第4話 倫理に反す
これで僕は色を感じることはできないまま終わる。
教授との会見後、大学では脳への
倫理に反する、と……。
科学技術は可能であっても、人間の心が追いついていないのかもしれない。
人工の子宮や幹細胞によるクローン技術などもそうだ。
倫理的に受け入れられない。
この人工の眼球の研究もそうだ。
この技術ができれば、教授が口にしたように可視光線以外の紫外線や赤外線を見ることでは、多くの健全者からすれば『異質』になるのであろう。
障がいではなく、異質でよく解らないもの。
それを人は「倫理的に受け入れられない」という言葉で片付ける。結局は優位なモノが産まれることに恐怖しているのであろう。
こう愚痴を言ったところで、どうにでもなるわけではない。
研究には資金がいる。
大学がNOというのであれば、別の場所にアイデアを持って行くべきだ。
しかし……数件、他の研究施設に持ち込んでみたが、結果は同じようなモノだ。
興味はある。
アイデアは面白い。
だが、話を聞いてもらえるのみだ。最終的には
自分ひとりではできない。あらゆる力が不足していた。資金も知識も……。
僕はそんなアイデアを潜めつつ、大学に溶け込むことを決めた。と脳の電気信号を解明する、脳科学という名目で……。
しかし、いつかは色を感じたい……あの『命の色』を見たかった……そう願っていた。
………………
…………
……
それからどれぐらい経っただろうか?
私はすっかり年寄りになっていた。もうまもなく大学勤務の定年が見えてきたときだ。
結局は『倫理問題』のために人に応用することはできなかった。しかし、脳の構造の解明をしていくウチに、色を認識する仕組みを予測できるまでになっていた。
後は、本当に脳が予測した通りの動きをするのか。
人工的に電気信号に換えたモノを、色として理解できるのだろうか。
それは臨床試験をしてみないと分からない。
自分自身を試験台としようとも考えた。だが、どんなに頼んだところで、私を使った実験は拒否され、説得された。
今は動物を使ったものでさえもはばかれるようになってきたからだ。だが、どこか誰か私の研究結果に興味を示してくれるだろう。
そして、叶えてくれるに違いない。
それを願って、膨大な
それがどんな結果になることなど、私には関係がないであろう。
恐らく私が生きている間には、実現は不可能だ。
人が自然のままでいたいと思うのなら、それを越えようというのは、恐怖でしかないのだから……。
その涙さえ命の色……色がほしい 大月クマ @smurakam1978
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