第二章・その4 彼女の思い出


 超大陸ミッドグラウンド中央地域セントリウムには国がない。東西南北の国々にとって中立緩衝地帯だ。

 平原と丘陵地帯が中心となった地域だが、農耕するには雨は降れど、耕作地を支えられるほど大きな河川や湖沼はなく、唯一、自由交易都市メディウムと隣接する湖が最大の水源だった。更に有用な鉱物が取れる鉱山候補もなく、牧畜にしても魔物の遭遇率が高過ぎる。

 中心の都市メディウムと、東西南北に走る街道のみが、神の加護で魔獣も魔物も近付かない。

 故に、東西南北――主に東西の国々にとって中央地域セントリウムは中立緩衝地帯以外になり得ない。

 最も、そんなことを気にするのは人間と魔族ぐらいだと鼻で笑うのは、エルフとドワーフだ。彼らは人のように領土の野心がないし、魔族のように享楽的に侵攻したいと思ってない。

 しかし、そんな中央地域セントリウムにも、昔、国があったらしい。

 魔獣や魔物が闊歩していても国を建てられる者、つまり魔族の国だ。

 世界の中心たる超大陸ミッドグラウンド中央地域セントリウムを支配したその国は、東西南北の交易で大いに栄えた。

 なのに、滅びた。何故かは分からない。人が滅ぼしたのか、自滅したのか。

 そして、自由交易都市メディウムから南西へ百五十粁ほど行った先、街跡は風雨で崩れて土塊になり、今は神殿の廃墟しかない場所。そこに、かつての栄光の痕跡のみが残っていた。


「こんな場所に……?」

 ナクティスは依頼を受け、先行して一人、この場所にやってきていた。

 かつて、中央地域セントリウムを支配していた国の痕跡で、今は魔神殿と呼ばれている。

 神殿の天井が崩れ、壁も大きく欠損し、空いた隙間から砂混じりの風が吹き抜け、彼女の金と銀の髪を煽る。西からは黄昏時の赤い光が射し込み、彼女の横顔を照らした。

 西の賢者と呼ばれた彼女でも、単独での行動は緊張する。周りを注意深く観察し、いつでも魔術を発動出来る準備を怠らない。ひび割れ、崩れかけた魔神殿の中心で、ナクティスは魔神像を見上げた。邪気など感じない。むしろ、かつての神々しさが窺える。

「カーラは魔神なんかじゃないのだけど」

 遠い時間が過ぎて、どうやら人間も、魔族さえも忘れてしまったようだ。

 人間も魔族も平等に恩恵と破滅を与える二面神カーラは、かつて人間と魔族の双方から愛され怖れられていた。だが、恩恵のみを欲した者から、いつしか敬遠されてしまった。

 理由なく破滅を与える神ではなかったが、それが分からなかったらしい。そして、カーラがこの地を見限って去っていったから、国が滅びたというのも、知られていない。

「何も感じない……魔族の魔気も、封印術の跡も」

 ヘイロスが言うには、この場所にかつての魔王の魂が封じられている、らしい。

 体はなくとも魂だけでその膨大な魔力を以て、至る所で大被害を与える可能性がある。

 その魔王の封印が解けかかっている気配がする、と。

 ナクティスはまず先行してこの場所を調査、綻びが確認出来たら準備とのことだった。

「あの人が天眼で見えた……って言ってたけれど」

 ヘイロスがそう言うなら、恐らく間違いないと思ってやって来たが、何か違う。

 本当に魔族の魔気も、封印術の痕跡も感じない。辺り一面見るが印が施された跡もない。

 不可思議に思いながらも、ナクティスは警戒を怠らなかった。

 本当にそんな強大な魔力を持った魔王の魂が封じられているというのなら、賢者といえども、一人ではとても対処出来ない。いざというときに退避出来るよう、自分の右の耳飾りに、強力な転移魔術を組み込んでいた。これは魔術の詠唱さえ間に合わず、自身の魔力が封じられたり魔力が尽きたりしても、この場から脱出出来るようにするためだ。

 そうでなければナクティスも、こんな場所に単独でやってくるはずない。

 そう。ナクティスは十分に警戒していたはずだった。

 いくつかの油断を除いて。

 人を、信頼し過ぎたこと。そして、自分が裏切られると思わなかったこと。


◇ ◇ ◇


 夜が白々と明け、部屋の中が光で満たされるにつれ、イオンは目を覚ましつつあった。

 秋も深まり、朝方は薄ら寒い。掛布から出ていた肩が冷えていたが、ちょうどイオンの胸の辺りに温くて柔らかい何かがあって、まどろみながらそれを自分の懐まで手繰り寄せた。

 掛布なんかよりも、触り心地が良くて温くて、手に掴んでいるものなど、特にやわやわとして、指から伝わる感触はかなり心地良い。まるで女の柔肌か何か――

「ん……」

 懐に抱えた柔らかい〝何か〟から漏れ出た声で、寝ぼけていたイオンは完全に覚醒した。

 ノーチェが、自分の懐で寝ていた。

 自分がノーチェを抱え込んでいると気付いた瞬間、大声を出さなかったのは、不測の事態に直面した際、冷静に対処出来るように日々鍛錬した賜だった。

 確か一人で寝たはずだった。寝酒を引っかけて、それから「おやすみなさい」だ。

 宿の部屋は寝室が二つあった。だが、ノーチェはこちらに潜り込んできた。

 しかも、彼女の胸を掴んでいたことに今さら気付いて慌てた、昨日の今日で、手を出しかけるも、堪える。動いたためにノーチェは身じろぎしたが、そのまま継続して寝息を立てた。

 イオンは横になったまま、彼女の顔を見ていた。彼よりも遥かに年上と思えないほど――年齢のことは言わないようにしているが——彼女の寝顔が可愛らしい。

 もう、お風呂場で見るだけ見て、触れるだけ触れてしまっているからと、つい、胸を掴む手がやわやわと動いてしまった。すると、可愛い寝顔が僅かに険しさを帯びて「んっ……」と彼女の口から声が上がり、そこでイオンが正気に戻った。


「びっくりした……まさか、俺の布団に入ってくるなんて」

 東方地域(オリエンス)沿岸の朝の定番、米粥コンジーをずるずる啜りながらイオンが呟いた。

 この米の粥は、干した貝や鶏ガラで出汁を作る、東方地域オリエンス沿岸の名物だ。森に住むイオンには食べる機会がない。後で材料を買ってノーチェに作ってもらいたいくらいには美味い。

「寒かったし……ちょっと眠れなかったんです」

 ノーチェがお粥を一口啜ってから手を止め、遠慮がちに弁解した。

 イオンが目を覚ましてからたっぷり一時間、ノーチェは彼の懐で気持ちよく寝ていた。

 そう、彼女はイオンの寝台に忍び寄り、布団の中へ潜り込んできていたのだ。イオンは何か気配があればすぐに察知するが、彼女は見事に気配を消しきって忍び込んできた。

 これはエルフの特技だ。彼らが魔獣や魔物に滅多に襲われないのも、この力あってだ。

 最も、エルフでも殺気を放っていれば、さすがにイオンでも気付く。

 しかし、単に近寄ろうとしただけならこの通り、全く気付かない。

「いや……俺も温かかったから、いいけど」

 無意識とはいえノーチェを抱きかかえていた手前、完全に彼女を責められない。

 実際に彼女は温かったし、触り心地もとてもよかった。

 但し、完全に覚醒してからは相当な忍耐を強いられて悲惨だったが……。

「そう。それならよかったです」

 ノーチェははにかむように微笑んで、食事を再開した。

 何か、言質を取られた気がしたが、イオンは曖昧な笑みを浮かべて話を流す。

「それにしてもこのお粥ポリッジ、美味しい。お米? 出汁とか入っているみたいですけど?」

「え? ノーチェのご飯の方が美味しいと思うけど?」

「いえ、そうじゃなくて……」

 ノーチェが頬を赤らめた。何か、恥ずかしがることを言ったか? ではなくて。

「ああ。この辺の名物で朝の定番、米のお粥。海産物の干し物とか鶏ガラを出汁に作るんだ……もしかして、食べたことがない?」

「ないですね。南方地帯ユークではこういう食べ方はしませんし、西方地域シーファンでも――」

「そうか。南方地帯ユーク西方地域シーファンにはないのか」

 何気なくイオンが呟いたのだが、ノーチェが途中ではっとして口をつぐんだ。

「もしかして、警戒してる? それならもう必要ないんじゃないのかなぁ? 昨日、あれだけ、なんだっけ? 西方地域シーファン祭助ディアコノスだかに喧嘩を売ったし……」

 そう言われ、ノーチェは少し居心地を悪そうにして、彼から目を反らした。

「別にあなたのことを疑っていたわけじゃないのですけど……。ごめんなさい」

 少し沈みながらノーチェが詫びた。長い耳が僅かに下がる。

 あんなのに狙われていたら、僅かなことでも警戒するのは仕方ないか。

 そう、イオンは思いつつ「エルフのあの耳って下がるんだ」などと、つい、イオンは興味をそそられて見ていたが、頭を振って、気持ちを切り替える。

「警戒するのは悪いことじゃない。それに、ほら? 俺は割と胡散臭いから。仕方ない」

「ええ、それは私も思います」

 さらりとノーチェが同意し、イオンががっくりうな垂れる。

 確かに。自分で言うのも何だが、木こりとか猟師とか言い張るには、かなり胡散臭い。

「じゃなくて! あれだ! ……昨日、ノルドエストの村でも言ったけど、心配事があるのなら聞くし、解決するための手も貸すよ? それで、その……」

 イオンは残り少なくなったお粥を一気に飲み干し、側にあった水飲みの器を一気に煽った。「夕べ気付いて言えなかったんだけど……。ノーチェ、背中に何かを封印したみたいな印紋があるだろう? それで、その。本来の力を失っているんじゃないの?」

 ノーチェが驚いて目を見開く。気付かれないと思っていたらしい。

「見えるの? やっぱり心眼持ち? いえ、そこまでも見えるものなの? 怖いわ」

「あ……ごめん……。まぁ、その、そんな感じ……」

 本気で怖れているようにノーチェが言うので、誤魔化すようにイオンが詫びる。だが、いまいち適当であやふやな返事になってしまった。イオンのどこか胡散臭い態度に、ノーチェが怪訝な顔をする――が、すぐに、諦めたように小さく溜息を吐いた。

 ――何とか誤魔化しきった? イオンは話を続ける。

「とにかく、ああいう下衆な輩に狙われたり、そんな封印されていたり、何かと大変だろう? すっきりさせた方が良いんじゃないのかな?」

「すっきりって、そんな」

 イオンの態度と物言いの胡散臭さと適当さも相まって、ノーチェが呆れた様子で呟く。

 だが、すぐに咳払いをして表情を改め、イオンを真っ直ぐ向く。

「確かにそう。でも、そう簡単に解けるものじゃないですよ? それに、相手が悪過ぎる」

「相手って、魔力喰いマギア・グール祭助ディアコノスなら、暴いただけで破滅しそうだけど、他に何が?」

 ノーチェは暫く迷うように俯いて考え――意を決したのか、彼を真っ直ぐ見つめる。

祭助ディアコノスは、西の司教の取り巻きですよ? あとは――予測が付くでしょう?」

 そう言われ、イオンはしばらく考え、「ああ、そっか」と声を上げた。

「……西の英雄か。なるほど」

 イオンは独り言のように呟いた。つい口元に冷たい笑みを浮かぶ。

「イオン……?」

 ノーチェが困惑している。気付いたイオンが「あ、いや……」と慌てて表情を改めた。

「えっと……ほら、あれだ! 前々から西の英雄は少し、どうかと思う部分があってさ。噂に聞く限り、少し権威というか、そういう物に囚われ過ぎてる奴かなって」

 西の英雄は魔王を倒した後、様々な地位を得て、今では西方地域シーファンの権力者の一人だ。

「魔王退治が立身出世だったかもしれないね。ただ、寄りつく仲間も、それらしいのが多いんじゃないのかと思ってたけど。昨日の祭助ディアコノスが腰巾着と知って、すごく納得したよ」

「確かに、地位に縛られているようなところはありましたけど……」

 ノーチェが気まずそうにする。まるで西の英雄が、かつて仲間だったような言い振りだ。

 イオンは一瞬だけ眉を寄せたが、すぐに普段通りの表情に戻る。

「でもそっか。ノルドエストの村を出る時に言ってた、西の英雄のなんとかって、あれ、本当だったんだ――うん、わかった。どうにかしよう」

「どうにかするって……」

 イオンが諦めるどころか、何とかして見せようとする姿勢に、ノーチェが啞然とする。

「分かってます? 確かにあなたは強かったけど、あの人たちは一枚岩じゃない」

「一枚岩だろうが脆いだろう? あんな大罪犯してる奴が腰巾着してる辺りで」

「仲間でも、弱くはないですよ?」

「そりゃ強いだろう? 腐っても魔王に挑んだ英雄なんだから」

 ノーチェが呆れともつかない表情で「簡単に言うけど」と、前置きをする。

「普通の魔物退治と違うのよ? それに、あなたは冒険者を隠居したんじゃなかったの?」

 ノーチェが確認するように尋ねる。確かに、彼女の指摘はもっともだ。

「自分から首を突っ込む分には問題ないよ。それに、やり甲斐がありそうだ」

 イオンの全く懲りない譲らない姿勢に、ノーチェが判然としない表情で彼をじっと見る。

「……あなた、大分変わってますよ?」

 ノーチェの呟きに、「ん。よく言われる」と、多少開き直りつつイオンが同意した。

「わかりました。気持ちだけ、有り難く頂きますね」

「いや、ちゃんとどうにかするから」

 やんわり断ろうとする彼女に、気軽に、でも譲る気はない言い様でイオンが食い付く。

「いえ、今は……。正直、思い出したくないというか、私自身にも問題が……」

 ノーチェは俯きながらそう呟いた。これ以上は詮索して欲しくないようだ。

「まぁ、気が向いたらでいいよ」

 イオンが気安い風に言った。これ以上、彼女を追い詰めるのも良くない。

 ノーチェが俯いたまましばらく黙っていたが、不意に「イオン」と名を呼んだ。

「……ん? なに?」

 普段通りの表情をしながら――少しわざとらしさもあるが、イオンが返事をする。

「あの、そろそろ聞いても良いですか?」

「なに?」

「あなた、何者なんです?」

 遂に聞かれた! いや、さすがにこんな問答をしていたら聞いてくるだろう。

 そう思いながらも、イオンが悩ましくウンウン唸って考える。

 そして、出て来た言葉が「段位八十九の魔導剣士フォンシー・ソルダート」だった。

「八十九。凄い段位ですね。でも魔導剣士……」

「私、てっきり、東の勇者の仲間か何かかと思ったのですけど、そうですか……」

 ノーチェが少し残念そうな顔をした。

「俺が勇者の関係者じゃなくて、ごめん——でも」

「でも?」

「どうにかしたいし、多分、してあげられると思うんだ」

 イオンがはっきりきっぱり大口を叩くと、ノーチェが目を丸くする。

「西の英雄関係だって言うのに……」

 困ったようにノーチェが笑った。先日、大言を吐いたイオンを見た時と同じ顔だ。

 大げさで馬鹿な奴と思われたかもしれないが、暗い顔をされるよりはずっといい。

 イオンはそう思いながら、彼女に対し、得意げで不敵な笑みを返した。


◇ ◇ ◇


 気付いた時には遅かった。

 ナクティスが険しい顔で自分の周りに張り巡らされた方陣を見回す。

 カーラの神殿の中に二重、いや三重に張られた方陣が巧妙に隠され、存在していた。

 魔力の匂いも仕掛けてある気配も一切を消して、全く感知出来ないようにしていた。

 正確には感知出来ないよう、予め彼女自身に術が掛けられていた。

 背中に掛けられた呪術印が、蔦を這うように蠢くのを感じる。

 今さら嘆いても仕方ないが――完全に油断した。体が動かない。方陣に捕縛されている。

「エグゼル、これはどういうこと?」

 目の前に立つ男に尋ねた。エグゼル・メンタール――西の英雄の、魔王討伐に尽力した功により、司祭パストラスから司教エピスコポスに上がった白魔術の聖職者。そして、彼女の仲間だった者。

 ナクティスは、西の英雄の仲間の一人だった。その中で、賢者の役割を担っていた。

 そして、神殿の調査を彼女に依頼したのは、西の英雄ヘイロス、その人だった。

 でも、実際に神殿へ来て、そこに在ったものは、彼女を封印するための方陣だった。

「どうもこうも。ヘイロスも私も、君が要らないからに決まっているよ」

 西の司教メンタールが、ナクティスを見下しながら言う。

 メンタールが彼女を見る目に、覚えがある。彼女の故郷である南方地域ユークの、あのハイエルフたちと、同じ目だった。卑しい穢れた血を厭う、軽蔑の眼差し。

「私の力は要らなかったのか」

「いや、力は必要だった。要らないのは君の存在」

 この男の言っている意味が、ナクティスには分からない。

「でも、騙し討ちされるほどのことを、した覚えはないわ」

 ナクティスがそう言うと、メンタールは「ふふっ」と笑った。

「賢者というには本当に馬鹿過ぎるな。君が余計な手出しをしたからに決まっているだろう? 黙って言われるままに手を貸すだけで良いものを。だから馬鹿なのだよ、君は」

 西の司教の物言いは、心の底から彼女のことを蔑んだものだった。

「余計な手出しか……」

 ナクティスは抑揚のない声で呟いた。

 確かに自分は馬鹿だった。本当は厭われているのは分かっていた。彼らが必要なのは力であって自分ではないことも分かっていた。ただ、いつか信頼してもらえると願っていた。

「ヘイロスは君の力が必要だと一応判断して仲間に入れたが、やはり邪魔なんだよ。必要以上にしゃしゃり出てその力を振るう。本当に、君は自分の分をわきまえない馬鹿だからね」

 隠していた本性を、彼女が身動きの取れなくなった状態にしてから言う。

 ナクティスはあのままだと魔王を倒しきれないと思ったのだ。魔王の侵攻は止まず、西方地域の被害が拡大すると。でも、そんなことなど、彼らにはどうでも良かったようだ。

 いや、どうでも良いわけではなかったかもしれない。

 でも、今の段階では、彼らの考えていることなど、何もわからない。

 今、分かるのは、メンタールが彼女の力を奪おうとしている、ただそれだけだ。

「汚い魔族の血の混じる君には、賢者よりも魔女の方が、お似合いだと思わないかい?」

 嘲笑混じりにメンタールが彼女に向かって尋ねてくる。

「似合うも何も。昔、散々聞かされたわ」

 穢れたエルフの魔女。彼女が育った南方地域ユークの郷の者たちに陰日向で散々囁かれた。

 白いハイエルフ。黒い魔族。

 では、その二つの血が混じったエルフは、何なのだと。

「では、ご機嫌よう。黒く穢れたエルフの魔女」

 悪意と驕りのこもった声で、エグゼル・メンタールは、方陣の術式を完全発動させた。

 周りがまばゆく光で満たされる。

 その中でナクティスは、自分の右に付けた耳飾りを掴み、構えた。 

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