Movement:2『宿題をやろう』

-宮澤家-

唯「おじゃまします。暑いから全裸になってもいいかな?」

蛍「他人ひとん家でいきなり脱ごうとするな」

唯「生まれたままの姿が、人間は一番美しいんだよ」

蛍「だからって脱ぐな。美しさなんて求めてねーよ」

唯「ボクは『暑いから』脱ぐんだ」

蛍「扇風機持ってくるから我慢しろ」


唯「あ あ あ あ あ あ」

蛍「扇風機で遊ぶな」

唯「ついついやってしまうよね」

蛍「宿題をすることになったわけだが、どうしてお前は何も持ってきてないんだ?」

唯「昨日無事完遂したからだよ」

蛍「……は!?」

唯「勢いよくフィニッシュ! 抜かずの三発で腰が抜けてしまった」

蛍「下ネタをすぐさま挟んでくるな!」


唯「基本的には、宿題は出された日に始めてしまうんだ」

蛍「……ん? でも待て、中学の時もそうだったっけか……?」

唯「あの頃は君に合わせてた」

蛍「ま、マジかよ」

唯「夏休みを思う存分遊ぶために、今年は先に終わらせておいたんだ」

蛍「なるほどなぁ」

唯「それに、これなら教えやすいしね」

蛍「一緒にやる、というよりは一方的に教えるってことだったんだな……」

唯「はは、そうとも言うね」


     *


蛍「……暑い」

唯「夏だからね」

蛍「扇風機こっちにも向けてくれ」

唯「うん」

蛍「……涼しい」

唯「今度はボクが暑い……脱いでいいかい?」

蛍「なんでだ。扇風機を首振りにしてくれ」

唯「余計暑いなぁ~」

蛍「お前が首振ってどうする、扇風機なのかお前は」


     *


蛍「くそー汗が止まらない!」

唯「今日はやけに暑いね」

蛍「滴りそうだ」

唯「それなら、最終手段を使えばいいさ」

蛍「……?」

唯「ほら、冷房」

蛍「それは使えない」

唯「どうして? 壊れてるのかい?」

蛍「そういうわけじゃねーけど。……お前、エアコン苦手だろ」

唯「……そっか。気遣ってくれてありがとう」

蛍「ふんっ……」


蛍「そういや、どうして苦手なんだ?」

唯「身体が必要以上に冷えたりしちゃうからね」

蛍「敏感なのか」

唯「敏感?」

蛍「あっ……」

 (やばい、下ネタを言われる)

唯「……今、ボクが下ネタを言うんじゃないかと思ったかい?」

蛍「……別に」

唯「まあ、言おうとしてたけどね」

蛍「流石だな!」


     *


蛍「ここわかんねえ」

唯「はいはい……ごめん、反対からだとよくわからないな」

蛍「あぁ、すまん」

唯「ひっくり返さなくてもいいよ。ボクがそっちに行くから」

蛍「ん、ああ……」

唯「えーっと……ああ、この問題だね」

蛍(近いな……)

唯「まずはこうして……」

蛍(あんまり気にしてないみたいだな)

唯「こうするんだ。……ちゃんと聞いてた?」

蛍「すまん、あんまり」

唯「もう、ちゃんと聞いてくれないと困るよ」

蛍(顔が近いっつーの)


     *


唯「ふう、思っていたよりスムーズに進んだね」

蛍「ああ。これならすぐに終わりそうだ」

唯「ふふっ、そうだね。でももう少しやろう」

蛍「まだやるのか……」

唯「弱音を吐いちゃいけないよ。ほら、頑張……」


舞「お兄ちゃ~ん、唯さ~ん、スイカがあるので一緒に食べませんか~」


蛍「……」

唯「……一旦休憩だね」

蛍「そうだな」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る