Movement:2-2『New year's day』

-宮澤家-


舞「お兄ちゃーん、初詣行くよー。降りてきて~」

蛍「もうそんな時間か……おっ、舞、その恰好」

舞「ふふん、どう~? 振り袖だよー」

蛍「おーいいじゃん。似合う似合う」

 (めっっちゃくちゃ可愛い)

舞「えへへ、年に一回しか着ないから、ちょっと手こずっちゃった」

蛍「自分一人で着付けできるなんて偉いぞ。よくやった」

舞「えへへ~」


  ピンポーン


舞「あ、唯さんだ!」

蛍「なんでわかるんだ?」

舞「お兄ちゃんには唯さんしか友達いないでしょ!」

蛍「うっ……ま、舞の友達かもしれないだろ」

舞「私、家に友達あげたことないもん。

  お兄ちゃんの居心地が悪くなるだろうからね~」

男(俺に気を遣ってなのか……?)

舞「……ほ、本当に友達いるからね!?」

蛍「わ、わかってるよ」


唯「やあ、さっきぶり」

舞「おはようございます! わわっ唯さん綺麗な振り袖!」

唯「いやぁ、母が張り切ってしまってね。

  もっと地味なものがよかったのだけれど……」

蛍「ちょっと、着られてる感じだな」

舞「むっ」

唯「ふふ、まったくその通りだね。少し恥ずかしいよ」

舞「お兄ちゃんほんとバカ」

蛍「え?」

舞「なんでもありませーん! それじゃあ、初詣行きましょー!」


-初詣-


蛍「うわーやっぱり人多いな」

唯「はぐれないようにしないとね」

蛍「そうだな。舞、はぐれないように手……って、あれ?」

唯「どうしたんだい?」

蛍「……舞とはぐれた」

唯「言ったそばからだったね」


     *


蛍「おーい、舞ー!」

唯「舞さーん」

蛍「人が多すぎるな」

唯「うん。うわわっ」

蛍「あぶねえ!」

唯「っとと、ありがとう。もう少しで人波にのまれていたよ」

蛍「気をつけろよな。お前まではぐれられたら困る」

唯「ふふっ、面倒事が増えてしまうね」

蛍「そういうことだ」


唯「あっ、今舞さんに似た娘が」

蛍「違う」

唯「えっ、でも似ていたような」

蛍「舞はもっと可愛い」

唯「え」

蛍「俺にはわかる」

唯「……ふふっ、君は本当に舞さんが好きだね」

蛍「う、うるさい。とっとと探すぞ」


舞「あ、お兄ちゃん!」

蛍「舞! 良かった……」

唯「ふふ、再会できてよかった」

舞「……!」

蛍「ちょ、なんで逃げるんだ!?」

舞「お、お邪魔だと思って……!」

蛍「え?」

舞「唯さんとお兄ちゃん、手、繋いでるから……」

蛍「ちょ、こ、これは違うぞ!?」

唯「人波ではぐれないようにしていただけだよ。何も変なことはないさ」

舞「そ、そうでしたか! ごめんなさい、勘違いしちゃって」

蛍「ったく……」

舞「お兄ちゃんが唯さんと釣り合うわけないですもんねっ」

蛍「ひでえっ!」


     *


舞「何お願いするの?」

蛍「内緒」

唯「ふふっ……」


パンパンッ


三人「……」

蛍「……さて! おみくじ引くか!」

唯「うん、そうだね」

舞「よーっし、大吉狙うぞー!」


唯「そういえば、『パンパンッ』ってなんだかいやらしいね」

蛍「新年早々お前はいつも通りだな!!」

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