第44話 待ち合わせ

 これ、あたしが高校生のときの話なんだけど。


 週末に遊ぶ約束をした友達に、「11時に駅の北口ね」っていうメールを送ろうとしたのね。あの頃ってみんなガラケーで、LINEとかそういうのなかったわけ。


 そしたら宛先を間違って、違う友達に送っちゃったの。その相手っていうのが、つい一月ほど前に交通事故で亡くなってた子でさ。


 うわー、まずいな。送り直さなくちゃとか思ってたら、その亡くなった友達のアドレスから返信があったの。


「わかった!明日の11時、北口ね!」


 って。


 あたし、気味が悪くなってさ。本当の待ち合わせ相手の友達に、待ち合わせ場所を変えてもらったのね。




 で、次の日の午前11時に、駅の南口で友達と落ち合ったの。北口じゃなくて南口。


 ちょっとその場で立ち話してたら、メールが来たのね。それが亡くなった子のアドレスからでさ。


「今北口だよ。遅れてるの?」


 って書いてあるの。


 で、怖くなって友達に見せたら、怖がるかと思ってたけどすごい怒ったんだよね。


「きっとあの子の携帯がまだ生きてて、誰かがいたずらしてるんだよ!」って。ああそうか、幽霊とかよりそっちの方が現実的かなんて、あたしバカだからその時初めて気が付いたの。


 で、ふたりで話し合って、こっそり北口へ行ってみようって決めたの。本当に誰か北口に来てるのか、気になったからね。


 で、北口の方に移動してさ。ちょっと離れたところでチラチラ見ながら、亡くなった子にメールを返したの。そしたらさ、そこにいる人たちの中で、携帯を確認し出す人がいるかもしれないじゃない。


「ごめん、今着いたよ」って打って、送信ボタンを押して、「送信しました」って画面が出た。


 そしたらその瞬間、乗用車が駅のエントランスに突っ込んできたの。


 乗用車は入り口近くの柱にぶつかって止まった。すっごい音がして、あちこちでキャーとかって悲鳴がしてさ。でもラッキーだったんだけど、突っ込んだとこには誰も立っていなかったの。近くにいて巻き込まれた人もいないみたいだった。


 車のドアが開いて、運転していた男性がヨロヨロしながら出てきてさ。あたし、ついつい見入ってたんだけど、友達にぐって腕を掴まれたの。


「もう、行こうよ」


 そう言ってずんずん歩いて行っちゃうのね。あたし、何を言ったらいいかわかんなくなって、黙ってその子についてった。あたしたちの後ろで男の人が、


「女の子は!? ここに立ってた、高校生くらいの子は!?」


 って何度も繰り返してるのが聞こえた。


 友達がちらっと振り返ったけど、顔色が真っ白になってた。たぶんあたしも真っ白になってたんじゃないかな。




 夕方、家に帰ってテレビつけたら、その事故がニュースになってたんだけど、やっぱり巻き込まれた女の子なんていなかったんだって。

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