第6話 単なる日常の

 俺は風呂上りにカップラーメンを作っていた。 お湯を入れてと……。 千夏姫が隣に座りなにか言いたげにしている。


 ???


 一瞬の沈黙のあとで……


「膝枕をして欲しいのじゃ」


 は……?


「我は最近、眠れないので、膝枕なら眠れそうなのじゃ」


 どんだけ、無防備なんだ。 千夏姫は愛だの恋なの言葉にしないので、何も知らないと思うのであった。 絶対、箱入り娘である。イヤ、金庫と言ってもいい。 仕方なく、座布団に座ると。 千夏姫が近づいてくる。


 俺は胸がドキドキして気持ちに整理がつかず。 千夏姫を引き離す。


「膝枕は大好きな人にしてもらえ」

「ダメなのか?」


 聞きたい……このチャンスに俺のことをどう思っているかだ。


「お、お、俺のことを……」


 ガッタン。


「帰ったぞ」


 姉貴だ、タイミングが悪すぎる。


「姉貴殿、膝枕をしてくれぬか?」


 誰でもいいのかよ。 姉貴は雑に服を抜いて俺達の前に座る。


「うん?どうした、カップラーメンを伸び伸びにして」

「大好きな、和修に膝枕をしてもらうところじゃったのじゃ」

『大好き???』


 千夏姫の簡単に言うセリフに、俺は固まり、姉貴はニタニタしている。 いかん、姉貴の前で『大好き』は絶対不幸になる。 姉貴は貧乏神の様に俺の背中に張り付く。


「あんちゃん、モテモテですな」


 ひいいい……。 この後に起きた惨事は、一年はトラウマになるものであった。


 昼休みのご飯前の事である。知らないアドレスからメール届いた。名前は烈姫とある。トラップか本人か微妙である。俺は烈姫を探してみるがいない。演劇部の部室かな……?中に入ると烈姫がスマホを操作している。美穂は烈姫が欲しがったと言うが本人はスマホの使い方を叩きこまれて焦っていた。


『近所のざるそば屋』


「おお、地図に出るな」


 流石、烈姫だ、頭がいいので覚えも早い。となると、このメールアドレスは烈姫か……。


「アプリのQRコードを教えてくれ」


 おお、上級者なセリフだ。俺が普段、使わないアプリなのでこちらが苦戦すると。


「ボッチな和修らしいな」


 美穂が余分な事を言う。イヤ、そうなんだけどね……。気がつくと演劇部の部室の中にてスク水メイド・カレンちゃんのエンディングテーマが流れているのであった。


「ところで、美穂はあい〇ょんのファンなんだよな」

「は?スク水メイド・カレンちゃんのエンディングテーマはあい〇ょんだがそれ以外の曲はあるのか?」


 俺は質問したことに後悔してから間違えた事に気づく。やはり、あい〇ょんは二人いるらしい。


「千夏姫、メールアドレスの出どころも分った事だしメシにするか?」

「おう」


 俺達が帰ろうとすると。


「壁紙に和修の画像が欲しいのだが一枚撮っていいか」


 烈姫がスマホを片手に話かけてくる。なんだ、呪いにでも使うのか……?

俺が嫌そうにしていると。


「烈姫ちゃんは和修のことを気に入ったらしいぞ」


 美穂が遠い目で言うのであった。なんか……信憑性が薄いな……。


「えーと、カメラ機能を立ち上げて……」


 あれ?俺に拒否権はないのか?


「とにかく、そこに座れ!」


 烈姫は頬を赤らめながら言うのであった。仕方なく、ポーズをきめると。


「お前はアホか?」


 千夏姫の冷めた言葉が聞こえる。壁紙に使うのだ、アホ呼ばわりは酷い。俺が千夏姫と口論になると、烈姫は「やはり、微妙だな……」と言い残して部室から出る。結局、校内の植え込みを撮ると烈姫は満足そうになる。しかし、スマホ時代のコミュニケーションは難しいなと思うのであった。


「千夏姫、昼はラーメン屋でいいな」


 休日の昼間に千夏姫を安いラーメン屋に連れて行くことにした。 ちなみに千夏姫の格好はジャージだ。 自転車でほど近くのラーメン屋に着くと千夏姫はソワソワしている。 ま、よかろう。 中に入ると適当に座り、俺はチャーシュー麺を頼む。 ジャージ姫はオムライスを頼むのであった。 ラーメンを頼めよと。心の中で思うのであった。 でも、問題もなかろうと思っているとチャーシュー麺が運ばれてくる。


「先に食うぞ」

「あ、ぁ」


 ジャージ姫が不機嫌そうに返事を返す。まったく、食気だけはゴージャスでいけない。


 ……。


 俺がチャーシュー麺を食べ終わると、ジャージ姫が泣きそうになる。 ラーメン屋でオムライスなど頼むからだ。 仕方がない、ギョーザを追加注文する。 案の定にギョーザが先に出てくる。


「ジャージ姫、食っていいそ」

「我は千夏姫じゃ、オムライスへの我慢はできるぞ」


 強がりよって。今、必要なのはギョーザだろうに……。


「ギョーザは必要ないのか?」

「いや、食べるぞ」


 ジャージ姫は嬉しそうにガツガツ食べる。 ギョーザは千夏姫の為とはいえ全部食べやがった。 俺は水を飲み干しテーブルの横に置いてある水をつぎ足す。


 ……。


 それから、オムライスがテーブルに置かれると千夏姫が食べ始める。 俺は間が持たず、トイレに行く。 帰ってくるとオムライスはなくなって、千夏姫は水を飲んでまったりしていた。


「さて、帰るか」


 帰り道で千夏姫は「こんどは焼肉が食べたいぞ」というのであった。 贅沢な姫だ。 俺達はたい焼き屋に寄ってたい焼きを買うのであった。 はむはむとたい焼きを食べる千夏姫はやはり可愛い。 たい焼きを食べ終わると「焼肉も食べたいぞ」と言う。 まだ、焼肉と言っている。 しかし、何処で焼肉など覚えたのであろうか?

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