第14話 〃⑨

それから、一週間が経った。


まず、必要なのは、クイズをどのようにして作るかだった。


これに関しては、


「この学校には、クイズ研究会というのがある。そこに依頼してみる」


という会長の発言で決まった。


その後も、着々と準備は進んでいった。


出題形式、回答の形式、そして、大会のまわしかたなど、順調に進んでいた。


ただ、そもそもこの会が開催できるかどうかという一番の問題が、手付かずだった。




「よし、この案で、職員会議にかけてもらおう。クイズ研究会の会長も呼んでくる。君も着いてきてくれ」


「え、僕ですか?」


「ああ、暇そうだし」


「他も変わんないですけどね」


すでに準備はほぼ終えている。


そして、僕は生徒会長と、クイズ研究会の会長と共に、そのまま職員室へと向かった。




「ふーむ、わかった。再来週の火曜日が空いている。そこでやろう。君たちにも来てもらうよ?」


「わかりました。再来週の、火曜日ですね?」


「ああ、それで間違いない」


ということになった。


いや、僕ここに来た意味あった?


と思っていると、


「よし、では、我々三人で出席しよう。空いているか?」


僕はうなずく。クイズ研究会の会長もうなずいていた。


そういうことだったのか。




そして迎えた職員会議の日。


僕はおとなしく座っていた。


クイズ研究会の会長も同じだった。


僕ら要らなかったよね、これ。


全部生徒会長がやっている。


しかし、


「ですから、思考力の育成が求められる時代に、それを計れるというのはですね……!」


「しかし、伝統というものがねぇ」


先程から、ずっとこんな会話が続いている。


たまらず僕は手を挙げた。


「発言いいでしょうか?」


僕に視線が集中する。


司会の先生が言う。


「ああ、もちろんだ」


「先ほどから聞いていてまどろっこしいんですけれど、なぜ先生方はこれを開催させてくれないのでしょうか。全て羅列していただけるといいです」


僕がそう言うと、一人の先生が言う。


「だからだね、まず、クイズなどというお遊びで、そんなものが計れるのかということ。そして、たとえそんな大会を開催したとして、人が集まるかという問題。最後に、伝統的に、そんなことをやるのは」


「ダメだと」


「うーむ、まあ、端的に言えば、そういうことだ」


「なるほど、クイズがお遊び? わかりました。その意見、これを見ても言えますかね?」


そう言って、僕は十数枚の紙を取り出した。


「ここには、僕らが出題するクイズの一例が載っています。一度目を通してください」


言いながら、紙を回してもらった。


「なんだ、これ……」


「こんなものを……?」


「そうです。難しいですよ。僕らが出題するのは、知識も持ち合わせた上で、思考力がなければ解けないものです。これで一つ目はいかがでしょう?」


「あ、ああ、この内容なら、まあ、問題は」


「ない、と。では、二つ目ですが、そもそもやってみなければわからないでしょう?やりもしないのに、無理だとはじめから決めつけてしまうのは、いただけない。ナンセンスです」


そう言うと、数人の先生が応援してきた。


「たしかにそうですね」


「いつも挑戦しろと言っているのに、ここでやらせないのは……」


すると、


「よし、わかった。だがねえ、伝統というものが……」


「伝統? たかだか創立三十年も経ってないような学校に、伝統?


笑わせますね。そもそも、先ほどどなたかおっしゃってましたけど、僕らは挑戦させてくださいと言ってるんですよ?


挑戦するというのは、伝統を捨てるということでもありますよね?」


「う、んー、うむ、では、多数決をとろう」


そして、教員人のみでの多数決の結果、開催が決定した。


やったね。




会議からの帰り道、渡辺先輩は言った。


「先ほどは、助かった。ありがとう」


「いやあ、僕も言いたい事言えてスッキリしましたし……」


「だとしても、君のお陰だ、ありがとう」


そう言って微笑んだ先輩に不覚にもドキッとしてしまった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る