まとめ
読みやすい。物語の動きというより描写の濃さが面白い体験。薄い描写でテンプレなぞる展開に飽きたあなたに是非。
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・読みやすさ
パッと読み始めると軽い文体に見えるだろうが、そうではない。丁寧な描写や、文体の緩急により、”軽さ”をうまくフレーバーとしている。1話の終わりか2話まで読み進めればすぐに感じるだろう。また、これが主人公像の演出に活きている。
さらに、後述するが、本作はかなり精緻な描写がでてくる。しかし技術書や指南書ではなく、小説として読みやすい理由にも、この文体が活きているのではないかと思う。
・魅力
やはり古武術の描写であろう。
体の動きを文字に起こすことは容易ではない。さらに解説書ではなく、小説においての難しさもある。詳しく書きすぎても、何が何だか分からなくなるし、書かなさすぎても味気ない(究極がよくある「カキンカキン!」)。
本作では物語の進行に伴い、描写具合も進んでいく。これには主人公が稽古をつけてもらうという設定がかなり活きていて、読者の我々もまた成長していくことで、イメージもついていきやすい。詳記と省略の生む、描写のダイナミックな変化はかなり新鮮で面白い体験であった。
物語としても、後味のよいお話であった。
これ以上はネタバレになってしまうかもしれないのでここで筆を置く。
たまたまレビューを見て読み始めたが、こんな素敵な出会いになるとは。レビュアーの方にも感謝申し上げたい。