満員電車はかく語りき
無事に米田万四郎を風呂に入れることに成功した舞ちゃんは、大学への果てしない通学路を行くのであった……。(ナレーションK西谷)
「む?あれは恋愛か?」
万四郎は駅前で座っている老人2人を指差し尋ねた。
「違うよまんちゃん、あれは夫婦だよ」
「夫婦は恋愛ではなということか!なるほどな!」
ではここで、老人たちの会話に耳を澄ませてみようではないか。
「にーちゃん奥さん大事にしぃや!」
「わかっとるわぼけぇ!」
答えは兄弟でした。
舞ちゃんは失敗をごまかすかの様に咳をした。
「む?あれが三角関係というやつか?」
「違うよまんちゃん!あれは兄妹だよ!」
因みに二人は一人っ子である。
「なるほど……兄弟ならば三角関係は成立し得ないのだな?」
キリッとした瞳で真っ直ぐに見つめてくる万四郎に対し例外があることを伝えることはできず舞ちゃんは頷いてしまった。
天才、米田万四郎は得た情報を忘れずにメモ帳に書き込む。メモ帳には常人には読めない意味不明な図や文字が羅列されている。
本人曰くこれは考えたことを素早く書き留めるための速記言語らしいのだが、その形状から関係者(K西谷)の間では万字と呼ばれていた。
「さぁ!早く大学に行くぞ舞ちゃん!男女の性が入り乱れ、女子は膜を、男子は皮を失った魅惑の無法地帯、大学へ!いざゆかん!」
万四郎は小さなねっとりとした白い手で小さなサラサラの女子力高めで傷一つついていなくてめっちゃいい臭いがする白い舞ちゃんの手を引っ張って地下鉄に引き摺り込んで行く。
「まんちゃん意味わかって言ってるの?」
「む?勿論知らないぞ!西谷に事前に教えてもらった内容だな!言葉だけではわからないから今からその実態を調査しに行くのだろう?行くぞ舞ちゃん!」
舞ちゃんはウスバカゲロウの幼虫に捕捉された蟻並みのスピードで地下鉄の入り口に吸い込まれて行った。
「なんなのだ!この人間の数は!」
舞ちゃんは満員電車の中で大声を上げる万四郎の口を慌てて押さえた。
身長の低い万四郎は完全に人の中に埋れている。
「まんちゃん、公共の場所では静かにするんだよ」
途端に万四郎は暴れるのをやめ静かになった。
舞ちゃんは流石にまんちゃんでも公共の場所で騒いではいけないくらいの常識は知ってるんだなーと思った。
しかし次の瞬間万四郎の身体がプルプルと震えだす。
「どうしたのまんちゃん?おしっこ?」
「こ……こ……」
明らかに様子がおかしい。
「これが恋愛と言うものなのだな?舞ちゃん」
万四郎は少しだけ先の人混みの中を指差した。
そこには明らかに痴漢されている女性と痴漢がいた。
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