No.19 あなたに贈る言葉のないカード

大好きな人に、バースデーカードを買った。

悩んで悩んで、選びきれなかったから二つ買った。


話したいことがたくさんあった。

伝えたい言葉がたくさんあった。

だから、

ようやく決めた一つを開いて万年筆を握ったのに

結局一文字も書き記すことはできなかった。


あふれてくる想いが混ざり合って溶け合って、

けれど何一つ形にならなかったから。

まっさらなままのカードをじっと見つめた。


この気持ちをいつの日か

届けることができるだろうか。


いいえ、

そうであってもなくてもいいのかもしれない。


カードの空白は切なくて愛おしくて、

それがそのまま答えなのだから。


この一つしかない世界の中に

あなたがいて私がいて。

ただそれだけで、いいのかもしれない。

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