていると……。
「我は塩味が食べたいぞな」
うーん、しょうゆしかストックが無いな。
「コンビニで買ってきていいぞ」
千夏姫に小銭を渡してみる。
「我の願いはバブル世代なのか?」
どうやら、俺はバブル世代、バブル世代とブツブツ言っていたらしい。仕方ない、一緒にコンビニに行くか。
「一緒に付いてきたら、バブル世代ではないぞ」
「バブル世代は悪なのか?」
また、誤解を生む表現をして……。
「悪ではないが痛い人の事をバブル世代と呼ぶことがあるぞ」
この表現で合っているか自分に問うと疑問に感じ小首を傾げる。ま、自分でバブル世代と言うのは今の時代には痛いといえるな。夕方にカップラーメンを買いに二人で歩く。これも幸せの一つだ。バブル世代には分からないかもしれない。コンビニに着くと。千夏姫がハー〇ンダッツを指さして。
「バブル世代なら欲しかるのか?」
実に微妙な質問である。
「コンビニに置いてあるから、些細な贅沢だ」
俺は納得してハー〇ンダッツをかごに入れる。さて、今日はデザート付きだ。二人でコンビニから帰る。うむ、これも幸せの形である。
休日の昼下がりである。千夏姫はジャージ姿でテレビを見ている。他にする事はないのかと疑問に思う。
「ちわー、お届け物です」
うん?宅配便が届いた。ダンボールを開けると、みかん三十キロである。ラジオの懸賞が当たったらしい。しかし、どないせいというのだ。
「おぉ、みかんの山だ」
千夏姫は浮かれているが三十キロは多い。ここは、千夏姫のセクシーボイスで売りに歩くか。俺は頬をスリスリして考え込む。
「ぬぬぬ、よこしまな事を考えているな」
正解である。千夏姫に見抜かれてしまい俺はみかんを食べる事にした。
「美味しいな」
売るにはもったいないか……。美穂にくれてやる事にした。普通にメッセージを送ると。一時間もしないうちにやって来るのであった。そして、いつの間にか座っていて、みかんを食べている。
「美味しいな……このみかん、半分くれ」
ま、よかろう。俺が袋にみかんを詰めていると。
「腐ったみかんを一緒に入れておくと美味くなるのは本当か?」
あー。千夏姫が上目づかいで問うてくる。何処から突っ込んだ方がいいかと難儀すな。
「腐ったみかんは普通に捨てろ」
今時、自分の事を腐ったみかんと言うヤツもおらんだろう。
「さて、美穂、帰っていいぞ」
しかし、美穂は普通少女るるるのコスプレを始めようとしている。更に、スマホから魔法少女ベギラゴンのテーマを流してまったりし始める。予想できた展開である。
「こやつも暇そうだのう」
千夏姫は呆れた様子で言う。しかし、その姿はジャージ姿でテレビの前で横になっているのである。要するに千夏姫も暇人そのものである。そんな千夏姫は普通少女るるるの水着バージョンを美穂にリクエストしているようだ。
「水着か……」
体系に自信のない美穂はポリポリと頭をかく。ま、次に来る時には完成しているだろうと思うのであった。
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