No.20 その日「森へ」と彼は言った

死んだら土に還るという言葉が嫌いだった。


土いじりは好きなのに

その「土」は干からびて

寂しいだけのような気がしたからだ。


埃がたって削られて

それは私の求めるものではなかった。


もっと滑らかで、もっとしっとりと、

ああ、深く深く永遠に包まれたい。

そんな気持ちを誰かと分かち合いたかった。


だから、

「違うよ、森に還るんだ」って

彼がそう言ってくれた時、

の言葉はたまらなく私の中に響きわたった。


ああ、ようやく大切なものを見つけたと思った。

行きつきたい先を、それを分かち合える人を。

たった一言が、けれど何よりも雄弁だった。


彼の透き通った眼差しが、

私の探し求めて止まなかった

森に滴る朝の雫みたいに

深く深く身のうちにしみ込む。


濡れた吐息が

永遠に枯れることのない約束を紡げば

それは湧き出す泉のように世界を満たしていった。


彼と私が出会った日、

それは二人が青い森を夢見た日。

そしてそれは、

どこにもなかった最後の一つを見つけた日。

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