第9話 古書を片手にコスプレ

 俺のアパートに美穂が入り浸っているのであった。カレンちゃんのポスターなどのグッツが増えていき完全なオタ部屋である。美穂の話によると妹と同じ部屋なのでオタグッツを置くには限界があるそうな。やはり、理由があって演劇部に置いていたらしい。その演劇部に置いてあった物をそのまま俺のアパートに置くの事になり難儀している。姉貴は止めるかと思いきや、カラ笑いをして容認している。


「美穂、本当に禁術のことを手伝ってくれるのだな?」


 そう、俺はこの現代で千夏姫と暮らすと決意したのであった。


「アイヤー、わたし頭が悪いから難しい本はダメね」


 駄々をこねてもダメだ。ここにあるカレンちゃんのオタグッツが人質だ。あれ?物だから担保か。


「カレンちゃんのグッツが欲しいなら手伝うのだ」

「ぬぬぬ……仕方があるまい……」


 勝った……。しかし、美穂が戦力になるのであろうか?俺が首を傾げていると。


「烈ちゃん、色々教えてくれる?」

「はい、美穂殿」


 そうか!烈姫がいた。絶対戦力になる。


「なら、先ず、イワウちゃんの格好をして」

「はい、美穂殿」


 烈姫が風呂場で着かえようとする。俺はどうしたらいい?止めるか?なんかスキル上がりそうだし、イワウちゃんの格好させてみるか。烈姫がイワウちゃんの姿になると、積んである本を読み始める。しかし、シュールだな……スク水巫女・イワウちゃんの姿で古い本を読む。烈姫も今川義元の隠し子である。

戦国時代で負けた者である。一度はコスプレを拒んだが、この現代でイワウちゃんの格好で遊んでいる方がいいらしい。肝心の千夏姫は姉貴が買ってきた、たい焼きを食べている。


「はむはむ、美味しいである」


 ま、問題無かろう。美穂も渋々に本を読み始める。



 成績を決めるテストが近づいてきている。俺はいったん古書を読むのを止める。普通の学校の勉強を始めるのであった。 千夏姫は諦めモードで早くから寝ている。

ま、普通の高校なので出席していればいいのであった。 そう、今の時代は就職にも評価が必要だ。


 しかし、普通の勉強も楽しいと感じる。ある程度の成果が出ているので夜間の大学に行くか本気で考える。 いびきをかいて寝ている、千夏姫は働くのであろうか?

話によるとスーパーで働きたいらしい。 千夏姫はサービス業が向いているかもしれなので問題無かろう。 俺はお金のかかる理系への道は諦めたので、経済学でも学ぼうかと思っている。 本当は数学者になりたいが仕方がない。 また、文系で一番数学を使うのが経済学だかである。 少し休もうとコーヒーを入れる。俺はコーヒーを飲みながら時間軸について考えていた。 もう少しで姉貴が帰ってくる。 孤独な時に俺の面倒みてくれたのが姉貴だ。 俺は姉貴の為に缶ビールを冷やしておく。 時間軸のズレは確実に進んでいる。 姉貴が姉貴でないズレを感じるのであった。それでも、働いている姉貴を喜ばせる為に少しでもレベルの高い夜間の大学を目指す事にした。 おっと、千夏姫の面倒もみないとな。


「たい焼きとメロンパンを選べとな」


 また、寝言だ。 今日は姉貴の帰りが遅いなと感じる。 先に寝るか。 俺は狭い部屋で千夏姫の寝言を聞きながら寝る事にした。ふーう。今日は眠れないな。少し千夏姫を観察する事にした。うん?烈姫からメッセージが届く。


『今宵は眠れなくてな』


 俺は返事を返すか迷ったが、季節の変わり目だなどと言い訳をして烈姫とメッセージ交換を始める。今日は姉貴の帰りが遅い……そんな事を思いながら夜が更けていった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る