白昼夢

 昼休み――

 教室に戻った真也は周りの好奇な視線を気にせずに一人で弁当を食べた後、屋上へ向かった。

 階段を上って屋上に出るドアの立入禁止の貼り紙を見て朝のホームルームで担任の吉岡が言っていた事を思い出した。

 仕方なく教室に戻って席についてぼんやりしているとピアノの音が聞こえてきた。

 特に気にする事なく目を閉じている内に眠くなった。

 ウトウトしていると後ろからグイッと強く引っ張られる感覚で真也は目を覚ました。

 気が付くと窓から身を乗り出していた。

「うわっ!」

 思わず真也は叫んだ。

 下に人が集まって自分を見ているのがわかった。

 後ろから生徒達の声が聞こえた。

「何をやっているんだ!」「誰か、先生を呼んで!」

 真也はわけが分からないまま身を戻そうとした時、グッと何者かの手が喉に食い込んだ。「うっ!」

 絞め付けられた途端、涙目になって目の前の景色が霞んだ。

 下を見ると制服姿の少女が手を伸ばしていた。涙で霞んで顔は見えなかったがショートカットの輪郭だけは見えた。

「何だよ!」

 ガラガラ声で真也は叫んだ。少女は黙って右手で真也の首を掴んでいた。

 背後の生徒達から室内へ引き戻された真也はゴホゴホと咳を立てて咽びながらうずくまった。

「おい、大丈夫か」

 担任の吉岡が真也の背中をさすった。真也は黙ってうなずいた。

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