Movement:1-2『体育祭(後編)』

-校庭-


唯「……ふぅ」

蛍「今日はこれくらいにしておこう」

唯「今日も、いっぱい出たね……」

蛍「なんの話だ」

唯「汗のことさ」

蛍「……」


-下校中-


唯「ボクらのバトン回しも、だいぶ様になってきたように思えるね」

蛍「そりゃ、毎日練習してりゃあな」

唯「こんなに練習しているのも珍しいと思うけれど」

蛍「ん、そうか?」

唯「君が心配性なのがよくわかった、かな」

蛍「ベストは尽くしたいんだよ」


-宮澤家-


舞「もうすぐ体育祭だね!」

蛍「ああ。なんとかなるといいんだが」

舞「その日はお弁当、豪華にするんだから!」

蛍「……ま、待て、いつも通りで大丈夫だぞ? 気持ちだけで」

舞「ううん! 私の気持ちは、そんなもんじゃおさまりませーん!」

蛍(……満腹で走れるだろうか)


-1-C教室-


唯「あはは、お弁当がいつもよりグレードアップするんだ」

蛍「リレーって最後だったよな。消化できるだろうか」

唯「ふふ、君は出されたものは全部食べるからね」

蛍「おい」

唯「?」

蛍「……」

唯「おや……なにかいかがわしいことでも考えたのかな?」

蛍「うるせー……」


蛍「俺が残さず食べるのは、舞が残すと凄く残念そうな顔をするからだ」

唯「なるほど。やっぱり舞さんには頭が上がらないんだね」

蛍「ん~、そうだなぁ。ずっと笑ってて欲しいんだよ」

唯「良いことさ。ボクは一人っ子だからね。兄弟とかには、やっぱり憧れるよ」

蛍「なるほどな」

唯「……お母さんに、もう少し頑張ってもらおうかな」

蛍「おいおい」


-体育祭、当日-


唯「体育祭の日になってしまったね」

蛍「あっという間だな」

唯「ボクは騎馬戦が今からワクワクだよ」

蛍「なんでだ?」

唯「合法的に女性と接触できるからね」

蛍「んなこったろうと思ったよ」


唯「ベストを尽くす」

蛍「ん?」

唯「良い言葉だ。この前君が言っていただろう?」

蛍「そういえば、そんな風なことを言った気がする」

唯「ふふっ、気に入った」

蛍「そうかい」


     *


蛍「ふう……」

唯「おつかれさま、どうだい調子は」

蛍「まあ、良い感じじゃないか? チームの順位も意外と悪くない」

唯「そうだね。順位が大きく点数に絡んでくるリレーがどんどん緊張してしまうね」

蛍「やめろ、頭から切り離そうとしてるんだ。言うな」

唯「ふふっ、はーい」


-昼食-


蛍「いただきまーす」

舞「ふふふ~っ」

蛍「なんだ、機嫌良いな」

舞「今の所2位! 1位まで僅差! リレーまでもうすぐ!」

蛍「あはは……そうだな」

唯「今日もボリューム満点だね」

舞「今日はいつも以上に頑張りました!」

唯「うんうん、良いことだ」

蛍(いつもの倍はあるぞ)


唯「……おや」

蛍「ん?」

唯「あはは、どうやらお弁当を忘れてしまったみたいだ」

蛍「何やってんだ」

唯「困ったなぁ」

舞「あ、良かったらお兄ちゃんの、食べてください!」

蛍「! お、おお、そうだな。遠慮は要らないから食べてくれ」

唯「本当かい? ありがとう、それじゃあいただこうかな」

蛍(……こいつまさか、わざとか?)

唯「うん、美味しいよ」

舞「やったー! よかったっ」

蛍(……まさかな)


     *


蛍「うぷっ……多かった」

唯「あはは、いつも以上の量を時間通りに食べ切れる君は凄いよ」

蛍「ああ、我ながらどういう身体の構造してるのかわからねえよ」

唯「お腹もあんまり大きくならないもんね」

蛍「ああ、なんでだろうな」

唯「あ、今蹴った?」

蛍「おい。大きくならないって言っただろ今」


-リレー-


蛍(いよいよリレーが来ちまった)

  頼むからあんまりギリギリで渡ってくるなよぉ……)


パァン!


蛍(始まった……)

 「……いけー!」

*「みなさん、頑張ってください」

蛍(淡々とした実況だ……)


ウ オ ー ー ー ー ー ー ー ! !


蛍「!」

*「どのチームも差がありません。一位を狙える距離です」

蛍(おいおい、マジでほとんど変わんねえじゃねえか……!)


唯「……はいっ!」


蛍(もうヤツの番まで来てる……)


唯「……ハッハッハッ……」


蛍(おお、めちゃくちゃ速い! 一位だ!ってことは。

  一位で俺に回ってくる。

  大丈夫、今まで練習してきた通りにやれば……)


唯「……はいっ!」

蛍「はいっ!」


舞(うわあ! すっごい!!)


蛍(完璧に繋がった! このまま一気に……!!)



-下校途中-


唯「あはは、優勝しちゃったね」

蛍「ああ……」

唯「バトン回し、上手く決まって良かったよ」

蛍「そうだな……」

唯「ふふ、練習してよかった」

蛍「おう……」

唯「おや、あんまり嬉しくないのかな?」

蛍「いや……うぷっ……」

唯「……あはは、危険な感じかな」

蛍「正直ギリだったな」

唯「ふふっ、よく頑張りました」

蛍「ああ……お前もな」

唯「うん。……お祝いの晩ご飯はなんだろうね?」

蛍(うわああああああああああ…………)

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