第11話 〃⑥

生徒会に入った翌日。


学校は祝日で休みだった。


今日からGWということで、数日間休みが続く。


代わりに、学校からは、課題が山のように出ている。


とりあえずはそれを済ませていく。


昼食をとってから始め、夕食前には半分ほどが終了した。


「今日はこのくらいにしとこう」


僕はやらないと決めたら全くやらない。


ということで、今日はもう課題には見向きもしないことにした。


夕食を食べ、読書に勤しんでいると、一通のメールが届いた。


[明日は、会長の家で歓迎会だそうです。]


短い一文だったが、情報は十分。簡潔に纏められていた。


だが、一つ問題がある。


それは、僕が会長の家を知らないことだ。


いや、僕だけが知らないのではなく、恐らくほぼ全ての生徒が知らないのではないだろうか。


そんなとこにいくのは無理だ。どこに向かって進めばいいのかすらわからない。


僕はメールを送った人間、つまりは鈴木千尋ヘ、電話をかける。


数度のコールのあと、彼女は電話に出た。


『はい、もしもし、鈴木千尋です』


「ああ、僕だよ、鈴木千尋だけど」


『ああ、ちーくん? どうしたの?』


「実は、僕、会長の家知らないんだけど……」


『ああ、そうだよね。送り忘れてたな。実は、それで、一緒に行こうってお姉ちゃんが言っててね』


「そうなんだ。そうしてくれると助かるよ。じゃあ、明日は何処に行けばいい? どこかで待ち合わせてからいくでしょ?」


『そうだね、あ、ちょっと、お姉ちゃん!』


そんな声が聞こえ、受話器の向こう側からはバタバタと音が聞こえる。


数秒後、きこえてきたのはさっきまでとは別の声だった。


『あ~、もしもし~? 私だよ~。百合だよ~』


「ああ、どうも。昨日ぶりです」


『明日のことなんだけどね、そっちいくから、十時くらいに家出れるようにして待っててね~』


一方的にそう言うと、奥の方から『あ、ちょ、お姉ちy』という声を届けつつ、電話は切れた。


「十時くらいに、出れるようにして、か」


仕方ない、言われた通りにしておこう。




翌朝、目が覚め時計を見ると、時計の針は九時半をさしていた。


「ヤバイ……」


ボーッとした頭でも危機感を覚えた。


急いで着替え、朝の用意をした。


そして、朝食には親が作っておいておいてくれたのであろう食事を急いでかきこむ。


その後、歯磨きをし、数分待つと、家のチャイムが鳴った。


『ピンポーン』


その音を聞いて、僕は玄関へ行く。


ドアを開けると、そこには、普通に可愛い服に身を包んだ女の子(鈴木千尋)とボーイッシュな服装に身を包んだかっこいいお姉さん(鈴木百合)がいた。


「おはようございます」


そう挨拶する。


「「おはよう(~)」


向こうも返してきた。


「よ~し、それじゃあ、上がらせてもらっていい?」


「え、まあ、両親も妹も何処かに遊びに出掛けているので大丈夫ですけど……」


「おじゃましま~す!」


僕が言い終わらないうちに、彼女は僕の家に入っていった。


「あはは、ごめんね、勝手な姉で」


そういいながら手を合わせ、頭を下げてくるのはその勝手な姉の妹だ。


「ああ、まあいいよ。別に」




僕の部屋へ戻ると、百合さんは何かを探して、僕のベッドの下を探っていた。


「ん~、おかしいなぁ、何もないよ?」


「たぶん探してるものは何処にもありませんよ?」


そもそも、マンガとかで誰かの家にいくとよくそういう本を探すシーンが出てくるけど、入手方法が不明なんだよね。買ってるのかな?


いや、まあ学生じゃあ買えないとは思うけど、それ以外に入手方法が思い付かないんだよなあ……。


よくわからん。


「それより、行くんじゃないんですか?」


「うん~、行くけど~、まだ早いんだよね~。ここからなら~、一時間もかからないから、少しおじゃまして時間を潰したいな~、と、いうわけだよ~」


「ああ、そういうことですか。なら、お茶でも出しましょうか? 残念ながら、お菓子とか、ゲームの類いははないですけど……、あ、カードゲームなら多少あるかな」


「お~、ありがと~」




さて、そういうことで、トランプやウノをしつつ、時間を潰した。


そして、一時間ほどが経った。


「そろそろ行きましょうか?」


「そうだね。ね、お姉ちゃん?」


「くっ、私が一番年上なのに~、もう一回だけ、お願い!」


「時間大丈夫なんですか?」


「まだ、なんとかなる、はず~」


「はずって……」


先程から、こんな調子だ。


この人、異常に弱い。


「いや、けっこう強いはずなんだよ~?」


「まあいいや、あと一回だけですよ?」




案の定、会長の家に着いたのは、十二時を回った頃だった。


「遅い」


「「「すみませんでした」」」


「全く、ずっと外で待たされてた俺の気持ちを考えてくれよな。ほんと、ストーカーと間違われるわ、犬には吠えられるわ、散々だった……」


「よし、まあ、始めようか。上がってくれ」


「「「「おじゃまします」」」」


こうして、僕らの歓迎会は始まった。


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