鮮度と粘度
「なずな。もう一回目を閉じて」
そう優しく私に語りかけてくれる、股間から讃岐うどんを生やした筋骨隆々の鮭面人。もはや鈴城君の面影すらも残っていない。私のせいとは言え、やっぱり鮭とはキスしたくない。なんとか顔だけも戻さなければ。鈴城君、すずしろくんんんんんん……!
何とか戻った。でもなんか目が離れてて口がちょっと尖がっている。イマイチ鮭感が拭えてないが、さっきよりはましだ。私は彼の言葉に従って目を閉じる 。
目を閉じた数秒後、冷たい感触が私の唇に触れる。健人の尖った口の奥から這い出た舌が私の口腔に侵入し、意志を持った様に私のそれと絡み合う。
ファーストキスはレモンの香り。
大人のキスは北国を思わせる芳醇な潮の香り。
顔を離した健人はその手を私の下腹部に伸ばし、少し悪戯っぽい笑み浮かべて私に耳打ちする。
「なずなのここ、もうトロトロだよ」
そりゃあそうでしょうよ、今の私、名前からしてお粥テイスト満載だもの。
「いい?」
そう言って健人はまた真面目な顔をする。私は目を閉じ、小さくうなずいて彼を受け入れる意思を示した。彼はゆっくりと腰を前に押し出し――――
「い……んんん……!」
「なずな……出すよ……?」
入ってから十秒くらいしか経ってないけど、リアルな時間が分からないから仕方ない。でも何が出るくらいは私にだって分かってる。彼の全てを、受け入れると決めたのだ。ああもうまた鮭に戻ってるし。目を瞑って見なかった事にする。
お腹の奥に、健人から分けてもらった命のかけらが引っ越して来た様な気がした。まるで私の体の中に、彼の為の部屋がひとつ作られたみたいに――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます