第11話 おすすめ

「駅から歩いて5分くらいのとこにあるアパートなんだけどさ、2階の窓から腕が出てんの。こうやってさ、だらーんって垂れてんだよ」


「へぇ……なんていうか、変な人が住んでるんですね」


「そうじゃねーよ。腕だけびろーんなんだから。肩とか首とかねーんだから。それが1階の窓の辺りまでぶらーっと下がってんのよ。日曜日の夜なんか特によく垂れるよ。そんでもってそいつが、1階の窓ガラスをひっかいたり叩いたりさぁ、何がしたいかわかんねーけどやりたい放題よ」




 その1階の部屋ならめちゃくちゃ安い、と不動産屋のおやじは言った。


 僕は丁寧に断った。

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