第18話 皇城イターナルでの戦い4 特殊な暗殺者

 飛来音と空気の震え。

 そして向けられた殺気。

 この三つを掛け合わせて射線を予測する。


 それは刹那の間に行われる作業。

 曖昧な情報から導き出す答えにズレは許されない。

 ミリ単位の誤差が死に直結するのだから。


 感じ取るべきは射線が放つ気配。

 その上に構えたマチェットが見事に矢を弾いた。


 一瞬の安堵が訪れる。

 しかしその直後、腕に残る痺れの弱さに全身の肌が粟立った。


 今受けたのは渾身の一本矢では無かった。

 その事実に気付くのと同時に、一人の暗殺者の人生に終わりが訪れた。


 顔面に矢を受けた墨色暗殺者が地に転がった。

 これで二人目である。


「ぐ…くそがぁ!」


 三番目を進む墨色暗殺者の心情が口から漏れ出た。


 グリスを守る盾はまだ四つ残っている。

 しかし彼等は焦っていた。


 グリスを守りながらではなかなか前に進む事ができず、まだ大広間の中央にさえ到達できていないのだから。


 時は刻一刻と流れていく。

 だが、ここまでで大体手の内は読めた。


 どうやらカルマンが連射できるのは二本矢まで。

 三本矢は連射してしまうと、威力と精度が不十分になるのだろう。

 矢を番える手間の問題もあるかもしれない。


 しかし厄介なのが、渾身と連射の二つの形を持つ一本矢だ。

 さすがに渾身の矢は連射できない様だが、この暗闇の中で渾身か連射かを判断するのは不可能に近い。


 そして何より連射であったとしても、それが必殺に近い威力を持っているという事が更に厄介であった。


 闇の中から飛んでくる死神の鎌を恐れて、足がなかなか前に出ない。

 そんな様子を見かねたのか、圧縮された闘気が大広間の入り口からいきなり流れ込んで来た。


 それは匂いでも嗅ぎ取れてしまいそうな濃密な闘気。

 時間がかかっている事に、謎の人物が気を揉んでいる事がありありと伝わってくるものであった。


「守りはもういい。ここまで来たならもう仕掛けられるだろう。三、一、一で行くぞ。」


 事態を重く見たグリスが後ろから指示を出した。

 墨色の四人も瞬時にその指示の意を汲み取った様である。


 各々が矢が迫る気配を同時に感じた。

 そして次の瞬間、全員が暗闇の大広間に散開してそれを躱した。


 すると奥に向けて走り出した三人が、タイミングを合わせてカルマンへと一気に迫る。

 この距離を詰めるまでにいくつか矢を受ける事になったが、何とか致命傷は避けられた。


 しかし近距離で矢を完全に回避するのは不可能。

 ようやく視界に捉えたカルマンの弓には、一本の矢が番われている。


 それを見た三人の目が光を帯びた。

 やっと標的の動きが想定内に入った。

 そういう目の輝きである。


 一本矢が端にいた暗殺者の胸を穿つ。

 それを音と気配で察知した二人は一気にカルマンの目前にまで迫り、その勢いのままマチェットで斬りつけた。


 流れる様な全身の連動がマチェットを走らせる。

 それは暗殺者の動きではなく、剣士でも一流の存在のみが体得できる斬撃であった。


 しかし、マチェットの届く位置からカルマンの姿は消えていた。


 後方宙返りの形で距離をとったカルマン。

 二本の矢が空中で番えられ、そのまま放たれた。


 技の直後。

 そこに絶妙のタイミングで迫る矢を回避する事はできない。

 しかし二人の墨色暗殺者の目は絶望の色を宿してはいなかった。


 今だ、いけ!

 そんな心の言葉が聞こえてきそうな目をしている。


 二人の胸に矢が押し込まれるのと交差するかの様に、二つの影が縦に並んで前に飛び出した。


 今、カルマンの背中には扉が迫っている。

 もう後ろに退がる事はできない。


 かといって横に逃げれば勢いのまま扉は突き破られ、そのまま皇帝の下へと侵入を許してしまうだろう。


 隠している手があるのなら、ここで出さねば終わりだぞ?

 カルマンに問いかける様にグリスは目を細めた。


 そこに特別な感情など宿ってはいない。

 ただ目の前にある事実を冷静に見てとっているだけ。


 墨色暗殺者達の狙いは、一呼吸の間合いにまでグリスを到達させる事。


 双月を習得している影法師シャドーマスターに、一呼吸の間合いで勝てる暗殺者など存在しないのだ。

 それがたとえどれだけ優れた導師マスターであったとしても。


 そして既に一呼吸の間合いにまでグリスは到達している。

 それはカルマンにとって詰みの状況であった。


 しかしカルマンはそこで、全身の力を込めて強弓を引いた。

 そこには隠す素ぶりが何処にも無く、明らかなる渾身が込められていた。


ーー血迷ったか!


 グリスの眼光が薄く光る。

 連射のできない渾身の矢を用いれば、確実に前を走る墨色暗殺者を討てるだろう。


 しかしその後に訪れる刹那の硬直は絶対に不可避。

 ならばそれで終わりである。


ーー期待外れだったか…。


 グリスのマチェットとダガーが両手に抜かれた。


 恐ろしい相手であった事は確かだ。

 しかし、暗殺者が至る事のできる別の形での高み。

 それを目にする事ができるのではという期待があったのも、また事実であった。


 決死の覚悟で先行する墨色暗殺者の胸を、渾身の矢が穿つ。

 その気配を感じ取ったグリスが前に踏み出そうとしたその時、全身の細胞が警報を鳴らした。


 目前に脅威が迫っている!

 そんな直感に一瞬混乱したが、グリスは咄嗟にマチェットとダガーを前方で交差させた。


 直後、前を走っていた墨色暗殺者の背中を食い破る様に突き抜けて、渾身の一本矢がグリスの目前に姿を現した。


 それは予め構えていなければ、受けることすらできなかったであろう速度でグリスの命へと迫った。


 鈍い金属音と共に、マチェットとダガーがグリスの胸に押し付けられる。

 両腕と胸に伝わってくる凄まじい衝撃。


 それは人の体の二つや三つは軽々と貫通するだろうと思える威力を秘めていた。


ーー全力を隠していたか!


 直感に従っていなければ、確実にやられていた。全身の汗腺から冷や汗が漏れ出ようとしているのが分かる。


 だがグリスの口元には薄い笑みが浮かんでいた。


 それは未知の形で一つの高みに達した相手に対する賞賛か。

 それともその後の勝利に対する確信が形を成したのか。

 とにかくは混ざり物の多い笑みであった。


 渾身の矢の纏う衝撃が、グリスの体を完全に捕らえた。

 いや…捕らえたかの様に見えた瞬間、グリスの体がヌルリと滑る様に斜め前へと流れ出た。


 それは剣士と暗殺者の双方を達人の域にまで高めて、初めてこの世に発現した回避技。

 師であるシュバルツさえも修得できず、現在地上ではグリスのみが扱える技である。


 大木さえもへし折る豪風にあっても、身をしならせて見事に圧力を後ろに流す柳の木。

 その姿になぞらえて付けられた技の名は『柳月りゅうげつ』。


「相手が俺じゃ無かったら、お前の勝ちだったよ。」


 シュバルツであっても危なかったであろう。

 素直にそう思える危険な一撃であった。


 しかしこれで終わりだ。

 柳月りゅうげつにて斜め前へ躱した以上、渾身矢の硬直が解ける前にグリスはカルマンの命を刈り取る事ができる。


 勝敗は既に決した。

 しかし何故か残念そうにマチェットを構えて前へ踏み込むグリス。

 せめて双月に乗せた全力の斬撃にて葬ってやろうと、息を深く吸い込みながら。


 しかしその時、目に入ってきたのはあまりにも予想外の光景であった。


 カルマンが既に矢を番えている。

 しかも一見して分かる程、渾身の力で矢を引いて。


ーーば…ばかな!


 あれだけの威力を秘めた渾身の矢である。

 刹那の硬直もなく連射などできるはずがない。


 しかし…グリスはこの間の消し方を知っていた。

 この独特の拍子の取り方を知っていた。


 何故ならそれは十年以上毎日欠かす事なく、シュバルツによって己が身に叩き込まれたものであるから。


 一呼吸の間において、二回の渾身撃を可能にする『双月』という技は、決して能力を向上させた先にあるものではない。

 つまりそれは、鍛え抜いた筋力や俊敏さが可能とする技では無いという事である。


 あくまでもそれは呼吸の使い方。

 独自のリズム・波長をつかむ事ができるか否かで、習得の有無が決定づけられる。


 それは感性の問題とも言えるし、才の問題とも言える。


 そしてそのリズムを己のものとする為には、双月での攻撃を実際に体で受ける事が一番の近道となる。


 しかしそれでも双月の波長をつかめるのは一万人に一人と言われており、それが影法師シャドーマスターの誕生が極端に少ない原因ともなっている。


 過去には影法師シャドーマスターと対決し、受けた双月の拍子を戦いの最中に習得した化け物剣士がいたという事であるが…。

 事実かどうかは定かではない。


影法師シャドーマスターは自分達だけだという思い込み。それがお前の敗因だ!」


 カルマンの鋭い眼光から、射る様な殺気が放たれた。

 それは攻撃態勢に入っていた為、がら空きとなっているグリスの胸中央に向けられていた。


 グリスは双月を用いて動きをキャンセルし、普通ではあり得ない動きで後方へと飛び退いた。


「無駄だ!」


 カルマンの強弓が衝撃を放つ。

 そこから飛び出た一筋の影が、周囲の空気を巻き込みながらグリスの胸元へと入り込んだ。


 必殺…そう、必殺の矢とはまさにこの事であった。

 横への回避など無意味。

 たとえ後方へ飛び退いたとしても、確実に敵を仕留める一撃であった。

 射られた相手がグリスでさえなければ…。


 グリスは柳月りゅうげつを応用して、渾身の矢を受け流す体勢をとった。


 しかし今回は横に流すのではない。

 少しでも横にずらそうとすれば、そこから完全に躱す事はできずに横腹に風穴が開けられてしまうだろう。


 受け流す先は胸元だ。

 そして細心の注意を払うのは武器を破壊されぬ事。


 普通に受け止めれば簡単にそれを成す程の威力が、この矢には宿っている。

 衝突の瞬間から胸元に至るまでに、マチェットが耐えられるところまで威力を殺す事ができれば…。


 グリスの全神経が、受けの構えを取るマチェットと両手に向けられる。

 脳裏を過るのはシュバルツとの修練の日々。

 そして双月を習得した日に、満面の笑みと共に手渡された業物のマチェット。


「ぐ…がぁぁァァアァア!」


 凄まじい衝撃が、完全にグリスの全身を捕らえた。

 それは先程とは比べ物にならない捕縛力。

 横に流れ出るなど選択肢にもなり得ない。


 軋みながらも何とかマチェットは耐える。

 渾身の矢はまるで意思でもあるかのように身をくねらせ、隙あらば横に逸れてグリスの横腹を食い破ろうとしている。


 それを両手で絶妙にコントロールしながら、グリスは後方へと吹き飛ばされていく。


 大広間の中央付近にまでグリスを体ごと吹き飛ばした渾身の矢は、さすがに威力を落とした。

 その変化を見逃すグリスではない。


 すぐさま柳月にて衝撃を流し、渾身の矢を斜め後方へと逸らして躱した。


 矢の追撃が着地の瞬間を狙って迫って来る。

 しかし必殺の矢を防がれた事に動揺しているのであろうか。

 少しだけ精度の荒いものであった。


 それを退がりながらグリスは躱した。

 その最中、ふと感じたのは両腕から伝わってくる違和感。


 無理して渾身矢の衝撃を抑えた代償であろう。マチェットを握れてはいるが、両腕に全く感覚が無かった。


 見れば刀身がボロボロにひび割れている。

 シュバルツから貰ったこの業物のマチェットでなかったら、絶命は避けられなかったであろう。

 そう考えた時、グリスの全身に悪寒が走った。


 マチェットに視線を落とした一瞬の隙を突いて、謎の物体がグリスの眉間へと迫っていたのである。

 それは全体が漆黒に塗られており、形状も通常のものより細い一本の矢であった。


 これはカルマンが確実に相手を仕留めるべき時にだけ使用する矢。

 この矢は羽の如き軽さと、鋼以上の硬度を兼ね備えるミスリルで造られている。


 それは想像を絶する速度と、殺傷力を繰り出す事が可能となる矢であった。


 ここまでの流れの中でカルマンの矢の性質と癖を掴みかけていたグリスの直感は、突然加えられた大きな変化に完全に虚を突かれる形となった。


「しまっ…」


 迫る何かを察した時には、すでに手遅れであった。

 回避の意思が体を動かす前に、ミスリルの矢はグリスの眉間へと迫る。


 恐るべきは渾身矢を防がれて動揺したのにも関わらず、このタイミングで隠し球を放ったカルマンの才であろうか。


 だが次の瞬間、大広間に大きな金属音が鳴り響いた。


「なにっ!」


 カルマンの口から思わず驚きの声が漏れ出た。

 それもそのはず…。

 グリスの眉間へ放ったミスリルの矢が、金属音など発する訳がないのだから。


「明かりをつけろ!敵が有利となる状況下で、これ以上戦い続ける意味もあるまい。」


 部屋の中央付近から声が発せられると、数人の暗殺者が大広間に侵入し明かりを灯し始めた。


 カルマンは動けない。

 声がした方から注意を逸らす時、それが自分の命が終わる時でもある事を本能が告げていたから。


 灯された複数の明かりが大広間を照らすと、ミスリルの矢は中央付近にいたグリスの足元に落ちており、真っ二つに斬られていた。


 その手前には長く大きな刃物を、両手で垂下させるように構えた謎の人物が立っている。


「大太刀だと?まさか…そんな大物であの矢を斬り落としたというのか!」


 カルマンが動揺を隠そうともせずに狼狽えている。

 そんな事できる人間がいるはずが無い。

 そんな心の声が聞こえてくる様であった。


「グリスをここまで追い詰めるとは…。世界には何処に傑物が隠れているのか分からぬものよ。だからこそ、この世は面白いのだがな。」


 謎の人物が不敵に笑うと、グリスがよろめきながらも立ち上がった。


「申し訳ありません。助かりました。まさかここまでの才を秘めているとは…。」


「良い。お前はシュバルツの最高傑作であるのと同時に、俺の作品でもある。新しい可能性を秘めたお前を、こんなところで死なすのは余りにも惜しいからな。」


「し、しかし今一度…。もう一度だけ私に任せて頂けないでしょうか?このまま引き退っては…」

「もう…いい!」


 グリスの言葉を遮って、謎の人物の闘気が周囲に放たれた。

 いつの間にか近寄って来ていたシュバルツも何か言おうとしていたが、一瞬で口を閉じた。


「お前達が何を考えているのかは分からないが、何であろうと俺の仕事を邪魔するのなら全員ここで死んでもらうぞ!」


 薄く細められた眼光と共に、次は死神そのものを錯覚させる殺気が放たれた。


 それはカルマンにだけ向けられたものではない。

 この場にいる全ての者に向けられた、明らかなる殺意であった。


 誰も動かない。

 …いや、動けない。


 全員が蛇に睨まれた蛙とはこの様な状態なのかという事を、身を以て体験していた。


「さて…。事前に聞いていた情報と照らし合わせると、お前が暗部頭のカルマンだな?」


 謎の人物が問いかけるが、カルマンはそれに答えない。


「ふふっ…。そんなに怖がらなくても良い。もう遊んでいる時間は無いのだ。悪いがすぐに死んでもらうぞ。」


 言い終わるのと同時に謎の人物の姿が残像となり、殺気の塊がカルマンの目の前に飛び込んで来た。


「なっ!」


 カルマンは何も考えずに、とにかく横に飛び退いた。

 あれだけ頑として死守していた扉の前を、簡単に明け渡してしまったのである。


 それほどの斬撃があり得ない速度に乗せられて、カルマンの首元目がけて迫って来たのである。


 見れば大扉が一刀にて、袈裟斬りに両断されていた。

 それは決して暗殺者が放てる一撃ではない。


 明らかに熟達した剣士の放つ一撃。

 カルマンも初めて目にする、達人の域を超えた者が放つ一撃であった。


 謎の人物は流れるように態勢を戻し、カルマンに向き直った。


「良い反応だ。しかし、これはどうだ?」


 言い終わるのと同時に、またしても謎の人物の姿がブレる。

 そこから飛び出してくる殺気の塊。


 カルマンの目の前で床の一部が窪んだ。

 それが相手の震脚によるものであると、カルマンは瞬時に察知した。


 その直後、目前に繰り出されたのは突き。

 寸分のブレも無く完全に制御された一閃は恐怖を感じるどころか、むしろその美しさに感動を覚えるほどであった。


 カルマンは中腰の体勢で後退し回避を試みた。

 しかし刹那の思考さえも追い越す速度で、大太刀の切っ尖が眉間へと迫る。


 尻餅をつき頬を裂かれながらも、カルマンは大太刀をかろうじて躱した。

 しかし安堵したのも束の間。

 次の瞬間には刀身が残像を残し、新たなる突きが既に繰り出されていた。


 カルマンの脳裏にこれまでの日々が走馬灯の様に去来する。

 その中で特に大きな姿で浮かんできたのは、レオハルトにクラークとターレス。

 そしてエムロードの姿であった。


 大広間にまたしても大きな金属音が鳴り響いた。

 大太刀の切っ尖はカルマンに届いておらず、斜め上を見上げている。


 凡人には反応さえもできない大太刀の閃めき。

 その軌道を狂わせたのは、大型のハルバートであった。


「チッ!やはり時間をかけ過ぎたか…。」


 思わず舌打ちした謎の人物の前では、ラーズ帝国近衛騎士団団長クラークが大太刀を打ち上げる形で受け止めていた。


 よく見れば大きく息を乱している。

 おそらく異常な速度での移動を繰り返して、此処まで来たのであろう。


「ハァ!」


 クラークがハルバートを強引に振り切る。

 体ごと持ち上げられそうになった謎の人物は一旦退がって距離を取り、そして構え直した。


 すると真っ二つに切り開かれた北の大扉の奥から、複数の足音が聞こえて来た。


 扉の残骸が蹴り飛ばされ、大広間に十数名の近衛騎士が突入する。

 いずれも皇帝の身辺警護を任せられている精鋭中の精鋭であった。


 すぐに陣形を整えると、最後にゆっくりと入って来た人物が口を開いた。


「皇城にまで予の命を狙って来るとはな…。執念とは実に恐ろしいものだな、シュバルツよ。」


 それはラーズ帝国六十八代皇帝レオハルト・ディ・ラーズであった。


 その顔が見えた瞬間、謎の人物から殺気が放たれた。

 だが何故かシュバルツもその殺気に反応を見せる。


 しかし次の瞬間には誰も動かなかった。

 何故なら今まで誰も近づくことのなかった西側の大扉が、ゆっくりと音を立てながら開いたのだから。


 そこから最初に顔を見せたのは、ラーズ帝国宰相オブスクーロ・レイ・サーペント。

 澄まし顔ではあるが、不機嫌さが滲み出ている感じでもある。


 そしてその私兵五十人が、大広間へ気怠そうにノロノロと入って来た。

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