第4話

「すみません。シキさん・・・ですよね?」


「はい。そうですが。どうして俺の名前を知っているんですか?」


「あのー募集用紙に書かれていたのと、高橋さんからもらった紙、この世界に来る人欄に乗っていてそれで・・・まったく同じ名前の人がいて・・・」


今から思うと全部あの高橋のせいで。


「あ、うん・・・自己紹介してなかったですね、えっと一ノ瀬 紫樹って言います、よろしくお願いします」


人間第一印象でその後の接し方が変わってくるという、高校の失敗を踏まえ質問サイトで聞いた替えがあったというものだ。

まだ仲間になると決まってない段階で入ることを前提のように話してしまった。

突然のことで驚いたのかは知らないがする顔を赤く染め話し始めた。


「私は玉木 雪って言います」


お互い目を合わせないようにした。

しばらくして意を決し目を合わせた。

彼女は黒髪のショートカットで、綺麗と言うよりは都会で住んでいるかわいい女子高生、普段から大人しそうな見た目だった、ただ気になったのは彼女の服装の軍服ワンピースだった。

まぁ可愛いからいいんだけど・・・この子妹キャラだわ・・・

なぜだろう、この世界の人とは普通にしゃべれるのになぜか、リアルの人とはしゃべれない。


「えっと、これから、なんて呼べばいいですか?」


彼女もようやく俺の目を見始め俺の質問に頭を抱え悩み始めた。


一分後


「えーっと、じゃあユキでいいですよ、それに敬語もいいです。これからよろしくお願いします」


あ―――――まともだ……


いきなり名前で呼ぶのは気が引けるが、本人がいいといっているので俺はあまりその事を考えないことにした。


「じゃあユキよろしく、唐突で悪いんだが職業はなんなんだ?」


「アーチャーです。荒事は苦手なので。援護系しか選べなかったんです」


おぉーなるほど、高橋さんもちゃんとゲームをやっている人を選んだのか。

ん?じゃあなぜ軍服ワンピースなんだ?

素朴の疑問はひとつ残したがそのほかのことについて一人納得して一人でうなずいていた。

ユキを見るとさっきからずっとチラチラとコハクを見ていた。


「あのー・・・その人は?」


ユキが見るほうにはコハクがいた、なぜだろコハクは毎度ながら本を読んでいた。


「俺の助手(お荷物)の、コハクだ」


俺達を見るやするとユキは耳を赤くして、急に滑舌が悪くなりながらもさっきよりも速いスピードで質問してきた。


「え、二人は、付き合っているんですか?」


ん?これもしかして…俺に一目ぼれした……いや、ないな。

彼女いない歴年齢の俺が初対面の人に告白される確立なんて、新宿で五十歳の同姓のカップルを探すくらいの確立だろ。

しかし、どこをどう見たらそうなるのかが分からないが、慌てて否定した。

なぜ慌てて否定する必要があったのかわからなかったが。


「ち、違う。付き合ってなんかない」


するとどうでもいいとき人の話を聞いているコハクが、あざ笑った。


「ぷぷ、シキおもしろーい、ツンデレなんですか?」


「うるさい」


そのくだらないやり取りを見ていたユキは少し微笑んだ。


「お二人とも仲がいいですね?」


「「・・・・・」」


なぜだろう俺とコハクは言い返さなかった、一番に言い返す俺でも言い返せなかった不思議だ。


「そういえばシキ君は今何歳ですか?」


さっきの話から大分脱線した。


「俺は今十六。ユキは何歳なんだ?」


「私は十五歳です」


とても俺と一歳差には見えなかった、てか願うことならこんな妹が欲しかった・・・


「あ、すいません立ち話しさせてしまい、座りますか?」


「あ、そうだな・・・」


ギルド内のテーブルに座ると俺はコハクとユキを見る形になった。

気まずかった、感覚で言うと合コンで大してイケメンでもないのに、しつこいナンパして次の合コンとき。

周囲は話しているのに自分だけドリンクを注文する係りみたいなポジションだった。

実際合コンには行ったことはないが・・・。

しばらく沈黙が続いた。

するとこの沈黙の中コハクだけが口を開け俺から見て左となりのユキに質問し始めた。


「ユキはレベルいくつなの?」


それを持っていたかの用に手に持っていた冒険者カードを見て答えた。


「レベルは五レベで武器も五です、シキ君とコハクちゃんはどのぐらいですか?」


まってよアーチャ・・・


「ユキ?一つ聞くぞ・・・始めの武器選択のとき何を選んだ・・・・」


「職業のアーチャーを貰いました」


ん?

コハクの方を見ると目線を合わせないように隣に座っていたおじいさんをガン見していた。


「ちょっと良いか?」


席を立ち上がりコハクの手を引っ張り外へ連れ出した。

そんな光景を見ていたユキはただ呆然としていた。

ギルドの外に出ると細い路地に入り壁ドンした。


「おい、十秒間祈る時間をくれてやる」


するといつもどおり陽気な感じで俺の肩を叩いた。


「シキなに言っているのよ、バカなこと言わないでよ」


「おい、なんでユキは武器選択のときあんな立派なものを貰えて、俺は鉄の剣なんだ?答えてみろ」


目を泳がせてわからないフリをしていたが段々とコハクは自分で自分を追い込んで行った。


「えーっと、ですね、私はユキに武器を上げたこともありません、だからたぶん渡した人は他にいると思います以上です!」


言い切りやがったこいつ!

違和感が出てきた、いつものコハクなら適当の言い訳をするのだが今日はあいまいな形で終わるのではなくはっきりと言ったことに。


「あぁ、わかったよ、疑ってごめん・・・」


言いながら徐々にコハクとの距離を遠ざけユキのもとに戻った。


「あ、おかえりなさい、二人とも・・・なんかありました?」


「いや何も・・・」


やっぱり気のせいか。

席に座りまたはなしの続きになった。


「コハクちゃんのレベルは?」


そう聞かれると俺は下を見たがコハクが全部言った。


「私は三レベ武器もね。シキは三レベで武器が」


咄嗟に口を押えたが既に遅かった。


「え、シキ君の武器のレベは?」


その話題を切り出されて俺はなにも言えなくなり黙りこんだ。

しかしそんなことお構いなしのコハクは容赦なくダメージを与えてくる。


「シキはね・・・武器は耐久度が弱くてほとんど一回戦えば壊れる代物なのよ、始めの武器選択のときにね、もしかして伝説の剣かもしれないからって一か八かの鉄の剣を選んでそれで・・・」


こいつでっち上げのこと話やがって、昨晩お前が俺の剣で遊んでいて破壊したんだろ。

お蔭様でまた一からリスタートだよ。


「え、でも外せないの?」


「外せません一生・・・たしかに伝説の剣になるかもしれませんがそれを当てる確立は

砂漠でビーズを探す確立と同じです」


それもう絶対不可能じゃん。


今日はじめて知った、てっきり俺は砂漠で人間を探すくらいの確立だと思いこんでいた。


「まぁこれから強くなりましょう」


コハクとは違いユキは優しく俺を励ましてくれる。


「これからどうします?」


「クエストやるか?」


大体パーティを組んだらやることと考えて出てきたのはクエストだ。

今の俺たちで勝てるかの問題だが。

いまのままでも行っても勝つことは、たぶん出来ると思う・・・・だが安全性ではセイカがいたほうがいい。

しかし毎度毎度呼ぶとセイカに負担がかかるからやっぱ三人で行ったほうがいいのか。

複雑そうに発言するとユキは俺の意見に乗った。


「そうですね」


その話題が一旦終了しようと矢先隣で一瞬のうちに寝ていたコハクが起きた。


「あ、コハクちゃんおはよう」


コハクの寝起きはいつも大人しい、このときだけはコハクのことが可愛いと思えるときだ。

すると寝ていてたぶん途切れ途切れで聞いていた話を話し始めた。


「あ、シキクエストはやらないの?」


「今言っただろうが」


このバカのめんどくさいところは話を途切れ途切れで聞いていて、その話に乗ろうと喋るとややこしくなって一から説明しなおすことだ。


「クエスト探しに行きますか?」


クエストカウンターの掲示板を見に行った。

報酬がいいのは結構ある、しかし今の戦力だと挑んだところで目に見えている。

「はぁ、なんかいいクエストあるかな」

見ていると一つのクエストが俺の目に入った。


「星二 屋敷にいるスケルトンの群れの討伐か、これだったら俺たちでも勝てそうなクエストだな」


「シキ君それ何?」


右隣で探していたユキが覗き込んできた。

こんな至近距離で美少女が・・・


「クエストのモンスターはなにですか?」


「あぁ、スケルトンの群れ討伐だ」


そう言うとユキはすごくうれしそう顔をしながらその場で飛び跳ねた。


「え、本当にスケルトンですか?」


「あぁ、そうだがなにかあるのか?」


さっきから思っていた俺の危険信号がまた反応したがその場の空気で気にしなかった、そんな俺の苦笑いを見たユキは冷静に戻りしゃべった。


「いいえなんでも・・・」


さっきまで感じていた危険信号なくなったが妙な違和感がしたがそんなにも気にしなかった。

「セイカこれ予約ってできるか?」


立った状態で俺は募集用紙を渡した。


「はいできますよ」


「じゃあよろしく頼む」


クエストを予約して振り向くとコハクは冒険者に囲まれていた。


やっぱり・・・


ユキと別れ、冒険者に囲まれているコハクを連れて部屋に戻った。


「おい、明後日クエストに行くぞ、文句は言うなよ。お前が何言おうがクエストには行くぞ。このままずっとここで暮らすわけには行かないし、そのためにもやる」


「え、でもセイカは来るんでしょ?だったら安心よ」


一人安心しているコハクに真実を告げた。


「セイカは来ないぞ、その代わりユキが来る」


言うとコハクはパット立ちドアを開けどこかに行こうとした。


「おい!どこ行くんだよ⁉」


「離してシキ、取り消しに行くから。だから、おねがいこの手を離して!」


後ろに重心を傾けて「てこの原理」と同様にし手を強く握ったまま離さなかった。


「離してと言って、離すバカがいるか!無駄だ!今から取り消しはできない予約したから、明後日にはクエストに行かなきゃダメなんだ、それにセイカにも休むことを伝えたから取り消しはできない!」


このバカ、どんだけ力強いだよ!

しばらくしてようやくコハクの力が抜けてきた。


「はぁ大丈夫だ。お前は最前線じゃあないしお前の隣はユキがいるから大丈夫だ」


スクールカンセラーのように、落ち着かせた。気づくともう二十三時になっていた。


「おい、お前はなんでそんなにも俺について来るんだ?」


背中を見せ少し照れくさそうに言った。


「シキが昔会った人に似ているからか・・・でも私にもわからない」


「・・・・・」


その答えを聞き何も答えず目を閉じ眠りに入った。

目が覚めると珍しくコハクが俺より先に起きていた。

しかしいきなりカーテンを開けて起こされるのは結構辛いな。


「おはようシキ」


いつものあいつからは考えられないぐらい普通の発言だ。

ん?待てよ、こいつ・・・


「態度を改めてもクエストには行くぞ」


これしか考えられなかった、今までの付き合い上コハクの口調が変わることは大体なにかの目的があるときだけだ。

図星だったのか体をビクッとしたあと、泣き出した。


「だってだって、本当に心配なんだもん!それにこの間のコウモリのときだって!」


コウモリの件を言われると耳が痛い。

だがここで反論しなければ余計こいつを甘やかすことになる。


「おまえ最前線で戦う俺の気持ちになってみろよ!いくら回復させてくれるお前がいても、いやお前だと逆に心配なんだよ!」


寝起きの俺はいつも以上にボロクソに言うと俺の襟元を持ち左右に揺さぶった。


「わ、わあぁぁぁぁぁぁっ――‼」


「ゆ、揺らすな!」


待ち合わせの場所に向かう道中。


「ねぇ、シキ作戦は?シキのことだから考えているでしょ?」


「俺の名前と作戦を足すな、某ロボットアニメのヤ○マ作戦と一緒になるだろうが、せめて言うなら「シキ、作戦は?」だ・・・あぁもちろん考えてある」


くだらないプライドだ。


「明日は俺が前で敵の攻撃を防ぐからお前は俺にヒールをかけて、そしてユキが後方から援護だ、簡単だろ」


「わかった、つまり私はシキにずっとヒールをかければいいのね」


まぁ役割分担的にはだいたいはあっている。


「そういうこと」


銭湯に着くとそこには教官とレストランのおっさんがいた意外な組み合わせだ。

おっさんがいたのに気づきとなりにいたコハクに帰るように言おうと振り向くと、そこにはさっきまでいたはずのコハクが消えていた。

本当に自分の身が危険のとき前もってわかるというが、この状況もその中に入るとは。

まぁ実際好都合だ、この俺が逃げるときドジを踏むとは考えがたい。

おとなしく来た道を引き返そうとすると教官が俺に気づき距離を詰めより肩をポンと叩かれる。


「なんでそこにいるんだ?」


「あ・・・奇遇ですね、教官とここで会うのは」


襟元を掴まれペットのように風呂に連れてこられた。

ドアを開けるといち早く風呂に入っていたおっさんと合流した。俺はおっさんと顔と会わせないように顔を伏せた。


「兄貴もここに来ていたんですね」


ん?兄貴・・・え?

何度も何度も教官とおっさんの顔を見るが兄弟の雰囲気は微塵も感じなかった。

驚きを隠せなかった、だがこの二人に初めて合ったときの感覚は確かに似ていた。


「あ、そうかまだお前には言っていなかったな、俺には双子の兄がいるんだよ、それがあの人」


「え、でも似ていない」


思わず俺は失礼な言葉が口に出してしまった。


「あぁ、俺たちは二卵性双生児だからだよ」

言われ二人の顔を比べると目元が少し同じなことを気がついた。


「久しぶりだな!ガキ」


おっさんに呼ばれた瞬間俺の緩んでいた筋肉が一気に引き引き締まった。


「は、はい」


毎回こうだ、このおっさんにしゃべりかけられると声のトーンが無駄に高くなる。

俺とおっさんが話していると、教官は不思議そうな目で俺たちを見ていた。


「兄貴とは知り合いなのか?」


「あぁそうだ」


相変わらずのやる気が感じられない返事だ。

息が苦しい、それはそうだゴリゴリのプロレスラーと等しい人がが二人いるのだから。

終始動揺していると教官は先に浴槽に入った、教官の行動に釣られるように湯船に入った。

なぜだろうおっさんに睨まれている。


「お前らは知り合いか?」


「バイトの先輩後輩だ」


この時間が早く終わってくれることを祈って湯船に浸かる。

三分たったぐらいだろうか湯船を出ようとすると、右にいたおっさんが手を握られ小声で。


「お前いま出たらどうなるか、わかるよな?」


浴槽に浸かり筋肉が緩んだにも関わらず俺の体の筋肉は下から順番に硬直していった。

いや硬直ではない洗脳の間違いだ。

おとなしく湯船に浸かったそんな俺たちを見て、なにを思ったのか教官は笑い始めた。


「二人は仲がいいですね」


は⁉喧嘩売っているのか?

笑みをこぼしながら教官が言うと、おっさんは不気味な笑顔で答え始めた。


「俺たちはすごく仲がいいぜ」


おっさんは言いながら俺の肩に手を回し、俺はどけようと必死に抵抗したがおっさんはまたもや洗脳してきた。


「いい加減おとなしくしろ、お湯が温くなるだろうがお前は子供か?」


逆だよ。あんたのほうが子供だよ……どこのガキ大将だよ。


「は、はい・・・すいません」


これが格差社会か・・・


十分ぐらいたち俺に精神も体温も限界が来顔の横から汗が垂れてくる、この二人が出ないかぎり俺は出られないことは目に見えている。


五分後―――


マジで限界なんだけど、湯船は大丈夫だけどこのプレシャーがやばい。


「いつも何分入っているんですか?」


そっと教官の耳元で聞いた。


「そうだな、大体四十分ぐらいかな?」


気が遠くなりそうだ。

ふとさっきから一言もしゃべらないおっさんを見ると右を向くと、顔を真っ赤にさせ大仏のようにじっと座っていた。

生きているのか死んでいるのかすこし気になり肩を触れた瞬間おっさんの重心は左へと傾いていき俺の視界から消えた。


「大丈夫ですか!」


湯船から立ち上がり、倒れたおっさんの二の腕を教官と一緒に両サイド持ち、湯船から引きずり出した。

そしてひたすら肩を叩いたが一向に気づく様子がなかった。


「ハァ、またこれか・・・」


「また?」


「兄貴は風呂が苦手でな、湯船に入っていられる時間は約八分ぐらいなんだ、あとは俺がどうにかしとくから先に帰っときな」

念願のその言葉を聞き、心の中で喜びながらも感情を表に出さないように自然と。


「じゃあお言葉に甘えて」


お風呂から出ると開放感で俺の心がいっぱいになった。

急いで服を着て俺はユキと待合場所に行くため出るとそこにはさっき逃げたにも関わらず、いかにも機嫌が悪そうなコハクが腕を組んで男湯の暖簾の目のまでユキと一緒にいた。


「あ、お前さっきはよくも一人逃げやがって!」


コハクは怒りながら俺を指差し、ここに来るまでの経緯を話し始めた。


「確かに逃げたけど、その前に私言ったよね?ちょっと見たいもんがあるからさっき入っていてって」


記憶にございません・・・


「で、見終わってさっきまでの場所に行くとシキいないんだもん!でお風呂でユキと会って出たら、まだシキがいなかったからずっと待っていたのよ!」      

    

「あぁ、ごめん」


濡れた頭をタオルでざっと乾かし、謝罪をしたがそれでもコハクは腕を組みながらずっと俺と目を合わせてくれない。


「ごめんが軽い・・・もう一度」


「ごめんなさい」


逆効果だった・・・コハクはますます態度が高くなり、おまけに調子に乗り始めた。


「じゃあシキこれから私の事をコハクさんと言ってね」


あーわかった・・・こいつにはアメなんていらないわ、ムチだけでいいんだ・・・

どうしてアメとムチがいるかようやくわかった。


「おい・・・あまり調子に乗るなよ?おまえの服売るぞ」


ヤクザのようにキレ気味ではなく、ただ静かに怒りを前に出さないように俺が言うとコハクは半泣きながら俺の裾をしがみ付き腰を低くして謝ってきた。


「わああああっー!ごめんなさいシキ!私が調子に乗りすぎました、だから売らないでこれだけなのよ、私のチャームポイントは!」


ここまで来ると怒る気までなくなってくる、毎度毎度近くで泣かれこの都で俺のイメージがどんどん悪くなっていく。


「わかったから俺から離れろ」


そんな俺たちを見てユキは笑みをこぼした。


「ほんとに仲がいいですね・・・・・・・嫉妬しちゃうな・・・」


ユキは最後小さく何かを言ったがコハクの声で掻き消された。


しばらくしてようやく俺達はスケルトンが出ると言われる屋敷に向かった。


「ねぇ、シキその屋敷はここから近いの?」


セイカから貰った地図を見せようと思ったが。


「いや、お前スマホ持っているだろ。それで見ろよ」


今の今まで気づかなかったがこいつはじめからスマホ持っているんだから自分で確認しろよ。


「バッテリー切れ・・・」


え?バッテリー切れ、マジで?


「なんでバッテリーないんだよ!」


「しょうがないじゃない!コウモリのクエストのとき、落として故障したんだから!」


あ、あのときか―

それを言われると耳が痛い、確かに俺が一緒に行動していればスマホを落とさなくて済んだ、今回はこいつが百パーセント悪いわけではない。

罪悪感を感じながら、貰った地図をコハクに見せた。

何の反応も見せないで後ろで手を組み、一人先走っていった。


「あ、そう言えばユキにはまだ言っていなかったよな?」


俺がいきなりしゃべりかけて驚いたのか知らないが、ユキは一瞬体をビクッとなった。


「なんのことですか?」


昨日コハクに説明した作戦を即座に伝えた。

やっぱりコハクと違いユキは飲み込みが早い、あいつもこのぐらい飲み込みが早ければと思うとすこしがっかりする。


「わかりました。つまり私は後方から支援ですね」


昨日三十分かけてコハクに説明したのが嘘のようにユキはこの作戦すぐ理解した。

思わず心の中で思っていたことが口に出てしまった。


「そうだ、さすがユキだな、あのお荷物巫女と違って飲み込みが早いな」


言ったあと俺は自分が犯したミスに気づき俺はそっとコハクの方を見た。


「ん?シキどうしたの?なんか言った?」


「な・・・なんにもない」


何も無かったかのように、再びユキと話し始めるとコハクは少し怒りながらさっき言ったことについてしつこく聞いてきた。


「え、本当に」


「だからなんにもないって」


「本当?」


ため息を付きながら俺はコハクの言ったことをオウム返した。


「ハァ、本当」


「わかった、シキを信じるよ」


地味に痛いこと言うな・・・


そんなくだらない会話をしているとユキは俺の服の袖を引っ張りさっき説明したのにまた聞きなおしてきた。


「あの、シキさんさっきの作戦ですが後方からも攻撃はしていいんですよね?」


昨日と同じ感じでまた俺の中の危険信号が反応したが気にしなかった。


「あぁ、別にいいけどそれがどうした?」


俺の返事は少しぎこちなかった。


「い、いえ何もありません」


言ったあと俺は足元を見ると視界にユキの手がなぜかガッツポーズをしていた、俺は妙な危険信号がしたがユキがそんな危険なことをしないと信じた。

いや信じたかった。


「シキ、これじゃあない?」


コハクが指差した先には墓地の中で一つぽつんと古びた大きな洋館があった。

まだ墓地のなかに入っていないのに異様なオーラが漂ってきた。


「あぁ、ここだ・・・」


実際もっと普通の洋館だと思っていたがそうでもなかった、

だれもやらない理由がこれか・・・

話によると、このクエストは日没からしかできないと言われ、俺たちはこの洋館の中で夜まで待つことに。

洋館に入ると床の木は腐っており今にも崩れ落ちそうでギシギシと歩いただけで穴が出来そうだ。

唯一床がまともだったホールの中心に非難した。


「いまから日没まであと何時間なんだ?」

ユキに聞くと服をめくり自分の腕時計を見た。


「えーと、十三時間ですね」


「ありがとユキ・・・暇だな」


コハクは割り座の状態で胡坐を掻いている俺の服の袖を引っ張りきょとんとした顔で話しかけてきた。


「ねぇ、シキ シキ、暇だからしりとりしよ」

くだらねぇ・・・


そう思い俺はユキの方を見て寝転がった、ふとユキを見ると一人弓を両手でがっちりと持ち体操座りをしてスケルトンが来るのを、今か今かと待ち構えていた。

教官のこととか色々あったのかは知らないが、目を閉じると一気に眠気が襲う。

一瞬油断した瞬間眠気が俺を飲み込んだ。


寝ているとコハクの声が耳元から何度も何度も聞こえてきた。


「・・・きて、起きてシキ!シキ早く起きて!」


よっぽど疲れていたのか知らないが、眠気が覚めないまま目を何度もかいた。

ようやく視界のボヤケが取れ、周りを見るともう空は暗くここに来たときよりもいっそうオーラが違った。

後ろのユキを見ようと向くとゼロ距離にスケルトンがいた。

実際本物のスケルトンに会うと腰を抜かすものだ。

それだけではない古びた床からもスケルトンが湧き出てきた・・・俺たちは一瞬のうちにスケルトンの群れに周りを方位されていた。


「わあぁぁぁぁぁぁぁっー!」


パニック状態になり適当に剣を振った。

とりあえず自分の身を守ることだけを最優先に考え剣を振った・・・

するとたまたま俺の剣がスケルトンの胴体を真っ二つに切り裂いた、下半身はその場で活動が終了したが上半身は体を引きずらせながらも活動していた。

正直気持ち悪い。

そして俺の足に掴みこっちをずっと見てくる。

パニック状態になり何度も何度も踏んだ骨が砕けるまで踏んだ。

恐る恐る足元を見るとスケルトンの骨は見るも無残に砕けていた。


「ハァ、危なかった!こいつらの急所はたぶん頭だ!」


振り返るとそこにはとても一人では倒せない量のスケルトンがいた。


「おい、この量は無理だろう・・・」


「とにかく、戦ってシキ!大丈夫よ、たとえシキが死んでも私が復活させて上げるから!」


「おまえ、俺が死んだら次ぎはお前達の方に敵が来るんだぞ!」


事実を告げると死にたくないのか知らないがコハクは泣き出し俺の後ろに隠れた。


「おい!泣くなこの巫女!あと俺の後ろにいるな!」


「だって!だって!」


クソ邪魔だ・・・


スケルトンは一目散で最前線にいる俺に向かって走ってきた、後ろにいるコハクのせいで思い通りに体が動かず、さっき殺したスケルトンの残骸を踏み俺の重心は後ろへと傾いていく。

そして地面に尻を付きコハクもその場で腰を落とした。

それでも容赦なくスケルトンは俺たちに向かってきた。


―――ここでリタイアか、短い命だったな…せめて彼女を作っておきたかった。


手で頭を隠しもっとも助かりそうな手段に身を任せた、そのとき後ろにいるユキが気になり一瞬見るとユキの手には矢もなく、それに弓もなくなっていた・・・


はじまりは突然だった・・・

カチャという音と共に銃声が響き渡った・・・

俺たちの目の前にいたスケルトンたちも銃声と共に砕けっている。

後ろを振り返るとこれまで見たことがない笑顔で凶器染みまるでヤンデレのような顔をしたユキがたたずんでいた。

ユキの手元を見るとそこには銃が。


「AK‐47Ⅱ型、アサルトライフル………」


さっきから絶え間なく続いていた銃声はアサルトライフルの銃声だったことを俺ははじめて自覚した、

FPSをやっている人なら誰でもその形を見ればわかる、実際FPSを少しかやっていない俺でもわかったからだ。

唖然としていると銃声は止みユキは内ポケット換えの玉を出しすぐさまリロードした、そのときたまたまユキと目が合い笑顔で。


「シキ君これ・・・あ・げ・る・・・」


ユキが持ってきていたバックの中から銃を地面に滑らせ渡した。

渡されたもの折畳式短機関銃の元祖FMGだった、一度エアガンにはまったときに全財産で買った短機関銃がこれだったためよく覚えている。


「おまえ、これどこで!」


呆然としている俺はユキに質問した、するとユキはアサルトライフルを構えた。


「話はあとで・・・」


自分勝手だな・・・

ユキから渡された短機関銃をすぐさま展開し、立ち上がりトリガーを引くと反動と共に弾丸がスケルトンを貫通していく。


「ねぇシキ・・・大変そうなところ悪いんだけど、それ当たっている?」


ふとコハクに言われ弾道を見るたしかにあったっているが、ほとんどが壁にあったっていただけだった。


「だ、だってしょうがないだろう!こっちは初心者でそれに反動強よいし・・・」


そっと後ろを向くとユキは反動が強いアサルトライフルをいとも簡単を軽々扱っていた。

するとユキはポケットからまたなにを出した。


「シキ君・・・気をつけてね❤」


「え・・・」


ユキ手元には手榴弾があった、口で安全ピンを取り俺たちがいる方向向けて投げた。


「コハク伏せろ!」


投げた瞬間俺は自らの体でコハクを覆った。

手榴弾は綺麗な放物線を描きスケルトンの群れの中に落ちリバウンドし爆発した。

爆発は収まったかと見えたが、そこからが地獄だった。

次から次ぎえと爆発音が聞こえてきた、ユキが投げたのは一つだったはずそれに安全ピンを抜く音も聞こえていないのに四方八方から爆発音だけが聞こえてくる。

バカだろう!


目を覚ますと俺たちがいるところしか床は残ってなく、さっきまでいたスケルトンは一つたりとも残ってなかった。


「終わりました、もう最高!撃った時のあの瞬間、もう癖になっちゃうよ!やっぱり本物は最高❤」


一人勝利の余韻・・・いや快楽の間違いだろうか。

また何もしないうちに終わってしまっていた。


「ユ、ユキ?弓は?」


「あー弓ってこれですか?」

言いユキは指をパッチと鳴らすとさっきまでアサルトライフルだったものが、見る見るうちに弓に戻っていく


「私の固有スキルは「変化」と「増殖」ですから、いつもは「変化」を使って弓という形で置いています、「増殖」は弾を無限にするとか、さっきやった手榴弾も投げるときに使って増やしています・・・で「変化」を使えばこんなことも・・・」


ユキはさっきと同じように指を鳴らした、するとユキの体が光に包まれていく。

光がまぶしく目を腕でさえぎっていると次第に光が消えて行った。

改めて見るとそこにはコハクがユキに換わって立っていた、しかし横にはコハクがいる。俺も驚いていたがコハクも目の前に自分がいて唖然としていた。


「どうですか?シキ君、これが私の固有スキル「変化」生きているものでも変化できる能力、でもここまで行くと「変化」ではなく変装の間違いになるかな?」


か、かわいい・・・まぁもとはかわいいし、もっと気品があればかわいいのにな本物も…

顔を赤くしているとコハクは頬を膨らませてずっとこっちを見てきた。


「なんで顔赤くしてるのさ⁉」


「別に赤くはしていない」


俺たちの様子を見てユキは少し笑ったあと再び指を鳴らした。

指が鳴ると再びユキは光に包まれ、気がつくと元に戻っていた。


帰り道をテクテクと俺たちは帰った、コハクの機嫌も戻り俺たちは勝利の余韻に浸かっていた。


「しかし何であんなスキル持っていること、隠していたんだよ?」


頭に手を置き聞くとユキは少し照れながら説明した。


「いや、言うタイミングが無くてすいませんシキ君、昔から体が弱くてそれで家でFPSばっかりしていてそれでつい・・・」


あーありきたりな展開だな・・・

ギルドに着くたび取り巻きたちがコハクを囲った。

毎度のことで最近では気にさえしなくなった、囲まれているコハクを無視してクエストの報酬を貰いに向かった。


「お帰りなさい、シキさん、クエストはどうでした?」


「ユキが全部やってくれた」


「あ、そうなんですかまぁ、そんな日もあり

ますよ。それよりユキって?」


まだセイカには新しい仲間のことを言っていなかったことを思い出し、一人椅子に座っているユキを呼び紹介した。


「ユキですよろしくおねがいします」


ユキはさっきまで感じとは一転落ち着いた感じ挨拶をした。


「あ、こちらこそよろしくおねがいします」


今までコハクしかしゃべっていなかったセイカは、まともの人としゃべり慌てながら挨拶を返した。


「あ、シキ君、報酬はもらったんですか?」


セイカも俺も一瞬報酬のことを忘れていたことに覚えだし、俺はセイカにクエストの報酬をもらった。ユキは目を輝かせお金を見た。


「どうしたんだユキ?金がどうしたか?」


「いや、私はお金が入る方法がクエストしかないので、だからつい」


苦笑いしながらセイカはこちらを見てくる、このあとの展開はだいたいわかる。


「ハァ、セイカここって今人って足りているか?」


「まぁ、いま少し足りていませんね?」


机の下にある従業員リストを見て答えた。


「じゃあ、ユキをここで働かせもいいか?」


「別にいいですけど、ユキさんは?」


いつからハローワークになったんだ俺は……

って言っても最近から仕事を紹介することが多くなったことは事実だ。

一人脳内で考えているとユキはぎこちなさはあったが答えた。


「あ、働きます・・・・これからよろしきおねがいします!シキ君、セイカさん」


時間は立ち俺たちはユキと別れ急ぎ足で部屋に戻った。

部屋に着くとコハクは布団の上に寝転がり枕に顔を埋めた、たまたまコハクのおなかを見えた。


「お前、最近太ったか?」


ビクッと体が震え顔を真っ赤にしながら怒った、俺の目がけて枕を投げてくる。


「女の子に何てこと言うのよ!」


飛んできた枕を意図も簡単に交わし、さらに言葉を続けた。


「女の子って自覚があるなら、そんなに食うなよ」


コハクは俺の襟元を両手で持ち揺さぶった。


「シ、シキのバカ――――――⁉」


そういい残すと勢いよくドアを開け部屋から出て行った。


「おい、ちょ待ってよ!」


続くように俺も部屋から飛び出し急いで階段を下った。

一階に降りるとユキとセイカは俺とコハクを見るたび呆然としていた。


「おい、待てよ。セイカ悪いけど追ってくれないか、たぶん俺が行くとまたややこしくなる」


冒険者の悩みをよく聞いているセイカにこそ頼んだ、まぁ実際のことを言うならこれ以上話をややこしくしたくなかったのもある。

ともあれきっとコハクのこともどうにかしてくれると思ったからだ。


「まったくあのお荷物は。これだから困るんだよなぁ」


机に手を置き顔を支えてそう言うとユキはクスッと笑い、体を前に寝そべった。


「でもいつも仲良いじゃないですか。兄妹みたいですし」


兄妹かまぁこんな妹がいたらめんどくさいかもな・・・でも楽しいかもしれない。

完全には否定は出来なかった。

しばらくするとセイカはコハクの頭を何度も撫でゆっくりと戻ってきた。

「・・・おかえり」


少しまだ怒っていたコハクに優しく言うと目をキラキラさせた。


「ただいま・・・」


四人でしばらく話していたが次第にコハクは俺の肩を枕にして寝てしまっていた。

次の日からユキが早速仕事に就いた。

今日も俺の朝は早い。

朝からギルドに届いた荷物の整理や配達だ。

台車に荷物を置き都を歩き周った。


「これでようやく最後か・・・」


思わずため息が漏れそうになる、基本肉体労働のため多少筋肉はついたはずだが実際のところはまだまだだ。

どこまで行ったのだろうか、まったく見たことのない道に出た。

悪い癖だ、周りを見渡し知り合いがいないことを確認すると、コーヒー片手に空を見上げた。

ふと流れる人ごみを見るとその人ごみの中にはユキがいた、しかしながら違和感を感じるいつもはスカートを履いているが今日は太ももが出るショートパンツだ。

うん、ここの点だけ見たら俺変態かもな。

それに加えユキの仕事は事務仕事だ、通常こんな遠いところまで来るのはおかしい。

考えられることは二つ。

ただ単に仕事でこっちに来ているか、教官に頼まれ俺を探しに着ているか。

とりあえずここは見知らぬ人のフリを・・・


「シキ!どこに行った!」


そう遠くない場所から毎日聞いている教官の声が聞こえた、正解は二番目だったとは。

ユキをこのまま放置した場合、俺がサボっていることがバレる・・・ここは。

通り去ろうとしたユキを強引に手を掴み、路地裏へと逃げた。


「なんとか巻いたか・・・ユキこのことは他言無用で・・・・」


「誰ですか?あなた・・・通報しますよ?」


俺に疑いの目をひたすら向けてくる、普段ならこんな目で見ることはまずない。

そんなことよりも今ユキは確かに「誰ですか」と俺に言った。


「なに言っているんだよユキ、俺だよ俺シキだって・・・」


一歩前に出るとユキも釣られて一歩下がる。

「しき?それがあなたの名前なんですか?身に覚えがありません、それにユキって・・・」


「ようやく見つけましたよ!シキ君!」

え・・・・

後ろから聞こえてきたのはユキの声だった、だが俺の目の前にもユキがいる。


「え・・・・ゆ、ユキが二人⁉」


何度も何度も二人を見返す、あとから来たユキはスカートを履いており、元からいたユキはショートパンツを履いている。

「お姉ちゃん!」


「お・・・・姉・・・・ちゃん?」


それを言ったのは始めに連れて来たユキだった、さっきまでとの反抗的な態度は撃って違って、いつものユキの声と瓜二つだった。


「どうしてここにいるのシズク!」


え・・・シズク、誰?

シズクはユキの元へすぐに後ろに隠れ、ユキの脇の変から顔を出し軽蔑した目で俺をまだ見てくる。


「お姉ちゃん・・・この人僕に痴漢したよ・・・」


「痴漢なんてしてないわ!・・・・ぼ、ぼく?」


脳内パニック状態中、一体何が起こっているか検討も着かない。

だがこのままだと痴漢未遂で捕まるのは確実だ。


「シキ君はそんなことはしないよ・・・ごめんなさいうちの弟がややこしい勘違いをして」


「別に気にしてないからいいよ・・・・・・弟?」


ユキは確かに弟と言った、妹ではなく弟と。

「紹介が遅れました、この子は私の弟です、こう見えても立派な男の子ですよ」


「さっきは勘違いしてしまってすいません、玉木 雫と言います」


ん?これってよくアニメでいる男の娘という奴か・・・・そうだよな。

「あぁこちらこそ間違えてごめん・・・」

なんだろう同じ男性なのにこの空気、女性二の男性一にしか感じない。


「「「・・・・・」」」


空気が重い、なんでだろう俺が痴漢未遂をしたからか。


「シキ!お前ようやく見つけたぞ・・・サボりか?」


すぐ後ろからいつも聞き覚えがある声がしてくる、後ろを振り向いたら殺されることは確実だ。

ポンと手を肩に置かれ襟元を掴まれ引きずられその場を去った。

ドンマイそうな顔で見てくるユキとは裏腹にシズクは俺が去ることがうれしいのか笑みを零しながら見送った。


勤務時間は終わりギルドの椅子に腰を掛けた、あの後ギルドに戻り教官に愛のムチと名目の説教をみっちり受け今日はいつも以上にお疲れだ。


「シキ君ごめんなさい、シズクが迷惑をして・・・」


説教されたのを知ってか頭を下げ謝りに来る、だが当の本人とは言えばここにはいない。

なにも答えない俺に知ってか知らずか話を続けた。


「シズクなら今他の都でクエストをやってますよ・・・ごめんなさい呼び止めるべきでした」


「いつもあの子はそう、一人でむっちゃして・・・シズクがこのゲームの世界に来たのも私のせいなんです・・・ダメだな私、なんにも出来ないお姉ちゃんだ」


頭をひたすら下げながら自分を責め続けるユキに段々とイラついてきた。


「あいつがそうしたいと思ったんならいいだろうが、それに何か困ったことがあっても相談できる奴ならそこにいるだろうが」


顎で教えた方向にはたった今仕事が終わったのだろうか、手を振りながらこちらに向かってくるコハクがいた。


「・・・・そ、そうですね、私も好き放題やります!」


最後に笑顔を見せた。











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