No.20 その日「森へ」と彼は言った
死んだら土に還るという言葉が嫌いだった。
土いじりは好きなのに
その「土」は干からびて
寂しいだけのような気がしたからだ。
埃がたって削られて
それは私の求めるものではなかった。
もっと滑らかで、もっとしっとりと、
ああ、深く深く永遠に包まれたい。
そんな気持ちを誰かと分かち合いたかった。
だから、
「違うよ、森に還るんだ」って
彼がそう言ってくれた時、
の言葉はたまらなく私の中に響きわたった。
ああ、ようやく大切なものを見つけたと思った。
行きつきたい先を、それを分かち合える人を。
たった一言が、けれど何よりも雄弁だった。
彼の透き通った眼差しが、
私の探し求めて止まなかった
森に滴る朝の雫みたいに
深く深く身のうちにしみ込む。
濡れた吐息が
永遠に枯れることのない約束を紡げば
それは湧き出す泉のように世界を満たしていった。
彼と私が出会った日、
それは二人が青い森を夢見た日。
そしてそれは、
どこにもなかった最後の一つを見つけた日。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます