エピローグ 最初の嘘
「はぁ……クッソ疲れた」
「お疲れ様でした。それと、守って頂いてありがとうございます」
「ああ、気にすんな。――ところで、評価管理官ってのはいつ来るんだ? まさかデマじゃないだろうな」
「ええ、それでしたら――」
ゾーマ殿へのセクハラへの仕返し、と言いたいところだが、これは私が先にについた嘘。懐から名刺を取り出し、疲れて座り込んでいる彼に手渡す。
「なんだこりゃ? 『地方評価管理官 ニャーナ・クリシュナ』……はぁ!?」
「すみません、ずっとゾーマ殿を
「嘘……だろ?」
「閻魔殿にその言葉を言わせるのも、『嘘を隠す事が出来る』能力を持つ、我々管理官の仕事です」
「く……お見逸れ致しました、管理官殿……」
「ニャーナで良いですよ。話し方も今まで通りで。今更ゾーマ殿にその様な口調で話しかけられましても、気味が悪いだけですから」
我ながら、意地が悪い。しかし黙って俯くゾーマ殿を見ると、今までの恨みも手伝ってもう少し苛めてみたくなってきた。
「早速ですが管理官としての所見を申し上げます。ゾーマ・ビサンエイジ殿。あなたの業務に対する怠惰な姿勢、言葉使い。そして部下に対するセクハラ発言など、客観的に見ても目に余るものがあります」
「…………」
「私はこれより本来の業務に戻り、今回の事を中央に報告します。あとは極卒達と手分けして帰還を完了させ、その後直ちに地獄門の修繕に取り掛かってください。――おそらく後日、中央より厳しい辞令が下るでしょう。その旨覚悟しておいてください」
「はい…………うぉ?」
ゾーマ殿の周りが緑色に微かに光り、それは瞬く間に彼の体に吸収された。
「……それでは。またお会いましょう、ゾーマ殿」
「お、おう、助かったわ。じゃーな」
遠慮がちに手を振るゾーマ殿に一礼して、踵を返す。……最後にもう一度、仕返しをしようかと思ったのだけど。ここで嘘がばれるなんて、私も少々詰めが甘かったかな。
まぁ、いっか。仕返しはまた、別の機会に。
おしまい
嘘つけゾーマ なぎの みや @nagino_miya
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