第二の星 3

 再び四面の部屋で目を覚ましたのは、それから半日経ってからだった。

 この部屋から外は見えないし、時計もない。しかし、この星の正確な時間は体に刻み込まれていた。

 相変わらず、外の様子が分からないし、何も聞こえない、何も見えない、何も感じない。そんな状況が続いていた。

 しかし、ここからは逃げなければならない。

 体は限界だった。しかし、その限界も超えていかないと、本当にこの星は滅びてしまう。なぜ、ジョゼフがそんなことをしようとしているのかは分からない。しかし、今はそんなことを考えている場合ではない。

 アースは、自分の腕を縛っている縄に意識を集中した。ずいぶん複雑な分子構造の物質だ。しかしこれを解かないと、逃げようがない。白い壁や、ほかの部分には大したものは使われていない。脱出経路もだいたいは把握できた。

 この四面の部屋は、周りを、被害者のシリン達を収容する部屋に囲まれてはいるが、その先の二面は外に面していた。幸運なことにこの建物は平屋建てで、そんなに大きな施設ではなかった。

 建物の構造を把握できると、縄を解く番になった。見たことのない元素がある。それを残しても、おそらく縄をほどくことはできるだろう。

 四面の部屋の壁と、縄に意識を集中すると、それだけで体力がそがれてゆく。脇腹の傷がひどく痛んだが、そんなことは言っていられない。ここから逃げないと、さらに犠牲は増えていく。

アースは、壁伝いに立ち上がると、ほどけかけている縄から自分の手をするりと抜いた。そして、目の前の壁が消えてゆくのを見た。外にいた何人もの人間がこちらを見る。しかし、今はそれに構ってはいられなかった。

 四面の部屋から出て外にたどり着くと、どこからかサイレンが鳴って、建物のなかが騒然となった。

 ここで捕まるわけにはいかない。

 そう、強く思った時、アースの思考がどこかへ吸い込まれていった。その先にあるのはカロンやシリウスたちのいる教会だった。

「シリウス」

 地球の、冬の星座のシリン、シリウス。

 彼が、アースの思考を拾い、教会への道筋を立てた。アースはそれに乗り、跳んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る