地獄門前
冥府全体の広さはそれこそ天文学的数字になるのだが、その玄関口の一つであるアムニル衛門府は意外に狭い。人間界の施設に例えるならば、中規模の遊園地程度。そこに短期間のうちに数十万の
「お、いたいた! 自我を持たれた
衛門府の中央辺りに位置する阿鼻地獄門。周辺にはまだ多くの人だかりが出来ているが、私の力『周囲に漂う心の声を読み取れる能力』を使い、明確に阿鼻地獄門を探す意志を探し当てて老人を見つける事が出来た。
「おや、先程の。どうなされましたかな?」
「いやぁ~先程は大変失礼いたしました。
「ゾーマ殿……」
「それはそれは、わざわざご足労をおかけして申し訳ありませんでしたな。ではせっかくなのでお言葉に甘えて、一つお願いしてもよろしいですかな?」
「ええ、それはもう。
体をくの字に曲げ、老人の前で揉み手をしながら
「こちらのカメラで私と阿鼻地獄門と撮って頂けますかな。所謂冥土の土産というやつです。私は端で構いませんので、地獄門を中心に写して頂けると助かるのですが」
「かしこまりました! では今すぐ撮影準備を――オラァそこらの
ゾーマ殿に恫喝され、周辺の
「ではお撮りしまーす!」
門の全体を撮ろうとしているのか、這いつくばってローアングルで撮影するゾーマ殿。その指がシャッターボタンを押した瞬間の事だった。
「ハイ、チー」ゴゥッ!
カメラから閃光が放たれ、轟音と共にゾーマ殿の声と地獄門を飲み込む。
「な……?」
その威力は一瞬視覚を奪われる程凄まじく、直撃をくらった地獄門は、原型が留まっていない程に半壊させられていた。
「…………はぁぁぁ!?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます