第二の星 4

 それはまだ深夜のことで、教会にいたすべての人間がシリウスの部屋に集まっていた。シリウスは難しい顔で目を閉じたまま、動かない。

 それを見ている皆が焦った顔をした。

 しかし、その中でも特に、ある青年だけが明らかに落ち着きをなくしていた。

 西レジスタンスから東レジスタンスへ寝返った青年、マルス・クレインだった。

 皆の中に緊張が走る中、シリウスが目を開けてため息をつくと、そわそわしていたマルスが、シリウスに食って掛かった。

「見つかったのか! 誘導は、できたのか?」

 そう言って、マルスはシリウスの肩を揺らした。

 シリウスは、その手をゆっくりどけると、静かに話し始めた。

「意識はつながったし、だいたいの場所は分かった。かなり無理していたから誘導したんだけど、途中で意識が途切れたんだ。ここからだいたい東に三キロ、そのあたりで切れた」

「東に三キロ! そんな場所に放り出したのか! なにをやっている!」

 マルスはシリウスの胸ぐらをつかんで叫んだ。神父やフォーラたちが止めに入る。

「無茶言うな。だったらあんたがやれよ。火星のシリンなら俺より力は強いはずだろ」

「それができたら、もうやっている!」

 そう吐き捨てて、マルスはシリウスから手を放した。そして、そのままどこかへ行くのか、部屋のドアを開けようとした。

「マルス君、どこへ行くんだ?」

 神父が問うと、マルスは少しいら立った声を出した。

「神父さん、冬用の車を借ります」

 そう言って、出て行ってしまった。

「マルス!」

 みんなが彼を止めるために外に出ようとした。しかし、シリウスがそれを止めた。

「今はマルスに任せるしかない。俺たちではもうあいつの位置は拾えないんだ。この星で、地球に媒体があるシリンにできることは、少ないんだよ」

 すると、メティスが少し何かを考えて、シリウスの肩を叩いた。

「シリウス、神父さん、僕らに他にできることはないのかな。僕らがこれで引き下がってしまったら、それこそ西の思うつぼだと思うんだ」

 神父は、その意見に少し考えて答えた。

「我々が西に屈しない、それを相手に伝えるには、今は、アース君の救出が不可欠。我々にできることは、マルス君を信じることだけだ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る