No.2 メトロで見る夢
メトロに乗ると、この街に帰ってきたのだと感じる。
離れていた時間が一気に凝縮されて、
あなたをずっと近くに感じる。
またすれ違っていくだろうと思いつつも、
湧き上がる嬉しさには抗えない。
もしかしたら次の駅で、あなたに出会えるかもしれない。
だからだろうか。
足早に進むホームで時々、私は振り返りたくなる。
たまらなく、あなたがそこにいるような気がして。
いつの時間の、どこの場所のあなたなのか、
揺らぐ幻影が微笑みかける。
遠い日の甘い疼きがよみがえる。
電車の到着を告げるアナウンスと
滑り込んでくる車両のスピードの中にかき消されてしまっても、
それは残り香のようにまとわりついて離れない。
あなたがいる街が私にもたらす喜びは、
呼吸と呼吸の間のわずかな時間。
混雑する街の真ん中の、たえまない喧噪の中で見る白昼夢。
それでも、
メトロという日常の中に生まれる、非日常のきらめきは
かすかな微笑みにも似て、たまらなく甘く切ない。
あなたを想って揺られる時間が、
どこまでも私を優しく包んでくれる。
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