友情と謀略

 明くる日の午後1時50分。まもなく三人が我が家にやってくる。昨晩は部屋はもちろん、玄関から自室に至るまでの廊下も隈なく掃除した。途中何度も「米村さんって綺麗好きなんだね」という鈴城君の声が脳内で再生される度に妄想モードに突入し、その都度作業が中断した為効率はすこぶる悪かったが、恐らく鈴城君が目にするであろう家の箇所は思いつく限り徹底的に磨き上げた。つまり勉強は一切やっていない。


 ピンポーン


 玄関のチャイムが鳴る。来訪者は分かっていた為、私はインターホンを確認せずに開錠してドアを開けた。「いらっしゃーい。待ってた……よ…………?」


「こんにちは、米村さん」


 玄関先には鈴城君が一人、困った様なはにかんだ笑みを浮かべて立っていた。


「えっと……ごめんね。萩生はぎゅうさんと尾花おばなさん、さっきまで一緒にいたんだけど、なんか急用が出来たらしくて、帰っちゃったんだ。米村さんの宿題見てあげてって言われて」



 こらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 何してくれんのよ二人ともぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!



 められた。あの二人の策略さくりゃくに、まんまと引っかかってしまった。しかしここまで来てくれた鈴城君に帰れなどと言える訳も無く、当初の予定通りピカピカに仕上げた廊下を通って部屋まで彼を案内した。なんでこんな時に限ってお母さん出かけてるのよぉ……。




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