第12話 ねずみと言ったら
それは午前中で授業が終わった日の事である。千夏姫が図書館に行きたいと騒ぎ、仕方なく連れて行ったのである。
「おーこのエーゲ海と言うのは心を躍らせるな」
海外旅行のコーナーではしゃぐ千夏姫であった。ハワイでも関係ない俺にとっては未開の地である。そう、この図書館と言うモノは便利であるが余計な事も教えてくれる。ネズミの王国のガイドブックが大量にあり。また、お弁当の作り方の本を見て千夏姫が作ってと言いだすのであった。
禁術の本は最近では、この図書館の全てを見てしまったので街の大きな図書館で探している。この図書館に毎週のように通っていた時期もあったなと思い出す。
「このエーゲ海に行くにはどうすればいいのだ?」
ネズミの王国ならまだしもエーゲ海は遠いな……。
「十年後に金持ちになったらだ」
俺の言葉にしょげてしまうのであった。
「夏になったら九十九里に連れって行ってあげるから元気だせ」
さて、いつまでも居ても仕方がない、帰るか。千夏姫は俺が帰りの支度を始めると半年前のティーン向け雑誌を持ってくる。
「借りたい……」
ま、よかろう。千夏姫はアパートに帰ると早速、ティーン向け雑誌を広げるのであった。俺も昔は腕時計にハマった時期は雑誌の広告を見て心が躍ったものだ。可愛いところがあるなと俺が感心していると。
「梅下通りに行ってみたい」
注文の多い姫だ。俺が適当にあしらうとすねてしまった。夕ご飯のカップラーメンを作る頃には機嫌が直っていた。二人でお湯を入れて食べ始める。
「十年後にはエーゲ海に行くぞ」
ハードルの高い注文をしてデザートのアイスクリームを食べるのであった。
最近、千夏姫はネット動画にハマっている。
「アザラシを飼いたいぞな」
千夏姫はは上目づかいで頼みこんでくる。どんな動画を見ているのだ?と、深く疑問に思う。
「ハムスターならOKだ」
「それは、美味いのか?」
さて、お茶も飲んだし、勉強でもするか。俺が机に向かうと、千夏姫は頬を膨らませる。そう、ハムスターが食べ物でない事を説明するのが非常に面倒くさい。
「ハムスターなる物が美味しいから隠しているのだろう」
俺は仕方なく「ネズミの事だ」と言う。
「ネズミを飼うとな???」
千夏姫はしょんぼりしてスマホを見直す。
「アザラシは美味いらしいのに……」
うむ、聞こえなかった事にしよう。俺は面倒な統計学の勉強をしていると。
魔法少女ベギラゴンのテーマ曲が流れだす。あれ?つまらなかったのではないか?
俺はヒョイとスマホを見ると、チャンネル登録されている。そう言えば昨日、美穂が天気予報を見たいと言って貸してやったな。
あの女狐め……。
しかし、普通少女るるるは華がないな。魔法少女ベギラゴンに変身すると貧乳が目立つしな。美穂はこの三流アニメの何処がいいのか?チャンネル登録を解除して千夏姫にスマホを返すのであった。
うん?
魔法少女ベギラゴンのテーマのピアノ演奏が流れてくる。千夏姫に聞くと魔法少女ベギラゴンの曲は気に入ったらしい。あーアニメにハマる前兆だな。三流でも面白いモノは面白いのか……。
電卓を使う統計学の勉強には非常に邪魔である。仕方ない、魔法少女ベギラゴンを一話から見直そう。俺は千夏姫と一緒に魔法少女ベギラゴンを見るのであった。
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