第6話 甘い甘い誘惑

ずいっ。目の前にクッキーを差し出される。つまんでいる指の先を見ると、眼鏡をかけている生徒と一緒にやってきたハーフアップに髪を結った女子生徒だった。

「先輩、クッキーいかがですか?」

甘味に味覚値を全振りしているため、甘いものが大好きだ。

「食べますっ」

そう答えると、手を繋がれソファに案内された。途中、土下座をしたまま、眼鏡の男子生徒にお叱りを受けている4人の前を通り過ぎた。「あんな方たちは気にしなくてもいいですよ〜」と言われる。

案内されたのはもっふもっふのソファ。身体が沈んでくううううう。絶対良いお値段しますわ。

口もとに運ばれてきたのはさっきのクッキーで、シンプルなものだった。「ありがとう」と言い受け取ろうとすると「お口を開けてくださいな」とのこと。自分が子供みたいで少し恥ずかしかったけれど、食欲には勝てないっ。素直に口を開けると、満面の笑みで「どうぞ」と食べさせてくれた。

「うまぁ」

サクサク、ほろほろ、あまみもついていてバターが香る。

咀嚼して口の中が空になってから無意識に感想が出てきた。

「他の種類もありますよ」

と言われ躊躇っていると「私たち、甘いの苦手なんです。紅茶のお供として雰囲気だけで置いてて食べる人は少ないので、ぜひ」と横から天使の声が。

「いただきます」

「ふふ。次はどれにします?」

「じゃあ……」



2つ目を食べる頃にはもう、クッキーにしか意識がなかった。


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