　燦（さん）爛（らん）たる燭（しよつ）光（こう）が暗（くら）闇（やみ）を滅（めつ）していた。

　溟（めい）濛（もう）たる螺（ら）旋（せん）状（じよう）の階段は地（ち）殻（かく）の深（しん）淵（えん）までつづいていた。

　戛（かつ）然（ぜん）たる足音が木（こ）霊（だま）していた。琥（こ）珀（はく）色（いろ）の燭（しよく）台（だい）を摘（つ）んでいる魔（ま）術（じゆつ）師（し）に嚮（きよう）導（どう）されたわたしは黒（こつ）褐（かつ）色（しよく）の岩（いわ）肌（はだ）が露（ろ）呈（てい）されている溟（めい）濛（もう）たる階段を降りていた。穿（せん）鑿（さく）された地（ち）殻（かく）はときおり微（び）弱（じやく）に震（しん）盪（とう）して漆（しつ）黒（こく）の煙（えん）霧（む）のような蝙蝠（こうもり）たちが地上へと飛散していった。最下層へと到（とう）達（たつ）した。狭（きよう）隘（あい）なる密室には蠱（こ）惑（わく）的（てき）なる秘（ひ）儀（ぎ）の痕（こん）跡（せき）があり絢（けん）爛（らん）たる霊（れい）物とともに浩（こう）瀚（かん）の神秘神学の書物が秘蔵されていた。不（ふ）滅（めつ）の神との神秘合一を標（ひよう）榜（ぼう）する古書から完（かん）璧（ぺき）なる虚（きよ）無（む）たる神との融（ゆう）合（ごう）を論ずる否定神学の書物までである。琥（こ）珀（はく）色（いろ）の燭（しよく）台（だい）を執（しつ）事（じ）にゆだねた魔（ま）術（じゆつ）師（し）は無（む）窮（きゆう）の運命との融（ゆう）合（ごう）を研究した異（い）端（たん）的なる稀（き）覯（こう）書（しよ）をひもといた。魔（ま）術（じゆつ）師（し）は物語った。いわく悲劇の『運命』そのものに輪（りん）廻（ね）すればあなたは自由に転生することができるだろうと。すべての人間に転生したのちに最初の肉体へと回帰する瞬（しゆん）間（かん）しか嚮（きよう）導（どう）者である『運命』そのものに輪（りん）廻（ね）することはできないと。わたしは秘（ひ）儀（ぎ）をはじめた。痩（そう）躯（く）の手首を切（き）り裂（さ）いたわたしは冒（ぼう）瀆（とく）的なる悪（あく）魔（ま）との契（けい）約（やく）書（しよ）に韓（から）紅（くれない）の鮮（せん）血（けつ）をそそいでいった。黄（おう）褐（かつ）色（しよく）の契（けい）約（やく）書（しよ）が漆（しつ）黒（こく）に染まってゆくたびに羸（るい）弱（じやく）なる肉体は猛（もう）烈（れつ）に痙（けい）攣（れん）してゆき意識は混（こん）濁（だく）していった。