"Summer Sunset Serenade"-夏休み昼夜逆転物語-

 Movement:1『プールに行こう』

-宮澤家-


唯「夏休みだー」

蛍「……」

唯「というわけでプールに行こう」

蛍「それはいいんだが……」

唯「どうしたんだい?」

蛍「なんでお前既に水着なんだ? おまけにポニーテール」

唯「楽しみだからこのままで着て来たんだ。髪は暑いからまとめたのさ」

蛍「どうであれなんか上に着てこいよ……しかもスクール水着って……」

唯「うん、中学校の頃のものをそのまま使っているよ」

蛍「……」


唯「屋外プールはここから自転車で二十分くらいだね」

蛍「そうだけど、お前自転車は?」

唯「ここにあるじゃないか」

蛍「いや、それは俺の自転車だろ」

唯「な、なんと! 後ろに乗れる場所があるではありませんか~!」

蛍「二人乗りする気満々だな!」

 ※良い子は真似しないでください


蛍「本当に二人乗りで行くのな」

唯「? そうだよ。……んしょ」

蛍「乗れたか?」

唯「うん。騎〇位」

蛍「黙れ」


-自転車、往路-


  シャーッ


唯「風がじめりと温いね」

蛍「夏だからな」

唯「でもまあ、君の背中で温風はほとんど防がれているけれど」

蛍「お前、危ないからつかまっとけよ。ただでさえ横向いて座ってんだから」

唯「ボクの体幹は尋常じゃないほど鍛えられている……わわっ」ぐらっ

蛍「うおっ、……ったく、言わんこっちゃない。つかまっとけ」

唯「うん、そうするよ」ぎゅっ

蛍「!……。あー、やっぱりやめろ」

唯「え? 死ねと?」


-プール-


唯「うーん、良い天気だね」

蛍「これは楽しめそうだな」

唯「青〇を?」

蛍「んなわけあるか!」

唯「いや、待てよ……」

蛍「……?」

唯「ああ、水〇だね」

蛍「そんなこと考えてたのかよ!? ちっげえよ! 普通にプールだよ!」


唯「さて、日焼け止めを塗らないと」

蛍「塗ってなかったのか?」

唯「汗をかいてしまったから、もう一度塗らないとね」

蛍「汗……」

唯「……?」

蛍「な、なんでもない……早くつけろ」

唯「ふふっ……了解」


     *


唯「それじゃあ、流されるプールに行こう」

蛍「なんか嫌な言い方だな。流れるプールな」

唯「たくさんの人が流されているね」

蛍「もうツッコまないぞ。泳がなくてもスイスイ行くから楽しいんだよな」

唯「それじゃあ流れに逆らおう」

蛍「流される気全然無いな!」

唯「流れるプールになんか負けない!」

蛍「勝手にやってろ」


     *


唯「やっぱり流れるプールに勝てなかったよ……」

蛍「言うのは勝手だが身体をビクつかせるのはやめろ」

唯「お腹が空いたね。何か食べようよ」

蛍「切り替え早いな! ……そうだな。近くに売店があるし」

唯「あれ!? あんないやらしい物を売ってていいのかい?!」

蛍「何がだ」

唯「あ、ただのフランクフルトか……失敗失敗☆」

蛍「お前、何と勘違いしたんだ!?」


-夕前-


唯「だいぶ、人も少なくなったね」

蛍「そうだな」

唯「ねえ、最後に勝負しない?

  あのプールで真っ直ぐ泳いで、先にここまで戻ってきたら勝ち」

蛍「ん……別に、いいぞ」

唯「負けた方が相手の言うことを聞くというのはどうかな」

蛍「おう、いいぜ」

 (勝ったら宿題やらせよう)

唯「わかった。それじゃあ、勝負だ!」


-自転車、復路-


蛍「……」

唯「ふふっ、どうしたんだい黙りこんで」

蛍「うるせー……何言ったって負け犬の遠吠えだ」

唯「別に、勝負の話をしなければいいじゃないか」

蛍「それで、お前は俺に何をさせるんだ」

唯「ああ、そうだったね」

蛍「あまりにも酷いのは受け付けないからな」

唯「え、それはズルいよ」

蛍「うるさい。限度はある」

唯「……まあ、最初からそんな大それたことを頼む気なんてなかったけどね」

蛍「じゃあなんだ?」

唯「ボクと一緒に宿題をやろうよ」

蛍「……そんなんでいいのか?」

唯「うん」

蛍「お安いご用だ」

唯「ふふっ、じゃあ決まりだね。明日、君の家でやろう」

蛍「明日?! 別に良いけど」

唯「そうだ、一緒に保健体育の宿題もしようか?」

蛍「んなもんあるか!」

唯「この夏、二人で大人になろうじゃないか」

蛍「断る!!!」

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