五二月八日

 何にも楽しいことがないため、USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)に行ったことにしようと思った。まず電車に乗る。わたしの住まいは大阪、阪急沿線である。最寄りの駅から電車にのって、梅田に向かう。梅田に到着したら、「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン行き」と書かれている電車に乗り、しばらく乗っていると到着である。

 専用の駅なので、到着するとそこがすでにゲート前だ。券売機があって、大人の券を購入する。三八〇〇円。なかなか高いがいたしかたない。酒を一晩我慢すればよろしい。券売機から出てくるキラキラしたチケットをゲートのお姉さんに見せるとバーコードのかかれた腕輪をもらえるので、装着する。施設内ではこのバーコードで支払いを全てまかなうことになる。

 ゲートをくぐるとでかい着ぐるみが待ち構えており、おそらく右から鳥、鳥、鳥、ウサギ、鳥。鳥が多いなと思いながら通り過ぎようとしたところ、着ていたパーカーのフード部分を力任せに引っ張られた。首がしまりウググと唸ってなんとか振り返ったところ、犯人は鳥の一匹のようである。離しなさいよときつく言ったところ、鳥は着ぐるみの首部分から人間の手をだした。その手には撮ったその場で写真が楽しめるカメラ「チェキ」が握られている。なんでも写真をとろうよと言いたいらしい。フードを離してくれる様子もないため、仕方ないかと写真をとってやることにした。フードを握られたまま鳥の隣に立ったところ、他の着ぐるみ四体がこちらに駆け寄ってくる。写真をとってくれるのかしらんと思うが違ったらしく、全員が集合しポーズをきめた。鳥はわたしに<チェキ>を渡してフードを離し、写真を撮れというジェスチャーをする。そういうことかとわたしは集合から離れ、ポーズをきめている彼ら五体を写真におさめた。出てきた写真をふりながら着ぐるみに近づき渡そうとしたところ、またしても鳥にフードをひっつかまれる。なんなんだときつめに抵抗したところ、片てのひらをわたしの目の前に出した。意図がわからずきょとんとしていたら先ほどの写真をズポンのポケットに無理やりねじこまれる。その上で再度片てのひらをずいと出す。ははあ、これはこの写真を買い取れと言っているのだなと思い、わたしはフードを掴まれたまま財布を出す。鳥はそれを取り上げてウサギにヒョイと投げ渡し、ウサギは財布の中身を確認したのち万札を二枚抜き取ってわたしに財布を投げ返す。投げられた財布をわたしがキャッチするところを確認した鳥は、フードから手を離してゲート前の立ち位置に戻っていった。気がつけば他の着ぐるみも周りにはおらず、わたしは二万円を抜かれた財布を持って佇んでいた。

 結局、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンに行ったことにしたところでわたしの悲惨さは変わらないし、楽しいことなんて何一つないのだ。

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