花園舞はかく救いき

「久しぶりだなぁーまんちゃん」


 花園舞は幼馴染みである。名前の通りふわふわとした内巻きの髪の毛を明るめの茶色に染め、ぱっちりとした天性の目はメイクを施す必要がないほどに綺麗な形をしている。


 所謂ゆるふわ系の保護したくなっちゃう可愛い子という奴だ。


 顔が整っているので本人は自分の見た目にコンプレックスを抱くことは一度もなかったのだろう。気の抜けたふわふわーんとした性格をしている。普通ならこういう子は女の敵になるがなまじライバルが多いため男同士が潰し合い世はまさに戦国の形相。結果モテることはなかったのだろう。


 というのは心のねじ曲がったどうしようも無い大嘘つきK西谷の意見である。


「まんちゃーん、迎えに来たよー」


 高く細い、しかしよく通る声が家賃50万超えの高級賃貸の入り口に響き渡る。


 ガチャッ


 心地よい解錠音がエントランスに響き渡る。


 彼女は白い小さな手で扉を押し開けるとエレベーターに乗り三十階へ向かった。


「まんちゃーん迎えに来たよー」


 少し小声で305号室の扉越しに話しかける。


 すると勢いよく扉が開き天才、米田万四郎が現れた。


 扉も服も観応開き、扉は片方しかないけれど。


 服の間から意外にもきめ細やかな白い肌が丸見えになっている。


「よく来たな舞ちゃん!今ちょうど香水を尻から体内に撃ち込もうとしていたところだ!手伝ってくれ!」


「まんちゃぁぁぁぁぁぁん!何やってるのー!」


 驚いた舞ちゃんは天才、米田万四郎を部屋の中に引きずり込み鍵を硬くロックした。


 数時間後……。


 ゆるふわモテモテガール舞ちゃんは鬼の形相で綺麗になったリビングの机に手をついて肩で息をしていた。


 部屋の隅には勝手に動かない様にベルトで縛られた米田万四郎がソファの上に転がっている。


「舞ちゃん、舞ちゃん、この紐を解いてはくれまいか?」


 自由を好む米田万四郎。若干涙目になり弱気な声で訴えかける。


「ごめんまんちゃん!でもまんちゃんベルト解いたらお尻に香水突っ込もうとするじゃん」


 友達を縛ってしまった罪悪感からか、此方も若干涙目になりながら友人を縛っているベルトを解いていく。


 自由になった米田万四郎、急に元気を取り戻し床の上に生ケツで座った。


「やっぱり舞ちゃんはいい臭いがするのだな?舞ちゃんはどんな香水をケツにぶち込んでいるのだ?」


「また西谷さんの言葉を真に受けたんでしょ!そんなことしたらだめなんだよ!」


 舞ちゃんは涙目で万四郎を抱き寄せる。


 天才、米田万四郎は鬱陶しそうに腕を振り解くと立ち上がり生足でペタペタとリビングを走り回った。


「舞ちゃん!次の作品の為に久しぶりに大学に行くのだ!だから連れて行って欲しいのだ!」


「わかったよーでもまんちゃんその前にちゃんとお風呂に入って髪を整えようね?」


「む、わかった」


 二人は浴室へと向かって行った。

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